2020年5月5日(火)

 「人口10万人あたりの死亡者数は日本は少ない」は本当!?

 西村康稔経済再生相が昨日、「日本は人口10万人あたりの(新型コロナウイルス感染者の」死亡者の数は世界に比べて少ない)と発言していた。日本の感染対応が他の国に比べれば「うまくいっている」とでも言いたいのか、何の慰めにもならない。

 西村大臣はおそらく6万8587人の死亡者を出している米国を筆頭に数万人の死亡者を出してしまったスペイン、イタリア、英国、フランス、ドイツなど欧州諸国を含め1千人以上の死者が確認されているイランやトルコなど20数か国と比較して日本なりの「成果」を誇りたかったのかもしれないが、比較対象がそもそも間違っている。

 西村大臣の発言は、成績の悪い学生が自分よりも成績の悪い友達と比較して「俺はあいつよりはましだ」と言っているようなものだ。そうではないだろう。

 他国と比較するならば、自分よりも成績の良い友達を引き合いに出して、反省し、頑張らなければいつまで経っても成績は上がらない。そもそも、1000人あたりのPCR検査数では米国は16.3、ドイツは30.4という具合に欧米諸国は1.9の日本とは比較にならないぐらい多く行っているので感染者、死亡者が多いのはある意味では避けられない。

 日本は人口10万人あたりの死亡者の数が決して少ないとは言えない。そのことは累積で1万人以上の感染者を確認している同じアジアの国々と比較するとわかる。

 日本は人口1億2596万人に対して死亡者は549人だが、日本よりも2倍も人口の多いインドネシア(2億6189万人)の死亡者は845人である。また、2億人以上の人口を抱えるパキスタン(2億777万人)の死亡者は日本よりも92人少ない457人である。さらにインドは約13億5261万人と日本よりも約10倍も多いが、死亡者1391人で、日本の2.5倍程度だ。ちなみに約1万8205人と日本よりも数千人も多く感染者が出ているシンガポールは18人で、日本の30分の1程度だ。

 感染者が1万人以上出てないので比較対象とはならないが、この他にすでに終息した台湾は6人、ベトナム、カンボジア、マカオ、モンゴルに至っては死亡者はゼロである。

 そして、日本よりも一足早く終息に入りつつある韓国の死亡者は252人と日本の半分以下だ。実際には韓国の人口は約5100万人と日本の半分以下なので10万人あたりの死亡者数はほぼ同じだ。しかし、一日1人ないし2人しか死亡者が確認されてない韓国に比べて日本ではこの2週間、日々二桁の死亡者を出しているので10万人あたりの死亡者数が韓国を上回るのは時間の問題である。

 何よりも軽視できないのは、両国の首都、東京都とソウル市の感染者数と死亡者数のギャップである。

 東京の感染者数は4654人なのに対してソウルは637人。東京はソウルよりも実に7倍も多い。PCR検査数ではソウルが10倍も多い状況下でのこの格差である。まして、死亡者数に至っては東京の150人に対してソウルは僅か2人。東京はソウルの75倍である。人口数で東京がソウルよりも420万人に多いことを加味してもソウルに比べて東京の10万人あたりの死亡者数が比較にならないほど高いことがわかる。

 ちなみに東京の初の感染者は1月24日で、ソウルは1日早い1月23日。また、感染者数も2月24日の時点ではソウルの31人に対して東京は32人とほぼ同じだった。それが、今ではこの差である。PCR検査や軽症者の隔離施設、病床の確保等を含め初動の対応を誤り、もたもたしてしまったことが原因だ。

  (参考資料:マスク対策でも1世帯に2枚の日本 1人に週3枚の韓国

 「よ〜いドン!」でどの国もほぼ一緒にスタートしたのに台湾、ベトナムがすでにゴールインし、隣国・韓国もゴール目前なのに日本だけがゴールが見えないというのは本当に困ったものだ。

  (参考資料:日本も東京も、韓国、ソウルのように感染者が減らないだろうか )