2020年11月16日(月)

 日韓共に「RCEP」に加わっても輸出厳格化と水産物輸入禁止措置は解除せず!

 昨日、日本も署名した「地域的な包括的経済連携(RCEP)」にはアジア太平洋地域の日本、韓国、中国、豪州、ニュージランドの5か国とASEAN諸国10か国、合わせて15か国が加わっている。

 RCEPは人口規模、貿易規模、名目国内総生産でも全世界の3分の1を占める世界最大のFTA(自由貿易協定)となった。その規模は北米自由貿易協定(USMCA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)よりも大きい。梶山弘志経産相が「RCEPにより、日本の工業製品や農水産品のアジア圏への輸出拡大に大きく寄与するだろう」と期待を表明するのは至極当然だ。

 今回日韓共にRCEPに加わったことで事実上、日韓の間にも間接的ながらFTAが結ばれたことになる。

 日韓はFTAを結んでいなかった。関税及び非関税障壁を撤廃し、農業など特定分野を排除せずにすべての分野で自由化を推進することを目標に小泉―盧武鉉政権下の2003年12月にスタートした日韓FTA交渉は農林水産品関税撤廃の条件をめぐり対立し、ほぼ頓挫した状態にある。

 原因は日本の農林水産品関税撤廃率が不十分であると韓国が渋ったことにあるが、何よりも▲関税が撤廃されれば貿易赤字がさらに悪化する▲日本企業に市場を奪われるなどの懸念を韓国が払拭できなかったことにある。実際に韓国は現在、日本の自動車や機械などに8%の関税をかけているが、撤廃されれば日本の高品質の完成車や部品が韓国に安く流れ込んでくるのは目に見えている。

 しかし、今回日韓共にRCEPに加わったことでFTAが自動的に日韓でも結ばれたことになる。RCEPの締結による関税撤廃水準は品目数では両国とも同じ83%。但し、輸入額からすると、韓国は76%、日本は78%と、日本のほうが2%多く市場を開放することとなった。

 韓国産業資源部は日本車や機械など重要品目については即時開放対象から除外したこと、開放対象品目に対する関税撤廃も10〜20年かけて段階的に行うことで国内産業を保護できると国民に説明しているが、今後日本との間で問題となるのは水産物の開放だ。

 RCEPの締結により日韓は水産分野を相互開放することとなった。韓国は冷凍ニシンやサバ、冷凍タラフィレットなど302種類の水産物に対して段階的に関税を下げ、15年を目途に全てを撤廃する。日本は養殖用ウナギなど韓国産水産物に対して同様の措置を取ることになっている。

 それ自体は何の問題もないのだが、日本にとって不満なのは韓国政府が今なお福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森など8県で水揚げされ、加工された28魚種の水産物の輸入禁止を解除しないことだ。

 韓国は福島原発事故でナイーブになり輸入禁止措置を取ったが、おかしなことに海に面してもいないし、当然漁港もない、これまで韓国に一度たりとも水産物を輸出したこともない内陸の群馬や栃木までも輸入禁止リストに載せていた。群馬も栃木も福島と隣接しているとの理由だけでおそらく載せたのだろう。

  (韓国に水産物を輸出したことのない県までも「輸入禁止指定」とは!

 日本は韓国が2013年9月から8県の水産物の輸入禁止を継続しているのは「不当である」として2015年にWTO(世界貿易機構)に提訴し、2018年2月の1審(紛争解決機構のパネル)では訴えが認められていた。しかし、昨年4月の2審(WTO上訴委員会)で逆転敗訴となり、今なお8県は韓国への水産物の輸出が叶わない。

 対抗措置ではないが、日本も民間レベルで下関港の船社がこの春に「コロナ19」を理由に、冷凍車を利用した韓国からの水産物の輸入を封鎖するなどの措置を取ったことがあった。

 韓国産業資源部はRCEPに関係なく、8県からの水産物輸入禁止措置は引き続き維持する立場のようだが、RCEP締結を機に日本の対韓輸出厳格化措置と韓国の水産物輸入禁止措置をこの際、同時に解除したらどうだろうか。

  (参考資料:日本の「対韓輸出規制」は安全保障上の理由?政治報復?どっちが本当?)