2020年8月31日(月)

 「知日派」であっても「親日」ではない! 韓国与党新代表の「対日観」

与党の新代表に選出された李洛淵前総理(右)と李在明京畿道知事(京畿道HPから)


 韓国の与党「共に民主党」の新代表に李洛淵前総理が党大会で選出(8月29日)された。

 「共に民主党」は今年4月に行われた総選挙(国会議員選挙)で300議席中3分の2の議席を獲得した巨大政権党である。そのトップに李前総理は立った。

 李代表は当然2022年春に行われる大統領選挙の有力大統領候補の一人である。各種世論調査でも同じ与党系の李在明京畿道知事に8月に入って抜かれたが、それまでは常にトップを走っていた。依然として本命候補には変わりがない。

  (参考資料:韓国の次期大統領候補トップに躍り出た「李在明」は何者? 「親日」か「反日」か

 日本のメディアの多くは李代表を「知日派」と称している。大手紙「東亜日報」記者時代の1989年から93年まで特派員として東京に駐在していたこと、また2008〜12年まで超党派の韓日議員連盟の副会長兼幹事長、12年からは首席副会長を務めたことなどがその根拠となっている。

 確かに、東亜日報の姉妹紙である「A」社を通じて、或いは議員連盟を通じてそれなりの人脈を形成したのは確かである。日本についてもそれなりに精通している。しかし、「知韓派」が必ずしも「親韓派」でないのと同様に「知日」イコール「親日」ではない。日本の書店には相変わらず「反韓・嫌韓」関連本が並んでいるが、その多くは韓国で特派員を経験した記者、ジャーナリストが執筆したものであることは周知の事実である。

 李代表が特派員時代に書いた記事はどちらかと言えば批判的な記事が多かった。それもそのはずで「慰安婦問題」がクローズアップされ、日韓の政治懸案として浮上した時に特派員をしていたからに他ならない。

 李代表は日本が「反日大統領」と称している文在寅大統領を政権発足以来、総理として支えてきた。事実上,NO.2として文大統領の内外政策を支えてきた。

 日本では対中、対韓外交方針、あるいは歴史認識などで安倍首相と次期首相候補の一人である石破茂氏との間に温度差があるが、文大統領と李代表の対日観は同じで、対日政策では一心同体で対応してきた。元慰安婦や元徴用工問題、領土問題、レーダー照射問題、ホワイト国除外問題、GSOMIA破棄の問題、旭日旗問題、日本海の東海併記問題等どれ一つとっても基本的なスタンス、認識は文大統領と同じである。でなければ、文在寅大統領の下、首相は務まらなかったはずだ。

 総理在任中の徴用工関連発言だけを見ても、そのことは一目瞭然である。

 ▲徴用工問題

 「元徴用工被害者に関する大法院(最高裁)の判断を尊重し、被害者の傷が一日も早く癒されるようにする」(2018年10月30日 国民向け総理談話)

 「(河野外相(現防衛相)が韓国の大法院判決を『暴挙であり、国際秩序への挑戦である』と発言したことについて)日本の政治指導者らが過激な発言を続けていることに憂慮を表明する。日本政府はこの問題を外交問題にすべきではない」(2018年11月7日 総理見解)

 「日本の指導者らは国内政治の目的に自国民の反韓感情を利用しようとしている」(2019年1月10日)

 「日本が隣国を侵略、支配したその傷跡が少なくとも被害者の心の中に残っている。こうした事実の前に日本は謙虚でなければならない」(2019年1月12日)

 「(訪韓した額賀福志郎日韓議員連盟会長に対して)韓国大法院の判決を尊重している。裁判に応じておきながら、判決は受け入れないと言うのでは話にならない。この問題は国家間の問題ではなく、個人と企業の問題なので国際司法裁判所で扱う問題ではない。」(2019年2月13日)

 ちなみに、日本が韓国をホワイト国から除外したことについても以下のように発言している。

 「これは韓国に対する半導体核心素材輸出規制に続く報復第2弾だ。日本は越えてはならない線を越えた。日本の相次ぐ措置は両国間、ひいては世界の自由貿易と相互依存的経済協力体制を脅かし、韓米日安保共助体制のバランスを崩す仕打ちである。断固対応せざるを得ない」(2019年8月3日 国務会議での発言)

  (参考資料:「安倍首相辞任」でどうなる日韓関係? 次の首相と信頼関係を築けるか?