2019年7月10日(水)

 「国際世論を味方に取り付けろ!」「場外戦」に打って出た韓国


 日韓の通商摩擦は全面対決の様相を呈しているが、守勢に立たされている韓国は米国や中国などの一部メディアが今回の日本の措置に苦言を呈していることもあって国際社会を味方に取り付ける「場外戦」に乗り出した。

 韓国政府は日韓間の見解の差が大きいことから直接交渉での解決は困難と判断し、世界貿易機関(WTO)など国際機関や日本に影響力を持つ米国など主要国との二国間協議の場で日本の措置の不当性を訴える方針のようだ。

 韓国は早速、昨晩ジュネーブで開催されたWTO(世界貿易機関)商品貿易理事会に日本の「輸出規制」を緊急議題として提起。WTO商品貿易理事会は商品に関連する問題だけを討議する場であるが、WTO提訴を前に国際機構と関係国に日本の措置の不当性をアピールするのが得策と判断し、緊急提案したようだ。結局、議長が電撃的に受理したことで理事会の最後に緊急案件として取り上げられた。

 商品貿易理事会には通常、参事官クラスが出席するが、問題の深刻性から韓国は白チア駐ジュネーブ大使自らが出席し、発言に立った。事態を重視した日本も井原純一郎駐ジュネーブ大使が出席した。

 白大使は日本がG20サミットの議長国として自由で公正な貿易を強調した直後にこうした措置を下したことに遺憾の意を表明したうえで、▲日本の措置が政治報復であり、自由貿易の原則に反すること▲日本が規制の理由にしている「信頼棄損」や「不適切な事案」がWTO規範上輸出規制措置の根拠にならないことなどを指摘し、日本の措置が「不当である」と訴えた。

 これに対して日本も井原大使が反論に立ち、▲韓国に対してはこれまで簡素化の手続きを適用してきたが、これを元に戻しただけで輸出規制ではないこと▲安全保障関連で輸出システムを点検し、必要な手続きを取っただけであることなどから「WTOに反しない」と応酬した。

 韓国は国際舞台で初めてイッシュー化し、WTOへの提訴を前に国際世論を喚起できたと自画自賛し、今月23―24日に開催されるWTO一般理事会でも取り上げる構えだ。韓国政府は日本が今回の措置を撤回しない限り、WTOで開かれる各種会議で持続的にこの問題を持ち出すようだ。

 韓国は、日本の信頼を損ねた理由の一つとして2年ごとに開催される戦略物資会議が3年も開かれてないことについては日韓担当者の人事異動で開催が遅延されたことに原因があると主張をするようだ。

 日本政府は戦略物資会議を2016年以後、韓国が回避していたと主張しているが、韓国は「2018年6月の会議は韓国が要求したが、日本の担当局長が空席で開かれず、今年1月と2月に日本が要求した会議は韓国の担当局長が空席だったことから開けなかった」と釈明するようだ。

 その一方で、韓国政府は今回の日本の措置が米国の企業にも影響を及ぼすことや米国が求めている日米韓協調体制に支障を来すことなどから米国に関係者を派遣し、韓国への支持と仲裁を要請することにしている。

 金フィサン外交部二国間経済外交局長が明日(11日)にもワシントンを訪れ、米国務省の国際金融開発担当次官補代理や東アジアン担当次官補代理らと会談する。来週には柳ミョンヒ通商交渉本部長の訪米も計画されている。

 仮に日本の今回の措置でサムソンのディスプレイ生産に支障を来せば、アップルが直接打撃を被るが、その一方でメモリー半導体分野のトップ2であるサムソンとSKが打撃を受ければ、業界第3位のマイクロンが反射利益を得て、市場占有率を高めることができるため必ずしも米国の支持、理解を得られるとは限らない。仮に8月に予定されている日米貿易交渉で農産物の開放などで日本が米国には配慮すれば、トランプ政権が日本の安全保障上の理由による今回の措置を容認する可能性も大だ。まさに、韓国にとってはもろ刃の刃である。