2020年4月14日(火)

 韓国の総選挙は「日韓戦」?「中韓戦」? 「親中」の与党対「親日」の野党の場外戦へ!

総選挙を「韓日戦」と定めた与党支持団体のポスター(読者撮影)


 韓国は新型コロナウイルス感染の最中、国会議員選挙(総選挙)を強行しているが、明日(15日)が投票日である。

 文在寅政権を支える与党の「共に民主党」と政敵の最大野党「未来統合党」は互いに過半数(151議席)獲得を目標にしているが、現実には双方とも過半数獲得は困難で、次善策として国会での第1党の座を目指している。

 第1党になるには比例区(47議席)を除く地方区253議席のうち半数に近い121議席を占める首都のソウル、京畿道、それに仁川などの首都圏と中部の忠清南道での勝敗の行方が左右するが、ソウル(49選挙区)のうち10選挙区、京畿道(59議席)のうち11選挙区、仁川(13議席)のうち3議席、そして忠清南道(11議席)のうち9選挙区の情勢が混とんとしており、開票してみなければ読めない展開となっている。

 「共に民主党」は次期有力大統領候補である李洛淵総理を前面に「コロナに打ち勝つためにも政権の安定が必要!」をキャッチフレーズに戦っており、また「未来統合党」は文在寅政権誕生の立役者でもある「選挙請負人」の金鐘仁氏を総括選挙対策委員長に担いで「経済を破綻させた文政権を審判しよう!」を合言葉に国民に支持を訴えているが、その一方で支援団体や支持者らの間では選挙に便乗した「反日」「反中」運動が展開されるなど「場外戦」が演じられている。

 与党支持者の間では「総選挙は韓日戦だ!」の合言葉の下、ポスターまで作成され、実際に親日的な議員の落選運動まで展開している。

 そのターゲットとされているのが「日本に融和的だ」と批判されている「未来統合党」で、700の市民・社会団体から成る全国組織の「安倍糾弾市民行動」などは4月9日に記者会見を開き、「落選させるべき候補」として8人の名簿を公表している。筆頭の黄教安党代表を含め8人全員が「未来統合党」の候補者であった。

 朴槿恵前政権崩壊の引き金となった「光化門ろうそくデモ市民連帯」と日本の輸出厳格化措置に反発して日本製品ボイコット運動を展開した「国会国産化運動本部」の両団体も「投票で親日清算を!」と呼び掛けており、光化門や世宗路の一帯に「総選挙は韓日戦だ!」の文言が書かれた垂れ幕が掲げられている。垂れ幕の左側に豊臣秀吉軍を撃退した李舜臣像と伊藤博文を暗殺した安重根、抗日独立運動家の金九、柳寛順、尹奉吉らの肖像画が並んでいる。

 また、従軍慰安婦問題に取り組んでいる「正義記憶連帯」は今月初めに各政党に2015年に慰安婦問題の解決の一環として日本政府が慰労金名目で拠出した10億円(約110億ウォン)を日本に返還することを求めるアンケート調査を実施し、また別の市民団体では総選挙候補者568人に対して国立墓地に埋葬されている親日派の墓を移転することについて問い質すなど選挙戦に便乗した運動を展開している。

 ちなみに前者についてはアンケートを求められた10政党のうち「未来統合党」と同党の比例政党である「未来韓国党ともう1党を除く与党を含む7つの政党が同調し、また、後者については回答者568人のうち、546人が「移転」に賛成していた。回答を寄せた民主党253人の内、213人が、「未来統合党」236人の内、110人が賛成していたが、与党の黄教安代表と羅ギョンウォン前院内総務は回答しなかった。

 与党支持者らのこうした「親日攻撃」に対して「未来統合党」は同党の比例政党である「未来韓国党」の比例1番に尹奉吉の孫(前独立記念館館長)を擁立し、批判を交わす一方で、新型コロナウイルスが拡大した際に即座に中国旅行客の入国を禁止しなかったり、国内で不足しているマスクを300万枚も中国に優先的に回すなど中国への弱腰、忖度に終始し、曖昧な対応したことから「総選挙は韓中戦!」のフレーズを提起し、与党側に猛反撃している。

 特に、「未来統合党」を支持する保守層は文大統領が習近平主席に「中国の困難は我々の困難である。我が政府は最も近い隣国・中国の努力に少しでも約立つようにしたい」と発言したことを「我が国民が中国のウイルスに苦しんでいるのに文大統領は一体、どの国の大統領なのか?」と痛烈に批判し、それに触発され、「文大統領の弾劾を求める」青瓦台への請願が3月5日に146万人達したこともあって、文政権の対中姿勢を徹底的に批判している。