2019年12月18日(水)

 北朝鮮の対米「Xmasプレゼント」の「パズル」を解く!

ミサイル司令部での金正恩委員長(労働新聞から)


 クリスマスが近づきつつあることから北朝鮮の動静に国際社会の耳目が集まり、米国、中国、ロシアなど関係国の動きが慌ただしくなってきた。

 北朝鮮の「次なる手」は何か?何もせず、単なる言葉上の脅しで年越しとなるのか、それとも実際にクリスマスの日にミサイル発射などのアクションを起こすのか?

 金正恩委員長は米朝ハノイ会談(2月29日)決裂後の4月12日に開催された最高人民会議での演説で「今年末まで忍耐を持って米国の英断を見守りたい」と、米朝交渉の時効を「年末まで」と定めたうえで、半年後の10月には白頭山で「再び世界が驚き、我が革命を一歩前進させる雄大な作戦を計画」していた。

 そして、今月3日には金正恩委員長、崔龍海第一副委員長、朴奉柱副委員長の3人から成る労働党政治局常務委員会が党中央員総会の年末開催を決定し、総会では「重大な問題を討議、決定する」と発表した。翌4日には北朝鮮の外務次官(米国担当)が「(我々が)クリスマスのプレゼントに何を選ぶかは米国の決心次第だ」と米国を牽制してみせた。

 一連の北朝鮮の言動から米国が譲歩しなければ、昨年4月の党中央委員総会での決定事項の「核実験と大陸間弾道ロケット試験発射の中止」を撤回する公算が高いとみられているが、今月7日と13日に「エンジン燃焼実験」を立て続けに行ったことから一昨年に試射した「火星14号」や「火星15号」のような長距離弾道ミサイルもしくは「光明星」と称する衛星ロケットを発射する可能性が指摘されている。

 消去法で論じるならば、「火星15号」のような大陸間弾道ミサイルの可能性は少ないのではないだろうか。というのも、北朝鮮は「火星15号」の試射を成功させた2017年11月29日に「国家核武装完成」を宣言し、翌2018年4月に「大陸間弾道ミサイルの発射も必要なくなった」として東倉里施設の解体を約束していたからだ。

 「完成した」と豪語したものを再テストする必然性はない。実際に、北朝鮮は過去12月に単距離であれ、中距離であれ、SLBM (潜水艦発射弾道ミサイル)であれ、何であれミサイルを発射したケースは一度もない。唯一例外は、2012年12月12日に発射した衛星ロケットの1回のみだ。

 従って、通信衛星であれ、観測衛星であれ、偵察衛星であれ、北朝鮮が人工衛星と称してロケットを発射する可能性は残っているが、但し、衛星発射ならば、不意打ちするミサイルとは異なり、必ず事前予告がある。人工衛星を主張するならば、国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機構(IMO)、国際電気通信連合(ITU)などに事前通告をしなければならないからだ。

 実際に、金正恩政権下で行った過去3回のケースをみると、2012年4月13日の発射は27日前に「4月12−16日の間に発射する」と予告しており、また同年12月12日の発射も12日前に「12月10〜22日の間に人工衛星を発射する」と発表していた。

 また、直近の2016年2月7日の発射も5日前の2日に「8−25日の間に発射する」とITUに通告していた。この時は、直前になって発射期間を「7−14日」に変更していたが、変更届は出していた。

 北朝鮮は2017年7月4日に米大陸に届く「火星14号」を初めて発射した際、米国の独立記念日だったこともあって金委員長は「(トランプ大統領にとっては)非常に不快だったろう」とした上で、「今後も大小の贈り物をしばしば送ってやろう」と豪語していた。従って、クリスマスをXデーと定めているならば、北朝鮮は遅くとも一両日中に予告をする必要がある。換言するならば、国際機関への事前通告がなければ、クリスマスの発射ないとみてよい。

 人工衛星と称するロケットは2006年7月、2009年4月、2012年(4月と12月)、2016年2月とおよそ3年スパンで発射が行われ、2016年には「光明星4号」が打ち上げられている。この「4号」は本来、2015年10月の「労働党創建70周年」の式典に合わせる予定だったが、完成が間に合わず、数か月後の2016年2月に発射されている。

 北朝鮮は「核実験やミサイル発射を中止する」と宣言したが、人工衛星については言及してない。人工衛星の発射については一貫して「自主権の権利行使である」と主張してきた。第一次宇宙計画期間(2012〜16年)までは計4度行っているが、第二次宇宙国家計画5か年計画がスタートした17年以降、まだ一度も発射していない。

 従って、「クリスマス発射」はなかったとしても、来年早々にも行われる可能性は否定できない。クリスマスが過ぎたとしても油断大敵である。