2020年8月17日(月)

 韓国の次期大統領候補トップに躍り出た「李在明」は何者? 「親日」か「反日」か

次期大統領候補の李在明知事(左)と李洛淵前総理(李在命知事のHPから)


 日本では文在寅大統領である限り、韓国との関係は良くならないとの声が聞かれるが、文大統領の任期は再来年(2022年)5月までである。そこで注目されるのが次期大統領候補である。世論調査では常に支持率がトップだった「知日派」の李洛淵前総理(68歳)が有力視されていたが、俄かに李在明・京畿度知事(56歳)がダークホースとして急浮上した。

 世論調査会社「韓国ギャラップ」の今年1月(第2週)の世論調査では本命視されている李前総理の27%に対して李知事は僅か4%と大差を付けられていたが、今月第2週(11−13日)の調査では李知事が19%と、17%の李前総理を2%も引き離し、トップに躍り出た。

 李知事は与党「共に民主党」出身である。貧しい家柄であったことから小学校卒業後に中学に進学せず、(京畿度の)城南工業団地で働く工員だった。勤務中に機械に挟まれた左腕は今も曲がったままだ。その後、独学で韓国の中央大学法学学士を取得し、25歳で司法試験に合格し、盧武鉉元大統領、文在寅大統領同様に人権派弁護士となった。2007年に政治の道を志すまでのプロセスは弁護士時代に社会的弱者のために活動し、その後大統領になった盧武鉉元大統領と酷似している。

 李明博保守政権下の2008年に国会議員選挙に出馬するものの落選。心機一転、2年後の2010年にソウル郊外にある人口100万人都市の城南市の市長選挙に出馬し、当選。現在3期目である。

 破綻寸前の市の財政を立て直すなどその行政手腕は市民から高い評価を受けている。特に若者向けの年間5万円の商品券や中学に入学する生徒への制服の無料提供など福祉にも力を入れ、若者から絶大な支持を得ている。

 「崔順実スキャンダル」との関連で朴槿恵前大統領の下野を真っ先に叫んだのが他ならぬ李知事だったことから朴槿恵前大統領の罷免によって実施された前回の大統領選挙でも候補者として取り沙汰され、一時は世論調査で17.2%の支持を集め、驚いたことに本命候補だった前国連事務総長の潘基文氏(15.2%)を抜いて2位に躍り出たこともあった(1位は23.8%の文在寅氏)

 腐敗体質の朴槿恵政権だけでなく、財閥との政経癒着を許してきた既得権勢力への国民の不満が極度に達していたことから国民は文氏や潘氏ら旧来の政治家よりも、より新鮮で中央政治に汚れてない指導者を求めていた。その意味では李在明氏は政策的にはむしろ米国の民主党大統領候補だったバーニー・サンダース氏に似ている。

 李知事には突進型で食いついたら離さない性格なことから「ブルドック」のあだ名が付けられている。また、「朴槿恵を拘束して、財閥の総帥らも拘束して、法は万人の平等であることを示さなければならない」とか「政経癒着し、労働を弾圧し、中小企業を苦しめる財閥を解体させなければならない」等の歯に衣を着せぬ言動は国民からすれば溜飲を下げる「サイダー」のようなものだった。当然、反対者からすれば「暴言」に聞こえ、その発言が余りにも過激なためマスコミでは「韓国のトランプ」と称されたこともあった。

 問題の李知事の対日観だが、おそらく以下のような発言から察することができるだろう。

 ▲慰安婦問題について

 「日韓慰安婦合意は破棄、再交渉すべきである。日韓合意は被害者が同意しなければ効力はない。密室で決めた結果であって、国家間の合意の最小限の条件も備えていない。正統性もなければ、国民の信頼も完全に失い、追い出される危機に瀕していた政府(朴槿恵政権)がやったことだ。一番良いのは、国家で合意無効の決議を採択することだ。合意文書がないならば、合意の条件も備えてない。合意には実態がないから否認すればよい。民間が提起する真相究明や補償問題について政府は再度(日本側と)交渉しなければならない」

 ▲日本大使館前の慰安婦像について

 「ソウル市のものなのでソウル市が除去しない限り、政府が強制撤去させることは不可能だ」

 ▲日本の輸出厳格化措置について

 「日本は素材、装備、部品産業の優越性を利用して、韓国経済に大々的な攻勢を掛けている。(日本は)比較優位を理由に多くの恩恵をうけてきたのにそれを他国への攻撃手段に利用するのは前例のないことだ。日本の経済報復は日本が傲慢であることの反証である」

 ▲GSOMIAについて

 「GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の更新はいつでも可能だ。国内法的には国会の同意が必要となる」

 李在明知事もまた、対日強硬派である。