2019年12月22日(日)

 米国への「Xmasプレゼント」が決定か? 党軍事委員会開催で緊張高まる朝鮮半島

金正恩委員長の発言をメモする軍首脳(労働新聞から)


 トランプ大統領への金正恩委員長の「クリスマスプレゼント」がカウントダウンに入っている折、昨日、北朝鮮で金正恩委員長の出席の下、党中央軍事委員会拡大会議が開催された。これにより、「年末に開催される」と予告していた党中央委員会総会(全員会議)が一両日中に開かれるかもしれない。

 金正恩政権下で党軍事委員会が開催されるのは決して珍しいことではない。2013年、14年、15年(2度)、そして昨年2018年にも開催されている。

 今年も3か月前の9月初旬に開かれていた。この時は台風13号への対策が議題で、深刻な被害を防ぐための緊急招集だった。しかし、今回の拡大会議は金委員長が「造成された複雑な対内外状況について分析し、通報した」ことにより開催されている。

 「複雑な対内外状況」が何を指すかは定かではないが、労働党創建75周年にあたる来年10月10日が期限となる国家経済発展5か年戦略の進捗状況と膠着状態に陥った米朝関係への対応を指すものと推測される。

 拡大会議では防衛産業の改善と自衛的国防力の強化に関する問題が討議され「時代の要求に合わせて軍や国全般の武装力強化に向けた対策を決定した」と報道されていることから一昨年、軌道修正した「並進路線」(核開発と経済を同時に進める路線)、「先軍政治」に回帰するかもしれない。従って、米国へのクリスマスプレゼントも昨年4月に宣言した核実験の中止と大陸間弾道ミサイルの発射中止を撤回する公算が高まった。

 会議には党軍事委員以外に軍首脳、軍司令官、軍総政治局、軍総参謀部、人民武力部、人民保安省、国家保衛省、護衛司令部幹部や軍担当の党組織指導部副部長らが出席していたが、報道によると、軍事委員の召喚、補選及び武力機関の責任者(司令官や軍団長)らの解任と異動があったようだ。

 昨年5月に2年ぶりに開かれた党中央軍事委員会拡大会議の出席者はおよそ80人だったが、今回も同じ人数の80人。但し、前回は74人が軍人で、残り6人が党人であったが、今回は76人が軍人で、党人は4人だった。

 軍事委員は軍事委員長の金正恩委員長(35歳)を筆頭に最高人民会議常任委員長でもある崔龍海国務第一副委員長(69)、前総理の朴奉柱国務副委員長(79歳)、金才龍総理(不詳)、金守吉軍総政治局長(69歳)、李永吉軍総参謀長(64歳)、呂光鉄人民武力部部長(63歳)、徐興賛同第一副部長(不詳)、祖国平和統一委員会委員長の金英哲党副委員長(73歳)、崔富一人民武力部部長(75歳)、李万建党軍需担当部長(74歳)、李炳哲同第一副部長(71歳)、鄭慶澤国家保衛部部長(不詳)、張吉成軍偵察局長(不詳)の14人。このうち、軍総参謀長は今年9月に李永吉大将から砲兵司令官の朴正天大将(不詳)に交替しているので今回、朴正天大将が李永吉大将に替わって軍事委員には選ばれている。

 配信された映像をみると、出席者らは一列に10人ずつ着席しているが、前回は最前列の10人は向かって右から軍総政治局長(金正角次帥)、軍総参謀長(李明秀次帥)、人民武力部部長(朴英植大将)のトップスリーが並んで座り、続いて核とミサイル開発の総指揮者で金正恩委員長が信頼を寄せている側近の李炳哲第一副部長、金元洪大将の後任として一昨年国家安全保衛部部長に起用され、軍事委員となったばかりの鄭慶澤大将、そして崔富一人民保安相が着席していたが、今回は最前列の10人は向かって右から金守吉軍総政治局長、呂光鉄人民武力相で、朴正天軍総参謀長は左から数えて5番目に着席していた。

 また、党人の李万建党軍需担当部長と李炳哲第一副部長は最前列の左端(9番、10番目)に座っていた。ちなみに前回は、最前列の一番端には軍総政治局長の任を解かれていた黄炳誓次帥が軍服ではなく、党服を着て座っていた。

 今回、崔龍海国務第一副委員長と朴奉柱国務副委員長、金才龍総理の3人は出席していないことから軍事委員から外されたとの見方も出ているが、昨年の拡大会議でも崔龍海と朴奉柱の両氏は出席してなかったので即断するには早計かもしれない。