2020年2月26日(水)

 「新型肺炎」への日韓両国の対応を比較(第5弾) 他人ごとではない深刻な韓国の感染状況!

新型コロナウイルスの感染拡大で弾劾を迫られている文在寅大統領(出所:青瓦台)


 中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(新型肺炎)を予防し、拡大を防ぐためにも同じような被害を被っている、中国の隣国である日韓両国が情報を密に交換し、協力することが大事だ。前回(2月14日)に続き、日韓の現状を比較してみた。

 ▲感染者の数(26日午後4時基準)

 日本:178人(+21人)※チャーター便感染者14人も含める。 (+クルーズ船感染者691人)

 韓国:1261人(+284人)

 ▲死亡者

 日本:2人(2月13日と26日)+(クルーズ船死亡者3人)

 韓国:12人(+2人)

 ※11人目の死亡者は36歳の韓国在住のモンゴル人。

 ▲地域別(2月26日午後5時基準)

 日本:(17県)北海道(39人)、東京都(32人)、愛知県(20人)、神奈川県(17人)、和歌山県(13人)、千葉県(13人)、熊本県(5人)、沖縄県(3人)、石川県(4人)京都府(2人)、福岡県(2人)、大阪府、長野県、埼玉県、三重県、奈良県、徳島県、栃木県はそれぞれ1人。厚生省職員(7人)※チャーター便の14人は除いている

 韓国:(全道・市)大邱:677人(+134人)、慶尚北道:267人(+19人)、釜山市:51人(+8人)、ソウル:44人(+4人)、京畿道:43人(+1人)、慶尚南道:25人(+2人)、済州道:20人、光州市:9人、江原道:6人、全羅北道:3人、忠清北道:5人、大田市:3人、蔚山市:3人、仁川市:3人(+1人)、全羅南道:2人、忠清南道:2人、世宗市:1人

 ▲回復者(2月26日午前9時基準)

 日本:23人

 韓国:22人

 ※集団感染の大邱の新天地イエス教会の感染者(677人)のうち368人が現在入院中にあるが、18日から入院していた47歳の男性が治療の結果、24日と25日の2度の検査結果、陰性だったことから今日にも退院する。教会関係者としては初の退院である。

 ▲PCR検査

 日本:6時間以内に結果が確認できる「リアルタイムPCR法」の検査能力は1日最大300件程度だった。政府は地方の衛生研究所で1800件、民間5社で900件、検疫所で580件、国立感染研究所で400件、そして大学での250件を併せて一日に3830件の検査が可能と言っているが、全てが新型コロナウイルスに限定した検査ではない。

 韓国:当初は1回の検査で6時間以内に結果が確認できる「リアルタイムPCR法」の検査は2月7日から1日に5千人の診断ができる。今月末には2倍の1万人の診断が可能となり、来月末には1万3千件の検査が可能となる。

 ▲トップの対応

 日本:安倍総理は1月24日に官邸で新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する関係閣僚会議を開いたのを皮切りに2月5日、7日、12日、13日、14日、16日、23日、25日と新型コロナウイルス感染症対策本部に出席。16日には午後に30分という短時間ながらも新型コロナウイルス感染症対策専門家会議に出席。また、1月26日以降、菅官房長官らを交えて加藤勝信厚生労働相や鈴木康裕厚労省医務技監、高田昌行国土交通省港湾局長と定期的に会っていた。

 韓国:文在寅大統領は1月26日に疾病管理本部部長及び国立中央医療委員長と電話会談。128日に新型コロナウイルス感染症対応現場(国立中央医療院)訪問し、30日には新型コロナウイルス感染症対応総合点検会議を主宰。2月に入ると、2日に感染病専門家との懇談会。3日に李グァンホ武漢副総領事と電話連絡。4日に対策閣僚会議を主宰。5日に保険省を訪問。9日にチャーター便で帰国した隔離者の臨時生活所2か所を訪問し、職員らを激励し、地域住民らとも懇談。13日に大韓商工会議所を訪れ、コロナ19対応経済界懇談会に出席。20日に感染が蔓延している大邱市長や疾病管理本部長と電話会談。21日にコロナ19対応関連緊急会議とコロナ19対応内需・消費業界との懇談会(観光、ホテル、講演行事関連団体が出席)を開く。23日にコロナ19汎政府対策会議(閣僚らが出席し、全国道知事、市長らがテレビ会議出席)に出席。25日に集団感染の大邱市を訪問。25日から丁世均首相が中央災難(災害)安全対策本部長として大邱に常駐し、現場の陣頭指揮を執る

 ▲政府の新方針

 日本:(現状認識)一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態になったが、現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない。感染の流行を早期に終息させるためには、この1〜2週間が重大。クラスター(集団)が次のクラスター(集団)を生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じていく。

