2019年10月11日(金)

 「日韓貿易摩擦」から100日 ダメージは韓国より日本のほうが大きい?


 「安全保障上の管理」を理由に戦略物資のフッ化水素など半導体素材3品の韓国への輸出厳格化措置が発動されてから今日(11日)で100日目となる。また、韓国のホワイト国(優遇対象国)除外(8月28日)から44日が経過した。

 「元徴用工判決への経済報復」と韓国から非難されたこの対韓輸出規制措置の結果、韓国の貿易、経済にどの程度、悪影響があったのだろうか?日本にとってはどのようなメリットがあったのだろうか?

 問題のフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの半導体素材3品の対韓輸出は今月初めに韓国国会で実施された韓国産業通商資源部への国政調査で7件しか許可されていなかったことがわかった。内訳はフッ化水素3件、フッ化ポリイミドが1件、レジストが3件である。今のところ、韓国の輸入企業は在庫や第三国からの調達で補い、実質的影響はなかったようだ。しかし、これからが本番だ。

 フッ化水素の場合は、8月の輸入は前月よりも83.7%も減少している。このまま規制が続くと、在庫が切れる11月から12月にかけて韓国経済を牽引してきた半導体製造に影響を及ぼすことになる。年間5000億ウォン相当の素材が日本から輸入できないとなると、170兆ウォンに上る半導体やディスプレイの海外輸出に支障を来すことになる。

 また、ホワイト国からの除外(AグループからBグループへの格下げ)で対日依存度の高い、半導体製造用装備、工作機械や鉄鋼、プラスチック製品、精密化学原料などの分野でも今後、甚大な影響が出てくることが予想されている。

 仮に、日本の輸出規制措置が撤回されず、長期化した場合の悪影響について大韓商工会議所が企業を対象に行った調査結果によると、輸出では81.2%が、輸入では93.8%が「影響を受ける」と回答している。韓国が期待している技術交流の面でも96.2%が「影響を受ける」とみている。韓国分野でも同様で「大きく影響を受ける」(48.4%)と「若干影響を受ける」(43.8%)と合わせて92.2%が長期化した場合の悪影響を危惧していた。

 それでも、現状では全体として日本のデメリットの方が大きいことがデーターから読み取れる。

 韓国は日本にとって輸出の上客である。韓国との貿易で一昨年は283億ドル、昨年は240億ドルの黒字を出している。韓国が官民一体となって「脱日本」「克日」を合言葉に日本に依存してきた素材や部品の国産化に乗り出していることから長期的には日本の輸出企業が韓国市場を失うことになりかねない。すでにその端緒は表れており、7月から8月の日本の対韓輸出は昨年同期間よりも8.1%も減少した。韓国の対日輸出減少率(3.5%)の約2倍だ。

 日本にとっての最大のデメリットは「日本の物を買わない、売らない、行かない」の「No ジャパン!」を合言葉にした「ボイコット運動」を引き起こしたことだ。

 韓国での日本車販売は2014年以降、年間ベースでは増加が続いていたが、吹き荒れた不買運動の影響をもろに受け、韓国輸入自動車協会(KAIDA)が一週間前に発表した統計資料によれば、不買運動が始まった7月(2674台)は17.2%減だったが、8月(1398台)は56.9%まで減少幅が拡大し、9月も同様の傾向が続き、前年同月(15.9%)の約3分の1の5.5%まで落ち込んでしまった。

 トヨタは374台で前年同月比61.9%減、ホンダは166台で82.2%減、インフィニティ(日産自動車)は48台で69.2%減、インフィニティ以外の日産自動車は46台で87.2%減だった。

 その他、日本製品ではビールの輸入量が7月は前年同月比−29%の5、131トンから8月は245トン、人気急上昇だった日本酒も7月は前年同月比−35%の235トンから8月は89.7トン、タバコも前年同月比−94.9%の1.3トンから8月は978kgと大きく落ち込んだ。ビールの8月の輸入量は前年同月比−97%、日本酒は同−68.9%と激減。タバコも8月は昨年同期比−85.4%となった。この他、デジカメやゴルフ、医薬品なども前年よりも20〜50%前後減少した。

 日本のビールは2009年1月から今年6月まで10年間トップの座にあったが、不買運動によって中国、オランダ、ベルギー、米国、ポーランド、ドイツ、デンマーク、チェコに抜かれ、さらに8月に入ると、フランスやメキシコ、香港にまで抜かれ11位にまで後退を余儀なくされてしまった。

 観光分野での被害も甚大だ。

 日本政府観光局(JNTO)と韓国観光公社の最新データー(9日)によると、7月から8月の2か月間に日本を訪れた韓国人旅行者は87万400人。昨年同期間(120万1894人)よりも27.6%(33万1494人)も減った。8月の1カ月間、日本を訪れた韓国人の数は30万8700人で昨年8月(59万3941人)に比べて48%も減少してしまった。

 その一方で、ベトナムやタイ、台湾を訪れる韓国人旅行者は急増し、ベトナムは前年月比25%増の40万1038人と、日本を上回り、タイも同9.95%増の18万418人と急増。台湾も昨年の7万1653人から今年は30.8%増の9万3694人に増えている。

 韓国人旅行者の日本と東南アジアの逆転現象は航空便にも表れており、韓国の国土交通部によると、8月の直行と経由を含む日本路線航空旅客数も152万1301人と、昨年8月(190万7960人)に比べて20.3%も減少。一方東南アジア路線は今年の8月は227万8625人と、1年前よりも19.8%も増加している。

 「日本に行かない」運動の影響をもろに受け、2001年から就航していた米子―ソウル便が9月から運休するなど韓国人観光客の減少による被害は鹿児島、宮崎、大分など九州をはじめ地方都市の観光産業に影響を及ぼしているが、対馬では直近の3か月間で訪れた韓国人は6万3496人と、昨年の同期間21万3850人に比べて70%も減少してしまった。

 減少率は7月の40.6%から8月は79.6%、9月は89. 7%となっており、ホテルや旅館、レストランなど開店休業状態を強いられている店も続出し、地元では政府に財政支援を要請している有様だ。

 韓国経済研究院の分析では7月から8月の韓国人観光客の激減で日本の生産誘発減少規模は3500ウォンを超えている。これは韓国の減少額の9倍に達する。

 ちなみに7月29日から9月1日まで韓国の8つのクレジットカード会社が発給したクレジットカードで日本の現地加盟店やオンラインで決裁した金額は606億6千万ウォンで昨年同期間(899億6千万ウォン)よりも32.6%(293億ウォン)も少ないことがわかった。

 この他に韓国によるWTOへの提訴や韓国地方自治体による日本製品不買条例化への動き、福島原発処理水問題の国際化、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄、東京オリンピック会場での旭日旗使用問題など様々な好ましくない事柄を誘発してしまったことも日本にとっては「負」となっている。