2019年4月30日(火)

 「金正恩訪露」の次は「習近平訪朝」!

平壌での再現となるか 握手する金正恩委員長と習近平主席(労働新聞から)


 安倍晋三首相の特使として訪中した二階俊博自民党幹事長の訪日要請に応え、中国の習近平国家主席は6月に大阪で開催される主要20カ国(G20)首脳会議に出席する意向を明らかにした。訪日が実現すれば、2013年の国家主席就任以来、初めてとなる。

 習主席は二階幹事長に「安倍首相にお会いするのを楽しみにしている」と安倍首相への伝言を託したようだが、尖閣問題で対立していた日中関係が「正常な軌道に戻った」(二階幹事長)ならば、訪日しない、あるいはできない理由はない。

 習主席は就任以来これまでにベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーをはじめタイ、インドネシア、マレーシア、インド、パキスタン、モンゴル、ロシアなど近隣諸国をすべて巡回しており、韓国にも2014年7月にすでに訪問しているので未訪問国は日本と北朝鮮の2か国だけである。従って、日本を訪問すれば、北朝鮮のみが取り残されることになる。

 中国は2005年10月の胡錦濤主席(当時)の訪朝以来、最高指導者の訪朝はこの14年間一度もなかった。この期間2009年10月に当時No.2の温家宝総理が、昨年9月の建国70周年記念式典にNo.3の栗戦書全国人民代表大会(全人代)常務委員長が出席したが、北朝鮮が待望するトップの訪朝は未だ実現していない。

 この間、故・金正日総書記は2006年1月、2010年5月、2010年8月、2011年5月と4度も訪中している。また政権の座について6年間訪中しなかった金正恩委員長も重い腰を上げ、昨年3月、5月、6月と立て続けに訪中し、今年も1月にも訪中している。この1年間で4度も訪中しているのである。

 先代の金正日総書記を含め北朝鮮の最高指導者が8度も訪中しているのに中国の最高指導者が一度も答礼訪問しないのは相互主義の観点からしても北朝鮮にとっては屈辱的なことである。

 金委員長としては昨年3月の訪中の際に習主席の公式訪問を正式に招請し、習主席もこれを快諾していたこともあって昨年9月の祖父と父の「最大の愛国遺産」(昨年の新年辞)である建国70周年の式典への出席を待望していたが、肩透かしを食らい、内心失望していた。

 習主席はこれまでの中朝外交慣例を無視し、2014年7月に韓国を先に訪問していた。No.2の李克強総理も2015年10月に日中韓首脳会議に出席するため訪韓し、No.3の張徳江全人代委員長(当時)もその4か月前の6月に韓国を公式訪問し、朴槿恵大統領(当時)と会談していた。この期間、中国のビッグ3は全員揃って訪韓しているにもかかわらず平壌には誰一人足を運ぶことはなかった。

 北朝鮮の核実験とミサイル乱射による関係悪化が原因だが、金委員長の4度の訪中で中朝関係も日中関係同様に「正常な軌道」に戻っているならば習主席の訪朝の機は十分に熟しているはずだ。

 金委員長が今年1月に訪中した際に再度訪朝を要請し、これを習主席が承諾していることもあって初の訪露が実現した今、金委員長としては早ければ来月(5月)にも習主席の訪朝を実現したいところだ。

 問題は、米国との貿易摩擦の解消が喫緊の課題となっている習主席が米中貿易問題の解決前に訪朝できるかどうかだ。貿易問題が解決するまではトランプ政権を刺激すべきではないとの判断が働ければ、5月の訪朝は難しいだろう。

 金委員長にとっては韓国に続いて日本に先を越されるようなことになれば、面目丸つぶれになるだけに「仏様、神様、習様」の心境ではないだろうか。