2019年12月28日(土)

 北朝鮮に振り回される日米韓!――相次ぐ「ミサイル発射誤報」!


 北朝鮮外務省の米国担当次官が今月3日に、米国との協議に進展がない状況を受け、「クリスマスプレゼントに何を選ぶかはアメリカの決心次第だ」とする談話を発表しただけなのに標的にされている米国及び、ミサイルが上空を飛来するかもしれない日本、韓国では緊張状態が続いている。

 そうした最中、公共放送のNHKは27日午前0時22分頃、「北朝鮮のミサイル 海に落下と推定 北海道襟裳岬の東約2000キロ」と速報したため一時大騒ぎとなるハプニングあった。

 就寝中の筆者も民放からの電話で叩き起こされたが、この日もテレビに出演し「北朝鮮は12月に単距離、中距離、長距離に関わらず一度もミサイルを発射した過去がないことから年内のミサイル発射はないし、衛星発射も、通常遅くとも5日前には国際機関に通告、予告してから発射しているのでこれまた年内には間に合わず、やるとすれば来年早々だろう」とテレビで断言していたので約20分後に「誤報」であったことが判明し、正直安堵した。

 火元のNHKはサイトやテレビで撤回、謝罪したものの後の祭りで、NHKの報道は即座に米国や韓国に伝播され、米国防総省や韓国合同参謀本部には問い合わせが殺到したようだ。クリスマス休暇でゴルフを楽しんでいたトランプ大統領の耳にもこのニュースが飛び込んだそうだから波紋は意外に大きかったと言える。

 核非拡散問題専門家のマサチューセッツ工科大学のビピン・ナラン教授はこの件について自身のツィターで「こうした特別な時点でのフェイク警報で戦争になることもある」と「誤報」の危険性について警鐘を鳴らしていた。その理由はナラン教授曰く、「ゴルフを興じていたトランプ大統領の周りに誰一人この情報を確認する人物がいなかったならトランプ大統領が対抗措置として核兵器の発射を直ちに命令することもあり得るし、そうなった場合、誰も彼を止めることができないからだ」そうだ。

 ところが、「誤報騒動」は日本だけでなく、前日(26日)に韓国でも軍事境界線に最も近く、第二歩兵師団が駐屯する在韓米軍基地キャンプ・ケーシーでも起きていた。誤って空襲警報が鳴り響き、ミサイル発射などに備えて厳戒態勢を取っていた基地内が一時パニックに陥ったと、米紙「ワシントン・ポスト」(27日付)が伝えていた。

 同紙によると、空襲警報が鳴ったのは午後10時頃で、その日の終わりを知らせる定時のメロディーを流すべきところ、担当者が誤って別のボタンを押してしまったことが原因だが、パニックに陥るのも当然で、この基地は北朝鮮から攻撃があった場合、第一の攻撃対象となるためだ。

 それにしても、この手の「誤報」は今に始まったことではない。NHKは昨年1月16日にも「北朝鮮がミサイルを発射し、全国にJアラート(順次警報システム)が作動した」との誤報をインターネットのホームページに流してしまった「過去」があるし、地方自治体でも同様のことが起きたケースもある。

 誤作動によるパニックで思い出すのは、2018年1月13日にハワイでの出来事である。

 ハワイでは非常サイレンを鳴らした住民退避訓練が毎月1回全域で約15分間、実施されているが、この日の午前8時7分頃に「緊急警報!弾道ミサイルの脅威がハワイに接近中。直ちに避難場所を探せ、これは訓練ではない!訓練ではない!」ことを知らせる緊急警報がテレビ、ラジオで流れ、ハワイ全土の住民の携帯電話に一斉に表示された。何と、誤報だったことを知らせるまで38分もかかり、その間の恐怖、パニックは凄まじかったと、現地のメディアは当時、伝えていた。 

 ハワイ州当局は「米太平洋司令部は北朝鮮のミサイルを探知できるが、迎撃に失敗するかもしれない」としてA4サイズ40枚に上る「北朝鮮核ミサイル退避住民指針書」を作成している。 

 北朝鮮から7500kmの距離にあるハワイは北のミサイルが発射されて、到達するまで約20分かかる。北のミサイルがハワイに向かっていることを米太平洋司令部が住民に知らせるまで5分かかり、従って、ハワイ住民は15分の間に避難しなければならない。指針では各自が持参する生存リュックサックに14日分の食事と水、無線機、呼ぶ笛、防水布、毛布、少額の現金などを入れるようにしておくことなどが指示されている。

 ちなみにハワイでは最悪のシナリオとして北朝鮮が15キロトンの核兵器を中心都市ホノルルの上空約300メートルの地点で爆発させた場合に備えた訓練も実施されている。

 指針によると、訓練では通常のサイレンに続いてミサイル飛来を知らせる2度目の警報サイレンが鳴れば▲住民も観光客も一斉に建物に隠れる▲運転中の場合は車を停車させて、建物の中に避難するか、地面に寝そべる▲上空の閃光(せんこう)は見ない−などの対策を取っている。

 日本のJアラート避難訓練とはレベルもスケールも違いすぎる。