2020年12月16日(水)

 前代未聞の法相vs検察総長 検察総長に再び停職処分! 権力抗争の決着はこれから!

停職2か月の処分を下された次期有力大統領候補の尹錫悦検察総長(検察庁HPから)


 韓国で史上初の検察総長への懲戒が下された。

 昨日、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官(法相)による尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長への懲罰の是非をめぐる2回目の懲戒委員会が午前10時半に開かれ、17時間30分という長時間にわたる審議の結果、尹検察総長に2か月の停職処分が下された。

 「生きるか、死ぬか」の韓国の法相と検察総長による権力抗争は「ボクシングに例えるならば、ノーガードの4回戦ボクサーの戦いのようだ」とみているが、第1ラウンドは尹錫悦検察総長の職務停止と懲戒請求に持ち込んだ秋美愛法相の、第2ラウンドは訴訟を起こし、職務停止の執行停止を勝ち取った尹総長のラウンドとなったが、第3ラウンド(懲戒委員会)は秋法相がポイントを取ったようだ。しかし、大方の予想とは違い、KO(解任)とはいかなかったようだ。

 秋法相が懲戒の理由として挙げた6つの不正のうち▲全国37人の裁判官に対する身元調査文書の作成と配布▲「チャンネルA」の記者との癒着疑惑を持たれていた尹検察総長の側近検事への監察妨害▲「チャンネルA」関連捜査妨害▲政治的中立の既存の4つは認定されたが、残り2つは不問に処された。

 懲戒は委員の過半数で決定する。委員長代理を務めた韓国外国大学法科専門大のチョン・ハンジュン法科教授の説明では、委員会は尹検察総長の弁護人団を退席させた後、午後9時から今朝の午前4時まで7時間にわたって解任から停職6か月を軸に審議し、最終的に2か月の停職で決まったとのことだ。

 懲戒処分は重い順から解任、免職、停職、減給(現在の尹検察総長の給料は約97万円)、譴責(戒告)の6段階に分かれているが、停職はちょうどその真ん中。また、停職期間も最長で6か月、最短で1か月まであるが、停職6か月ならば、任期が来年7月までなので事実上、解任処分に等しい。停職期間だけをみれば、2か月は比較的軽い処分と言える。

 減給以上の処分は大統領が執行することになっている。それも自動承認がこれまでの慣例となっている。拒否することも、罰を軽くすることもできない仕組みとなっている。従って、文在寅大統領が受け入れ、裁可する可能性が大だ。

 △今後の注目点

 尹検察総長は「検察の政治的中立を守るため、これまで一点も恥じることなく検察総長の任務を全うしてきた。違法・不当な処分に対し最後まで法的に対応する」と宣言しているから徹底抗戦することになるだろう。

 すでに尹検察総長の弁護団は▲チョン懲戒委員長は中立、公正な人物ではないこと▲懲戒委員は7人で構成しなければならないのに4人で決めるなど手続き上問題があったこと▲反論する時間も期間も与えなかったことなどを理由に懲戒委員会の処分は「違法、不当である」として行政裁判所に取り消しを求める訴訟を起こすことにしている。尹検察総長にとっては何よりも職務停止命令の執行停止が先決である。

 秋法務長官が11月24日に職務停止命令を出した際には執行停止の仮処分を求めソウル行政裁判所に訴えたが、裁判所は▲尹検察総長の不在による業務の混乱も重大な公共の福利であり、職務を遂行できないことで尹検察総長に回復できない損害を与えている▲職務執行が続いた場合、任期(来年7月24日まで)中に総長を事実上解任したも同然である▲職務停止は独立性と政治的中立を保障するため検察総長の任期を定めた法に反する▲検察総長が法務部長官の指揮・監督権に無批判に従えば、検事たちの独立性と政治的中立性は維持されない。法務部長官の検察総長に対する指揮は最小限にとどめるべきであるなどの理由から職務停止命令の執行停止を認めていた。その結果、尹検察総長は1週間で職場に復帰ができた。

 今回、訴える相手がチョン懲戒委員会委員長代理となるのか、それとも秋法相になるのか、あるいは裁可した文在寅大統領になるのかも興味深いが、何よりも裁判所が前回同様に尹検察総長の訴えを認めるのか、それとも却下するのかが最大の焦点となるであろう。

 4ラウンドで抗争終了のゴングが鳴るのか、あるいはさらにラウンドが続くのか、これまた興味津々だ。

 世論調査で次期大統領候補の1位に躍り出た尹検察総長の2か月の停職処分を国民が果たしてどう受け止めるのか、世論調査の結果も注目される。