2020年5月29日(金)

 北朝鮮で全国禁煙キャンペーン! ヘビースモーカーの金委員長は?

5月1日の肥料工場視察の際に喫煙する金正恩委員長(朝鮮中央テレビから)


 北朝鮮の対外紙「PYONGYANG TIMES」(5月29日付)によると、北朝鮮は現在、全国禁煙キャンペーン中にあるようだ。

 同紙によると、禁煙キャンペーンを担当する禁煙センターがあり、公共施設、企業所、工場などに担当者が出向き、至る所に禁煙ステッカーを貼っているとのことだ。また、同紙によると、北朝鮮は昨年、タバコ統制法を改定し、外国産のタバコ輸入を制限し、電子タバコも煙の出ないタバコも禁止しているらしい。

 北朝鮮は確か4年前の2016年にもちょうど今頃の時期に全国的な禁煙キャンペーンを展開したことがあった。

 「労働新聞」(5月15日付)に喫煙が原因による肺癌発生に関する記事が掲載され、それによって平壌を中心に全国各地に禁煙研究所が設立され、禁煙を本格的に奨励していたことがわかった。

 また、2日後には国営通信の朝鮮中央通信(5月17日付)が「喫煙研究所が喫煙者の相談窓口となっており、喫煙者に対しては世界保健機構(WHO)が認定した禁煙栄養錠剤や喫煙によって発生する疾病を治す医薬品などを補給している」と伝えていた。

 当然のことだが、北朝鮮の政策、方針、指針は最高指導者の許可なく決定、進めることはできない。従って、金正恩委員長の許可なく、この種のキャンペーンを勝手に展開することはできない。極端な話、愛煙家の金委員長自らが率先して禁煙しなければ、実現不可能なキャンペーンとも言えよう。

 周知のように金委員長は名だたるヘビースモーカーである。とにかくTPOに関係なく喫煙している。

 何よりも驚いたのは、前年の2015年2月に元山を視察した時、幼児らが集まっている愛育院で喫煙していたことだ、さらに7か月後の9月3日のモランボン楽団の公演でも一人タバコを吸っていた。妊婦の李雪主夫人が隣に座っていても、また元老や長老らの前であろうがおかまいなしに吸っていた。

 ところが、2016年の禁煙キャンペーンに際しては金委員長が「革命をやろうとするならば、体も健康でなければならない」と訓示していたことがわかった。4月24日付の労働新聞の「煙草が人体に与える影響」の見出しの記事の中にその発言があった。

 ということは、この年は金委員長自らがキャンペーンに同調し、タバコを断つ決断をしたのだろう。でなければ、禁煙キャンペーン中に朝鮮中央テレビが「朝から煙草を吸う人は健全ではない。周りの環境にも不快感を与えるので非常識だ」と喫煙家を非難する女性のインタビューを流すことはできなかったはずだ。

 しかし、この時は金委員長の禁煙は長くは続かなかった。6月4日に万景台少年団野営所を訪れた際にタバコを手にしていたのだ。ちなみにその5日前の5月30日に行われた中朝バスケットボール親善試合の観戦ではテーブルに灰皿が置かれていなかったことから5月一杯までは我慢していたようだ。3月15日以来、実に約80日ぶりの喫煙写真の公開であった。それもよりによって子供らが集う少年団野営所での喫煙であった。

 米国に亡命している母方の叔母(金容淑)は「ワシントンポスト」とのインタビューで金委員長について「気が短くて忍耐力がない」と語っていたが、禁煙の失敗ではからずも忍耐力のなさが裏付けられてしまった。

 金正日総書記の料理人で知られる藤本健二氏の話では、金委員長は10代半ばから親に隠れて喫煙していたそうだ。従って、喫煙歴は足掛け19年となる。お気に入りは外国のイブ・サンローランらしいが、外国産のタバコの輸入制限で困るのは金委員長ということになる。

 北朝鮮にあっては金委員長だけは別格である。「新型コロナウイルス」対策の一環として国民にマスクの着用を義務付けているが、金委員長だけは唯一例外となっているのか、マスク着用の姿が一度も公開されたことがない。

 今回の禁煙キャンペーンも金委員長だけが例外なのか、それとも再度、禁煙にトライしているのか、再挑戦ならば今度こそ断つことができるのだろうか?

 金委員長の喫煙については「太り過ぎないため」の説と、激務による「ストレス軽減のため」の説が交錯しているが、どちらにせよ、次に金委員長が公式の場に現れた際に公開される写真や映像によって金委員長が禁煙しているのかどうかわかるだろう。