2020年6月28日(日)

 「北朝鮮に無関心」61% 「統一よりも共存」も半数以上 韓国人の最新意識調査結果

南北関係悪化の要因となった南北共同連絡事務所の爆破(労働新聞から)


 北朝鮮担当部署の韓国統一部傘下の国策研究院が朝鮮戦争勃発70周年(6月25日)を前に約1千人を対象に行った国民の意識調査「統一の意識調査」(調査期間は5月20日―6月10日)によると、韓国国民の半数以上にあたる61.1%が北朝鮮に関心がないことがわかった。「無関心」は10年前の60周年時の50.8%よりも10ポイントも増えたことになる。

 世代別でみると、「北朝鮮に関心がない」層は20代から70代以上まですべての世代で55%を超えていた。これまでは20代を中心に若い世代で無関心の比率が高かったが、今年は無関心層が中年から高齢者にまで拡散していることが判明した。

 無関心の高まりは6月初旬の北朝鮮による青瓦台批判(3日)、共同連絡事務所の閉鎖、南北軍事合意の破棄、開城工業団地の撤去示唆(4日)、対南事業の対敵事業への転換(8日)、南北ホットラインの遮断(9日)の影響によるところが大きいが、北朝鮮に対する絶望感からか、全体の54.9%が「戦争にならず平和的に共存さえできれば統一は必要ない」と回答していた。

 「統一よりも平和共存を望む」の声は朴槿恵保守政権時(2016年)の43.1%を11.8%も上回っていた。逆に「統一を望んでいる」の回答は11.0%ダウンし、26.3%と、30%を切った。30代では「共存」が55.9%、「統一」が19.3%と約3倍の差が付いていた。統一待望者だった戦前世代(朝鮮戦争前に生まれた世代)ですら「統一」(36.7%)よりも「共存」(45.6%)を志向していた。

 それでも「南北統一が国家の利益になると思うか」との設問には「利益になる」との回答者は64.8%に達し、統一すれば、利益になるという考えは多数を占めていた。

 その統一だが、形態については全回答者のうち40.2%が「連合制」を望んでおり、「単一(一つの)国家」と答えたのは3分の1を割り、28.7%に過ぎなかった。統一しても、北朝鮮と同じ屋根の下で暮したくないとの心情を表したものと受け止められている。

 統一の前提でもある北朝鮮の核開発放棄については90%近い89.5%が「放棄しないだろう」と悲観的に捉えていることもわかった。これも2016年のときよりも20%も増加していた。昨年2月のハノイでの米朝による非核化交渉の決裂が尾を引いていることと、金正恩委員長に対する信頼度が昨年4月の33.5%から半数の15.6%に急落したことが影響したようだ。

 従って、文在寅政権による北朝鮮の核開発阻止努力については「韓国にできることはない」との「無力感」が41.7%と、昨年の34.7%よりも多かった。それでも北朝鮮と対話と妥協を追求すべきとの回答は昨年の38.1%よりも7.6ポイント増え、45.7%に達した。北朝鮮との関係悪化が対話の必要性を助長させたようだ。

 また、新型コロナウイルスの防疫支援との関連では北朝鮮が求めるならば、或いは善意として「支援すべき」が70.3%もあったが、これは隣国・日本に対する支援(54.1%)よりも多かった。

 この世論調査で意外だったのは南北軍事力に関する回答で、意外にも「北朝鮮のほうが強い」の回答者が39.9%と、「韓国のほうが強い」の32.1%を7.8ポイントも上回っていた。理由は北朝鮮が核を保有していることにあるようだ。

 今回の意識調査では米韓同盟についても触れているが、米韓同盟の必要性については90.2%が必要とみているが、それでも昨年の93.2%よりも3%も減少していた。同様に駐韓米軍の必要性についても昨年の91.1%から85.0%まで下がっていた。

 その一方で、南北統一後も「米軍の駐留は必要か」との設問には逆に昨年の45.9%から58.4%に増加した。それでいながら、トランプ政権が求めている駐韓米軍の負担増額については「現状維持が望ましい」が69.6%、「もっと削減すべき」」が26.9%と、合わせて96.5%が増額に反対しており、賛成は僅か3.5%しかなかった。

 なお、日本の軍事的脅威についての設問もあり「脅威とみなしてない」は昨年の39.3%から約倍に近い62.2%と急増しており、「今後も脅威になることはない」も同じく33.3%から55.0%と、21.7%も増えていた。

  (参考資料:南北・米朝首脳会談後に著しく変化した韓国人の「対北意識」