 今が、今後の国内での健康被害を最小限に抑える上で、極めて重要な時期であるので国民に対して▲感染の不安から適切な相談をせずに医療機関を受診することや感染しやすい環境に行くことを避けていただく▲手洗い、咳エチケット等を徹底し、風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず、外出される場合にはマスクを着用していただく▲企業に対して患者・感染者との接触機会を減らす観点から、企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける▲イベント等の開催については現時点で全国一律の自粛要請を行うものではないが、イベント等を主催する際には、感染拡大防止の観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討するよう要請する。

 韓国:(現状認識)今週中が最大の山で、特に手段寡占している大邱と周辺の慶尚北道は「複合危機地域」になりつつあるとの認識、文大統領は「今週中に感染者の増加ペースにはっきりとした転換点をつくるべき」と強調。

 ▲感染病危機警報が「深刻」に引き上げられたことから不急不要な一回性のイベント行事や狭く、密閉した空間で多数が密集する行事、脆弱階層が主要対象となる行事などの延期、中止を勧告する。野外行事の場合、多数が密集し、歌ったり、応援したり、歓声を挙げるなど唾伝播が可能な行為や身体接触があるような行為を行う行事も対象となる。親睦を目的とした集まりや会食、旅行など至急性と必要性がない私的な集まりも可及的速やかに自制することを求める。

 ▲呼吸器症状や発熱が出た場合は出勤せず、4日間観察し、必要な場合、1339コールセンター相談を通じて診断検査を実施するようにする。企業や学校でも有症状者が不利益を得ないよう在宅勤務、休暇などを積極に配慮するように要望する・

 ▲幼児や子供らの感染を予防するため2月27日から3月8日の日曜日まで全国の幼稚園や保育園を休園する。その間、担任先生を自宅に派遣し、緊急保育を行うようにする。

 ▲集団感染を引き越している大邱では26日から全ての集会を禁止する。大邱で最初の感染者と接触した1193人の検査を完了させ、残りの教会信者8269人の検査を3日内に終わらせる。

 ▲大邱・慶尚北度では3月1日まで慶尚北道病院、大邱医療院など既存の大邱地域だけでなく、大田、忠清道や慶尚南道、馬山地域の病床を含め1600個の病床を確保する。感染者が直ちに入院できず待機している問題を解決するため現地病院に専門管理人員を派遣し、改善措置を取る。2月24日から大邱地域での拡散防止のため初期診断と治療に奉仕する医療人員を募集する(26日午前9時までに医師11人、看護婦100人、看護助手32人、臨床病理土22人、行政職40人が応募)

 ▲集団感染の新天地教会の信者のリスト(21万2千人)を確保し、それぞれの地域で面談を要請していく。症状がある場合、即時自宅隔離した後、自宅を訪れ、診断、検査を行う。中間過程の情報を国民に透明性を持って伝える。

 ▲マスクは大邱と慶尚北道に26日、27日にそれぞれ100万枚配布する。それ以降も一般の消費者のため農協や薬局を通じて350万枚供給する。医療機関にも毎日50万枚供給する。

 国会の対応

 韓国:新型コロナウイルス感染に対応する3つの法案(コロナ3法)が2月26日に国会で採択。

 感染病予防管理法と検疫法及び医療法の3つで、感染の疑いがある者が検査や隔離、入院治療を拒否した場合、処罰を受ける。具体的には検査を拒否した場合は300万ウォン(約27万円)の罰金。自宅隔離や入院治療を拒否した場合は1年以下の懲役もしくは1千万ウォン(約90万円)の罰金が科せられる。

 また、物価が急激に上昇し、医薬品が不足した場合、マスクや消毒剤などの輸出、国外搬出を禁止できる。これに違反した場合、5年以下の懲役もしくは5千万ウォン(約450万円の罰金)。また、感染病発生地域を経て入国する外国人の入国の禁止を要請できることになった。

 さらに、感染病の流行で危機警報が「注意」以上の警報が発令した場合、社会福祉施設を利用する子供、老人らの感染脆弱層にマスクを支給するなど調査人員を現行の30人から100人以上に大幅増強する。なお、国会に「国会コロナ19対策特別委員会」も設置した。

 日韓を除く、アジア諸国・地域での発症状況(2月2日→2月9日→14日→19日→20日→21→26日)は以下のとおり。※2月26日午前9時基準

 中国  17205→37198→63851人→74185→74576→75465→78190人 (死者361→813→1380→2004→2128→2236→2718人)

 シンガポール  16→33→50人→81→84→85→91人

 香港  13→29→50→60→65→69→80人(死亡者2人)

 タイ  19→32→33→35人→35→35→37人

 台湾  10→17→18→20→24→24→31人(死亡者2人)

 マレーシア  8→15→18→22→22→22→22人

 ベトナム  6→13→16→16→16→16→16人

 豪州  12→15→15→15→15→15人→15人

 マカオ  7→10→10→10→10→10人→10人

 ▲その他アジア諸国以外で二桁の感染者が発生している国

 イタリア  322人(死亡者10人)

 イラン   95人(死亡者15人)

 バーレン  23人

 米国    17人

 ドイツ   17人

 フランス  14人(死亡者1人)

 UAE   13人

 カナダ   10人