2019年10月24日(木)
「史上最悪の日韓関係」は打開されるか!? 注目される本日の日韓首相会談
安倍総理が「即位礼正殿の儀」に出席するため来日した韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相と総理官邸で本日午前11時から会談する。「日韓史上最悪の関係」と囁かれている関係打開の糸口となるのか、内外の注目が集まっている。
会談時間は10分そこそこだが、6月に大阪で開催されたG20サミット首脳会議では安倍総理が「多忙を理由」に文在寅大統領との首脳会談をパスしたことを考えると「一歩前進」である。一部には儀礼上、又は大統領の特使である以上、会わざるを得ないとの冷ややかな見方もあるが、李首相が知日派であることや日韓関係打開に向けての大統領の親書を持参していることから日本も今回の会談にはそれなりに期待があるようだ。
双方通訳を入れれば、10分での意思疎通は容易ではない。駐日特派員経験のある、日本語達者な李首相が通訳を介さないことも考えられなくもないが、会談時間の長短は大した問題ではなさそうだ。会談がセットされたこと自体に意義があるとするならば、関係修復に向けてのセレモニーとの位置付けだ。会談をセットした実務者レベルである程度、話が進んでいる可能性も否定できない。
李首相は昨日(23日)、記者団に対して「一定の結果が出ると思う」と自信を仄めかしていた。来日した22日時点での「まるでドラマチックに一言、二言で(解決)できることではない」との慎重な発言に比べると、滞日中に日本からそれなりの前向きの感触を得た可能性も否定できない。
李首相は日韓懸案として▲元徴用工と慰安婦問題▲日本政府の対韓輸出規制問題▲GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄の3点を挙げていたが、「一定の結果が出ると思う」と言っているところをみると、それなりの「打開案」、日本からすれば「譲歩案」を提示するようだ。
李首相が「日韓関係は日韓国交正常化に基づく。日韓条約も協定も尊重、順守してきた。双方の立場の違いも対話で解決しなければならない」ことを強調しているところをみると、焦点の元徴用工の保障問題は1965年の日韓条約で、元慰安婦の問題も2015年の日韓合意で解決済との日本の立場を尊重した上での「打開案」を提示することが想定される。
文政権は基本的には三権分立の原則から新日鉄住金など敗訴した日本企業に元徴用工への保障支払いを求めた最高裁判所の判決を受け入れざるを得ない立場だ。そのうえで、日本企業に加え、国交正常化当時日本が支払った経済協力金という名の賠償金で潤った韓国企業も負担する「日韓企業による折半(1+1)」にプラスαとして裁判にまだ提訴してない元徴用工らに対しては韓国政府が全額負担するとの「韓国案」を提示していた。
文政権は「韓国案」はたたき台であって、日本側も案を提示すれば、双方にとって受け入れ可能な折衷案を模索すると繰り返していたが、元徴用工問題は日韓条約で解決済との立場の日本からすれば、日本企業が韓国最高裁の判決に従い、支払いに応じれば、日本自らが条約に反する行為を行うことになるとの原則的な立場から「韓国案」を拒否しているのが実情である。
韓国政府内には日韓企業と日韓政府による「2+2」による補償方式や日本企業に金銭的被害がないようにする策として日本企業が保障に応じた後、韓国政府が日本企業に返済する案なども検討されているようだが、「韓国最高裁の判決は国際法に反する」と主張している日本が日本企業に「びた一文出す必要はない」との指示を撤回しない限り、今回の会談で韓国側が待望する「成果」が得られるとは思えない。
文政権としては今回の会談で折り合いをつけて、来月上旬にシンガポールで開かれるASEAN関連の首脳会談の場か、中旬にチリで開かれるAPEC首脳会談の場で日韓首脳会談の開催を待望しているようだ。それもこれも、米国との関係を損ないかねないGSOMIAの破棄が来月23日に発効するからだ。
李首相が事態打開のためどのような「譲歩案」を示すのか、興味津々だ。