2020年10月13日(火)

 撤去期限が迫る「ベルリンの慰安婦像」 韓国人団体は法的措置で「徹底抗戦」へ

ベルリン市に設置された「慰安婦像」(在独「コリア協議会」から)


 ドイツの首都・ベルリン市のど真ん中に設置されている「平和の少女像」と称される旧日本軍従軍慰安婦像は今月14日までに撤去されることになっている。

 ドイツでは3体目となる「慰安婦像」はドイツ在住の韓国人団体「コリア協議会」によってブランデンブルク門やベルリン中央駅などがあるミッテ区の公共の場に先月25日に設置されたが、ミッテ区のフォンダッセル区長が許可から一転不許可とし、今月8日に「14日までに撤去せよ」との行政命令を出していた。行政命令は強制力を伴うもので、区長は「自主的に撤去しない場合は、市当局が強制的に撤去し、その費用を協議会に請求する」としている。

 しかし、「コリア協議会」が市の都市空間及び建築芸術審査委員会の審査を得て「1年の期限付き設置を認められていた」として区に異議申し立てをする一方、ベルリン行政裁判所に撤去命令執行停止仮処分を申請するとしているので14日までの強制撤去に待ったがかかるかもしれない。但し、一両日中に申請し、受理されなければ、時間切れとなり、自動的に撤去される公算が高い。仮に受理され、訴訟となれば、裁判所の最終判断まで数週間から数か月はかかる。

 区長の判断で急転直下、不許可、撤去となったことから像の設置に協力してきたドイツの女性、市民団体では区庁前で撤回を求める集会を計画しており、ベルリン市民社会にも少なからぬ波紋が広がっている。そうした中、シュレーダー元首相夫妻までが区長宛てに「撤去は理解しがたい」として撤回を求める手紙を出していたこともわかった。

 シュレーダー元首相の手紙には「ドイツはナチの歴史を清算し、全世界から尊敬を受けている。ドイツ官邸が日本の戦争犯罪を隠蔽することに加担してはならない」と記され、文面の最後には「ドイツ外務省の支持を受けたとみられる圧力に屈服しないことを願う」と書かれてあるとのことだ。現地ではハイコ・マース・ドイツ外相が10月1日に行われた日独テレビ会談で茂木外相から撤去への協力を求められたことからドイツ外務省が区長に撤去を働きかけたものと伝えられている。

  (参考資料:ベルリンの「慰安婦像」が撤去へ! 日本のロビー外交の成果か!

 日本政府は▲韓国政府は海外での像の設置を支援しない▲性奴隷という表現も使わない▲韓国の支援団体を説得し、駐日本大使館前にある少女像の問題の解決に努力することなどが謳われた2015年11月の「日韓慰安婦合意」を盾にドイツ政府に協力を求めたものとみられる。

 ミッテ区長は設置申請の際に像に刻まれている碑文については事前通知していなかったことを問題視しているが、碑文には「第2次世界大戦当時、日本軍はアジア・太平洋全域で女性を性奴隷として強制的に連行した」と書かれてある。

 区長は像と碑文が「日韓の政治的対立を誘発している」ことや「日本各地やベルリンで、いら立ちを引き起こした」こと等から「一方的な公共場所の道具化を拒否する」として、早期撤去を決断したようだが、「コリア協議会」が市委員会から認可を得た際に「公共の利益に反する場合、いつでも撤去できる」との但し書きが付記されている。区長はこれを理由に撤去を要請しているが、訴訟ではこの点が最大の争点になるようだ。

 撤去か、設置か、ドイツを巻き込んだ日韓の「場外戦」は欧州での同様の動きを左右するだけに目が離せない。

  (参考資料:欧州の中心国・ドイツを抱き込め! 日韓の対立は外交戦へ!