2020年5月24日(日)

 金正恩委員長が「新たな戦略兵器」の「お披露目」にゴーサイン!?

壇上に上がった党軍事委員会幹部らを前に何かにサインする金委員長(労働新聞から)


 金正恩委員長が現れた。昨日(23日)党中央軍事委員会に出席したのだ。メーデーの5月1日に肥料工場完成の式典に出て以来22日ぶりだ。

 折しも昨日「金正恩委員長がまた3週間経っても姿を現さないことから周辺が騒がしくなっている」との記事を載せたばかりだった。前回も5月1日に「いつまで続く消息不明」との見出しを掲げ、「明日で動静不明から3週間となる。健在ならば、もうそろそろ出てきてもよさそうなものだ」と書いたところ、金委員長はその日に出てきていた。

 配信された写真で表情を見る限り、巷間言われているような健康不安は微塵も感じられない。血色も良さそうだ。手足の不自由も感じられなかった。「こんどこそは間違いなく、健康上の問題だ」と信じて疑ってなかった「北朝鮮崩壊待望論者」にとってはまたもや肩透かしを食らわされたのではないだろうか。それにしても、この時期に党軍事委員会拡大会議の開催とはただ事ではない。

 案の定、会議では金委員長が「核戦争抑止力を一層強化し、戦略兵器を高度の激動状態でも運営する」ための新たな方針を打ち出していた。どうやら昨年12月末の党中央委員会全員会議で「核兵器とICBM実験発射中断など我々が取っていた非核化措置をもはや継続する理由がなくなった」として「世界は直ぐに我々が保有する新たな戦略兵器を目撃することになるだろう」と公言したその「目撃する」日が近づきつつあるようだ。 

 金委員長は「我々は直ちに我が人民が受けた苦痛と抑制された発展の代価をきれいに全て受け取るための衝撃的な実際の行動に移る」とも言っていたが、「新たな戦略兵器」とは核兵器や核弾頭を長距離で投射する兵器を指すことは言うまでもない。

 北朝鮮の戦略兵器としては3つ予想されている。

 一つはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)である。北朝鮮はSLBMを「水中戦略弾道弾」と呼んでいるが、核ミサイルを3発搭載できる3千トン級の新型潜水艦の進水は目前である。

 単なる潜水艦ではなく、原子力潜水艦の可能性もゼロではない。というのも、原子力潜水艦は動力に原子炉を使用する潜水艦である。高温高圧の水蒸気を発生させる熱源として原子炉が利用される。北朝鮮は実験用だが、すでに自前の軽水炉を建設済だ。仮に小型加圧軽水炉もつくれるなら、原子力潜水艦も決して不可能な話ではない。

 多弾頭ミサイルの発射実験も想定されている。多弾頭ミサイルとは幾つかの核弾頭を同時に落下させるミサイルのことだ。中にはダミー(模擬)弾も含まれているので迎撃は容易ではない。ちなみにICBM級の「火星15」もSLBM用の「北極星3」も弾頭部分の搭載重量が大きくなり、搭載空間が大きくなっている。

 さらに、人工衛星と称する長距離弾道ミサイル「テポドン」の発射も可能である。金委員長は2017年の新年辞で「これ(2016年2月の打ち上げ成功)により宇宙征服に向かう道が敷かれた」と演説していた。

 北朝鮮は2012年から16年までの第一次宇宙開発5か年計画期間中に3度発射しているが、いずれも失敗に終わっている。北朝鮮は2017年からスタートした第二次計画期間中にまだ一度も「人工衛星」を発射していない。

 黄海に面した「西海衛星発射場」と称している東倉里発射場には高さ65メートルの発射台があるし、すでに100kg以上の地球観測衛星1基と静止軌道に投入する通信衛星1基の開発も完了している。打ち上げに成功すれば、軍事衛星にも転用できる、

 昨日の記事では「北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル用の新型潜水艦を建造しており、進水式は時間の問題とみられているが、この日に向けて何か動きがあるかもしれない」と予想したが、現時点ではやはりSLBMのお披露目の可能性が大である。

 軍事委員会拡大会議で金委員長は檀上に上がった李炳哲党軍事委副委員長や朴正天軍総参謀長ら5人の軍事委員会幹部らを前に用紙らしきものにサインをしていた。「新たな戦略兵器」へのゴーサインではないだろうか?

 ちなみに2016年1月6日の4回目の核実験への金委員長のゴーサイン(署名)は約3週間前の前年(2015年)12月15日に出されていた。ということは、お披露目の「Xデー」は米朝首脳会談2周年目の6月12日あたりだろうか?