2019年11月28日(木)

 前途多難な「日韓修復」! 「日韓合意」の6つの対立点


 「日韓合意」に基づく、韓国政府のGSOMIA破棄の中断とWTO(世界貿易機関)提訴の棚上げ及びそれに連動した日本の対韓輸出厳格化措置を巡る対話再開で関係修復が期待されているが、「合意」を巡っては早くも見解、解釈の相違が表面化しており、前途多難である。

 第一に、「日韓合意」の有無である。

 韓国の発表は「合意があった」との前提だが、日本には合意の認識はなさそうだ。

 韓国青瓦台(大統領府)の金有根国家安保室第1次長は22日に「韓日両国政府は、昨今の両国間の懸案解決に向け、それぞれ自国が取る措置を同時に発表することにした。我が政府はいつでも韓日軍事情報包括保護協定の効力を終了させられるという前提の下、2019年8月23日の終了通告の効力を停止した」として「日本政府はこれに理解を示した」と暗に合意があったとの前提で発表していた。

 一方、経済産業省の飯田陽一貿易管理部長が発表した内容は「日韓の健全な輸出実績の積み上げと韓国側の適切な輸出管理の運用で、(厳格化)見直しの検討が可能になる」ということと「懸案解決に寄与できるよう課長級から局長級の協議を行い、両国の輸出管理を相互確認する」というもので、要は韓国がWTO提訴の中断を通告してきたので記者会見を開いて日本側の対応を表明したまでの話だ。但し、経済産業省はその後公式ツイッターで日本側の発表が「韓国政府と事前にすり合わせたものだ」と言っていることから事前折衝があったのは間違いなさそうだ。

 第二に、同時発表でなく、日本の発表が遅れたことである。

 日韓の発表は同時刻ではなく、日本はやや遅れて発表した。韓国側の発表は午後6時ちょうどで、日本の発表は6時7分頃だった。韓国は「それぞれ自国が取る措置を同時に発表することになっていた」として、日本が遅れて発表したことへの不満を表明している。

 韓国からすれば、日本は韓国がどういう内容の発表をするのか見極めたうえで対応したとして「まるで後出しジャンケンだ」と言って、日本を批判しているが、必ずしも午後6時ジャストという決まりでなければ韓国の批判は当たらない。

 第三に、公式発表1時間前に韓国側の中断決定が日本で速報されたことである。

 韓国は「日本政府高官が意図的に日本のメディアに流出した」として批判しているが、韓国のマスコミも国民も自国の重大決定を日本の報道で知らされたことから韓国当局は日本にクレームを付けることになったが、日本が「フライング」したことについて日本からの釈明はない。

 第四に、先に交渉を持ちかけたのは韓国か、日本か?という肝心の点での対立である。

 韓国はGSOMIA時効(23日)一週間前に日本がホワイ国Aグループ除外を取り消すなどについて協議を行うことを提案してきたと主張している。その際に、日本側交渉人が「輸出規制を撤回するなら、形式的ではあるが、韓国の輸出管理体制に問題がないことを確認する必要がある。1か月程度時間がかかる」と言って来たと国民に説明している。

 従って、輸出規制に関する協議に向けた対話を提案しておきながら、日本がメディアを通じて「一切譲歩、妥協していない」と言っているのは詭弁であると反発しているが、日本は韓国がWTO提訴の中断を通告してきたので対話に応じることになったとの言い分だ。

 第五に、輸出規制に関する日本側の発表をめぐる対立である。

 日本は記者会見で「個別審査で輸出を許可する方針には変わりはない」と従来の方針を堅持する意向を表明したが、韓国は「日本の発表は合意内容とは異なる。日本側の発表どおりならば、合意そのものが実現しなかった」と怒り、駐韓日本大使館の公使を呼びつけ、抗議を行ったと説明している。

 第六に、韓国が抗議し、日本が謝罪したとされる問題である。

 この件で鄭容義NSC(国家安全保障室)室長は24日、「(経済産業省が)事実と異なる合意内容を発表したとして、外務次官の名義で口頭による謝罪を受け取った」と国民に説明していたが、日本(外務省)は謝罪のみならず韓国からの抗議そのものを全面否定している。

 韓国は1〜2カ月程度日本の出方を見守り、変化がないと判断した場合は、再度GSOMIAの破棄を検討しているようだ。