2019年4月16日(火)

 朝鮮半島の「聖山」白頭山に噴火兆候! 想定される規模と日本への影響


 北朝鮮の両江道と中国の吉林省との国境上にそびえたつ白頭山(標高2,744メートル)が噴火するかもしれない。

 昨日(15日)も韓国の汝矣島の国会図書館で「目覚める白頭山噴火、どうすべきか」と題する討論会が開かれ、白頭山の頂上付近での地殻変動は深刻な噴火の兆候だと判断していた。

 ▲100年に一度噴火

 富士山(標高3、776メートル)が日本を象徴する山ならば、白頭山は朝鮮半島の「聖山」である。また、富士山同様に白頭山も活火山、それも朝鮮半島の唯一の活火山である。

 白頭山はこれまで100年に一度の小噴火と、1000年に一度の大噴火を繰り返してきた。なかでも西暦946年に起きた大規模噴火は世界最大級とも言われる巨大噴火でその勢いは凄まじく、頂上に直径5キロメートルのカルデラが形成され、火山灰は偏西風に乗って日本の東北地方にも降り注いだ。ちなみに最後に噴火したのが1925年で、この時は小規模であった。

 白頭山噴火の危険性は5〜6年前に中国の一部学者らが本格的に提起したことで韓国でも関心が高まった。すでに2005年の時点で撮られた映像から地下にマグマが溜まっていることも、地下から噴出するマグマによるガスで白頭山の樹木が枯れ死していることも確認されていた。

 朝鮮半島は日本列島と違い「地震が起きない」ことで知られていた。実際に2011年前までは小さな地震が月に1〜2回程度しか観測されてなかったが、東日本大震災が発生した2011年以降は多い月で300回以上も起きている。規模もマグニチュード3〜4に上がっていた。

 ▲北朝鮮の核実験の影響?

 北朝鮮は2009年から計6回、咸鏡北道・吉洲郡豊渓里で地下核実験を繰り返しているが、2017年9月に実施した6回目の実験に使用された核爆弾は水爆で、爆破規模は広島に投下された核爆弾(15キロトン)の10倍もあった。白頭山は豊渓里の核実験場から130キロしか離れていない。

 吉洲郡での6度目の核実験後、吉洲一帯でマグネチュード2.6〜3.2規模の地震が頻繁に起きている。国連傘下の包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)のラッシーナ・ゼルボ事務総長は自身のツイートで核実験と地震の因果関係を認めていた。また、英国の著名な火山科学者であるロビン・アンドリュース氏は米経済誌「フォーブス」(8月23日)に「水爆実験が白頭山の爆発を誘発する恐れがある」と投稿していた。

 ▲爆発監視のため欧米も協力

 韓国は白頭山を監視するためすでに1億円を投じて音波観測所1ヶ所を南北境界線付近に設置している。また、大連・瀋陽など中国東北部地域5ヶ所から地震情報の提供を受けることで中国側と合意している。

 中国や韓国だけでなく、米国や英国、イタリアなど欧米の火山専門家らも白頭山火山活動の調査に乗り出している。

 米英の学者らは2013年10月に合同で白頭山を訪れ、地震計6個を設置している。また、イタリアも2014年10月に政府傘下の国立研究委員会とフィレンツェ大学が北朝鮮と共同で調査を行っている。イタリア政府はこの共同調査のため16万ドルの資金を投じており、2016年4月と8月には9人のスタッフを白頭山に派遣し、水とガスの標本を採取するなど地質調査を行っている。

 ▲アイスランド火山噴火の1000倍

 白頭山の噴火規模は欧州の空港を麻痺させた2010年のアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトルの火山噴火の1000倍と推定されている。仮に噴火が現実となれば、その被害は想像を絶すると言われている。火山の噴出物が空を覆い、約3か月で北半球の平均気温が最大で0.5℃下がるとシュミレーションされている。

 北朝鮮国内は荒廃し、噴出した大量の火山灰によって周辺国の経済活動や農作物に甚大な被害が出る。昨日の討論会では釜山大学地球科学教育科のユン・ソンヒョ教授が「1000年前の1%の噴火でも北朝鮮の人々は生き残れないかもしれない」と報告していた。

 釜山大学の研究チームが2015年に国民安全処に提出した「火山災害被害予測技術開発」に関する研究報告書によると、北東の風が吹く気象状況下で爆発した場合、韓国国内だけで最大11兆ウォン(約1兆円)の財産被害が発生すると推定していた。

 西暦946年の大噴火では朝鮮半島全域で火山灰が1メートル以上、北海道と本州北部でもおよそ5センチ積もったとの記録が残っている。

 アイスランドの火山灰は0.1平方キロメートルだが、白頭山では150平方キロメートルで、東京ドーム10万個分の量。噴火から3時間後にソウル、18時間後に東京に落塵する。そうなれば、日本でも農作物に甚大な被害が発生し、航空機欠航、精密製造業への打撃など経済活動にも深刻な影響をもたらすことになりかねない。