2019年12月30日(月)

 経済と外交司令塔の前総理と外相が欠席、妹の与正は姿を現す!――注目の北朝鮮党全員会議

党中央委員総会で拳を振り上げ演説する金正恩委員長(労働新聞から)


 北朝鮮の外務次官(米国担当)が今月4日に予告していた米国へのクリスマスプレゼントがなかったことで北朝鮮を空から監視していたE−8(ジョイント・スターズ)やRC−135S(コブラボール)などによる米空軍の偵察活動は28日で一旦休止したようだが、金正委員長の36歳の誕生日を迎える来年1月8日前後が「危険」とみて、弾道ミサイル迎撃用のイージス艦(USSミリアス)が日本海に向かっているようだ。

  (参考資料:北朝鮮の対米「Xmasプレゼント」の「パズル」を解く! )  

 その北朝鮮だが、「年末に開催する」との今月3日の予告とおり、労働党中央委員会総会(全員会議)が28日に開催された。一日で終わると思いきや、29日、30日と3日連続で開かれている。

 全員会議は党大会、党代表社会に続き権威のある意思決定機構であるが、今回は何もかも異例ずくめである。

 金正恩政権が発足した2012年以来、年に2度の開催も、また12月に開かれたのも、そして3日連続で会議が行われたのも初めてのことである。そもそも会議が2日以上開催されるのは祖父・金日成政権下の1990年1月(5−9日)以来実に29年ぶりのことである。また、全員会議に召集された出席者の数も異例に多い。

 参加資格のある中央委員は委員128人に候補委員105人を加えた総勢233人だが、今回は内閣(閣僚)、道(県)・市委員長(知事や市長)、道農村経理委員長、郡党委員長、それに軍団長、司令官らが傍聴人として多数参加しており、映像で見る限り、その数はおよそ1000人に達する。

 全員会議で1000人も集まったのは2013年3月に核開発と経済開発の「並進路線」が打ち出された全員会議以来だ。事の重要性、緊急性が窺い知れる。

 そして、もう一つ気になるのは、主席壇の顔ぶれである。

 昨年4月の総会では金正恩委員長ら4人の常務委員しかひな壇に着席してなかったが、今回は18人も壇に上がっていた。いずれも政治局員である。しかし、21人いる政治局員のうち3人が欠席していた。党序列3位の朴奉柱党副委員長(前総理)と8位の李容浩外相、それに経済担当の盧斗哲副総理である。中でも気になるのは経済と外交の司令塔である朴党副委員長と李外相の欠席である。

 朴副委員長は今月22日に開かれた党軍事委員会拡大会議には欠席したものの直前の錦繍山太陽宮殿参拝にはNo.2の崔龍海党第一副委員長ら他の軍事委員らと共に金委員長に随行していた。また、その5日後(27日)には朝鮮中央通信が「サンウォンセメント工場を視察していた」と報道したばかりだった。急病でない限り、病気が欠席の理由とは考えにくい。

 李外相も今月9日に金委員長を「ロケットマン」と呼んだトランプ大統領に対して「金委員長の気分を害するような言葉を発するな」と注文を付ける談話を発表しており、また26日には朝鮮中央通信が「李外相がクエイトの外相に祝電を送った」と伝えていたことからこれまた異変があったとは考えにくい。対米外交の責任者の欠席だけに気になる。

 会議では金委員長が28日、29日と2日続けて、演壇に立って報告していたが、国防や外交では国の自主権と安全を徹底的に保障するための積極的で攻勢的な措置を取ること、経済では国の経済発展と人民生活で決定的な転換を起こす自立経済のさらなる強化に向けて対策を講じることが強調されていたことから経済と外交分野での人事刷新があるかもしれない。

 なお、10月15日の三池淵郡及び白頭山視察に随行して以来、消息が絶えていた実妹の金与正党政治局員候補(党宣伝先導部第一副部長)はこの日の総会には出席し、会場で兄を見上げながら発言をメモする様子が映し出されていた。12月3日の金委員長の白頭山登頂には随行してなかったことから「健康を害し、フランスで治療を受けている」との情報が流れていた。

 真偽は定かではないが、与正氏は数年前から骨結核を患っており、抗結核藥を服用しているとも言われており、これまでもしばしば長期間、動静不明となることがあった。

  (参考資料:北朝鮮がまだ見せてない「身の毛がよだつ」6枚の「Xmasカード」 )