2019年9月25日(水)
韓国とはなぜ胸襟を開き、目前の課題を解決しないのか
安倍晋三首相は今朝(現地時間24日午後)国連での演説でトランプ大統領が金正恩委員長との首脳会談に応じたことを次のように評価していた。
「首脳同士が胸襟を開き、未来に光明を見て目前の課題を解こうとするやり方は、北朝鮮をめぐる力学を変えた」
トランプ大統領が今月20日に豪州首相との首脳会談を前に記者らに「金委員長との非常に良い関係が在任中に米国で起きた最も良い事」と自画自賛していたことから安倍総理がトランプ大統領の対北アプローチを評価するのは予想されていたことだ。
確か、昨年6月12日にシンガポールで米朝首脳会談が行われた時も真っ先に「今日の米朝首脳会談に至るまでのトランプ大統領のリーダーシップと努力に対して心から敬意を表したいと思う」とトランプ大統領を持ち上げる発言を行っていた。
安倍首相が言うまでもなくトランプ大統領はブッシュ・パパからクリントン、ジュニア・ブッシュ、そしてオバマと歴代大統領が手を焼いていた北朝鮮の核問題を史上初の米朝首脳会談を行うことで解決の糸口を見出だそうと最大限の努力を払っている。その意味では安倍首相がトランプ大統領の英断、イニシアチブを評価するのは至極当然のことだ。
安倍首相の発言を聞いて不思議に思うことは「史上最悪の日韓関係」の打開のためなぜ文在寅大統領と胸襟を開いて、会談を行おうとしないのかである。文大統領と会談しても未来に光明を見出すことができないからなのか、それとも、韓国をめぐる力学を変える自信がないのか、どちらかなのだろう。やっても無駄と考えているならば、無理強いしても仕方がない。
しかし、よく聞けば、安倍首相は必ずしも日韓首脳会談を全面的に拒否しているわけではなさそうだ。条件が整えば、いつでも応じる用意があるようだ。そして、その条件とは、安倍首相が繰り返し言っているように「国と国の約束、即ち国際法を韓国が順守する」ことのようだ。
換言するならば、慰安婦問題や元徴用工問題で日本が納得できるような措置を文政権が講じることが前提条件のようだ。文政権が日韓関係改善に向けて前向きの措置を取らない限り、会談をしても得るものがないと判断しているようだ。裏を返すならば、安倍総理は文大統領とは条件が整わなければ、即ち、無条件では全く会う気がないようだ。
振り返ってみれば、安倍首相の立場は5〜6年前の朴槿恵前大統領の立場と全く同じだということがわかる。
朴大統領は「日本が慰安婦問題で善処しなければ、日本との首脳会談には応じられない」との強硬な姿勢を貫いていた。それに対して当時の安倍首相の立場はどうだったのか?
朴大統領の「前提条件」に「課題があれば、首脳同士がまず会って話をすべき」と、安倍首相は「無条件対話」を譲らなかった。一貫して「日韓に問題が、懸案があるからこそ、首脳同士が向き合って話をする」ことが重要との立場だった。これぞ、正論である。
実際に、今朝の国連演説で安倍首相は金正恩委員長に対して「私自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意だ」と述べていた。拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を実現するには直接向き合って話をする必要があると前提条件のない首脳会談を呼び掛けていた。
安倍首相は昨年から一貫して北朝鮮に対しては「日朝間における相互不信の殻を打ち破るためには私自身が金委員長と直接向き会わなければならない。条件を付けずに金委員長と会って、虚心坦懐、話をしたいと思っている」と無条件対話を呼び掛けている。
ちなみに安倍首相はかつて中国との間でも「日中首脳会談開催には領土(尖閣)問題の存在を認めること」を条件とした中国に対して「条件は呑めない」として「無条件の対話」を呼び掛けた経緯がある。
「首脳同士が胸襟を開き、未来に光明を見て目前の課題を解こうとするやり方」が正しいと評価しているならば、安倍首相自らそれを韓国に対して実践してみたらどうだろうか。