2019年8月20日(火)

 日本の「対韓輸出規制」は本当に韓国経済発展牽制が狙い!?


 「史上最悪の関係」にある日韓両国の外相が明日(21日)、北京で会談する。元徴用工訴訟問題や双方の輸出規制強化措置、さらにはGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)など日韓間の懸案だけでなく、対北朝鮮問題についても話し合われる模様だ。

 日本の対韓輸出規制強化が元徴用工の問題絡みならば、この問題で折り合いが付けば、一件落着となり、関係修復も可能だが、日本の措置について日本政府が「徴用工問題での政治報復でない」と言っている以上、また韓国が「韓国経済の発展を妨げることに狙いがある」とみているならば、事はそう簡単ではない。

  ▲(参考資料:韓国経済は5年後に日本に追いつけるか )  

 文在寅大統領は今月15日の「光復節」(日本の植民地統治からの解放日)での演説で「先に成長した国が後から成長する国のハシゴを外してはならない」と日本への不満を口にしていた。

 「ハシゴを外すな」とは、半導体素材の対韓輸出手続きの厳格化や「ホワイト国(優遇国)」からの除外を指してのことは明らかだ。問題は、日本の狙いについての文大統領の認識だ。

 文大統領は2週間前(2日)には「どんな理由で弁明しようとも、我が大法院(最高裁判所)の強制徴用判決に対する明確な貿易報復である」との見方を示す一方で「日本政府の措置が我が国の経済を攻撃し、我々の経済の未来の成長をふさぎ、打撃を加えようとする明確な意図を持っている」と断言していた。

 日本政府は、今回の措置については政治報復でもなければ、安全保障上の管理から単に輸出審査を厳格化するだけと説明しているが、韓国は日本の一連の措置は元徴用工裁判への文在寅政権の対応を口実に日本を追い越そうとする韓国経済を牽制することにあると疑っている。そのことは、今月8日に開かれた大統領直属の輸出規制国民経済諮問会議の全体会議での李ジェミン副議長(延世大学経済学部名誉教授)の発言からも窺い知ることができる。

 全体会議には諮問会議委員や研究員ら民間から20人、青瓦台から大統領秘書室長と政策室長、政府から副総理と産業資源部長官、雇用労働部長官ら18人が出席して開かれたが、李副議長はこの場で日本政府の狙いについて次のように発言していた。

 「韓国は第2次世界大戦以後、世界的自由貿易秩序にいち早く便乗したことで開発途上国の中で先進国に変身した唯一の国となった。これには1965年の日韓国交正常化が一部助けになったのは事実であり、当時日本の当局者は韓日間で垂直分業体制を構築し、持続しようとしていた。しかし、韓国はその後、多くの分野で日本に追いついた。日本は自由貿易秩序に適応しながらやっていかなければならない立場にあったので韓国がそうなるのを防ぐことができなかった。日本当局者の観点から見た場合、意図しない結果となった。安倍政権は意図しなかった結果を元に戻そうとしている」

 韓国を日本の下請け基地にする産業構造を作ることが国交正常化時の日本の戦略だったが、「それが今日、意図しない結果となっていることや過去の従属関係から脱皮を図る韓国への警戒心と危機感から安倍政権が自由貿易に反してまで今回の措置を取らざるを得なかった」というのが李副議長の分析だ。

 文在寅大統領もこうした認識に立っているならば、仮に元徴用工問題が解決したとしても、日本の「対韓輸出規制」は緩和されることはなく、悪化の一途を辿っている日韓関係も安倍政権下では改善されないということになる。

 これが、韓国が不買運動や集会、デモで「反日」でなく、「反安倍」のスローガンを掲げている所以のようだが、一方、日本でも「反日」の文在寅政権の間は、日韓修復は絶望との声も聞かれる。極言すれば、日韓修復は相手の政権が交代するまで待つほかないと言うことになる。

  ▲(参考資料:「ホワイト国」除外への韓国の「自衛・対抗策」 )