2019年6月24日(月)

 「トランプ−金正恩親書外交」のキーワード「興味深いこと」とは何?

ベトナム・ハノイでの第2回米朝首脳会談(労働新聞から)


 物別れに終わった2月末のベトナム・ハノイ会談以降、全面ストップ状態にある米朝核交渉が米朝トップ同士の親書交換で再開の兆しが見えてきた。

 トランプ大統領と金正恩委員長による親書交換は慣例化しており、すでに10回親書が行き交っている。その多くは、金正恩委員長からのもので、その都度トランプ大統領はメディアにその事実を公表していた。

 金委員長の親書の中身まで公開することはなかったもののトランプ大統領は常に「ビューティフルな手紙」と評価し、そして決まって「これから何が起きるか、みてみよう」と意味深の言葉を繰り返していた。

 例えば、米朝核交渉が昨年6月12日のシンガポール首脳会談後、3か月以上も膠着状態に陥っていた9月27日、金正恩委員長から親書が届いたが、トランプ大統領は「とてもビューティフルな手紙を寄こしてきた」と述べていた。また、直近の6月10日に届けられた親書についても「ビューティフルな手紙」と評したうえで、「何が書いてあるか、ここで明かすことはできないが、いつかはわかるだろう」とコメントしていた。

 トランプ大統領のこの「ビューティフル」という言葉を日韓では「素晴らしい」と訳すメディアがあるが、金委員長の親書の何が「素晴らしい」のかは実際にランプ大統領以外わかりようがない。ところが、不思議なことに当事者でない韓国の文在寅大統領が6月10日の親書について滞在先のノルウェーで「非常に興味深い部分がある」とまるで中身を知っているかのような発言を行っていた。

 文大統領は「親書にはトランプ大統領が発表しなかった非常に興味深い部分もあるが、トランプ大統領が発表した内容以上のことを先に申し上げることはできない」ともったいぶった発言をしたこともあって韓国ではこの「非常に興味深い部分」について金正恩委員長が▲寧辺の核施設以外のプラスα―(濃縮ウラン施設の解体)を受け入れた▲核・ミサイル関連リストと廃棄に向けたロードマップの提示を確約した▲先に非核化措置を取ることを表明したなどの見方から▲米国が求めている実務者による早期交渉を受託し、ビーガン対北朝鮮特別代表の訪朝受け入れを表明した、さらには▲先非核化措置確約の見返りにトランプ大統領の訪朝を要請したとの大胆な見方まで取り沙汰されていた。

 そして、今度は、トランプ大統領が金正恩委員長に充てた親書について北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」(6月23日)は「金正恩委員長は(トランプ大統領の親書について)素晴らしい」と評価したうえで「興味深い内容があるので慎重に考えてみる」と報道していた。

 金委員長が「興味深い内容」を慎重に検討する訳は「トランプ大統領の政治的判断能力と並外れた勇気に謝意を表した」(朝鮮中央通信)からに他ならないが、トランプ大統領が桁外れの勇気を持って政治決断した「興味深い内容」がこれまた以下のような様々な憶測を呼んでいる。

 その一、トランプ大統領が「ビッグディール」(先完全なる非核化、後制裁解除)を引っ込め、北朝鮮が求める段階的、同時的解決策に同意した。

 その二、金委員長の親書に応え、北朝鮮の非核化先行を条件に3度目の首脳会談を平壌で開催することに同意した。

 その三、非核化措置を取ることを条件に戦争終結宣言を行うことに同意した。 

 その四、G20首脳会議の訪韓の際、板門店で文在寅大統領を含む3者会談を提案した。

 トランプ大統領は金委員長からの親書を明らかにした6月11日、「親書に何が書いてあるか、ここで明かすことはできないが、いつかはわかるだろう。100年後にわかるかもしれないし、あるいは2週間後かもしれない」と語っていたが、ほぼ2週間が経った今、トランプ大統領が金委員長に親書を送り、興味深い提案をしていたことが判明したことで「G20」を前に訪朝し、金委員長から親書を託されたとされる習近平主席との首脳会談、そしてトランプ大統領の訪韓が今後の朝鮮半島の行方を占う上で最大の焦点となりそうだ。

  ▲(参考資料:「2週間以内」に朝鮮半島で4度目の南北首脳会談が実現するか )