2021年4月16日(金)

 6人だけの珍しい金正恩「宮殿参拝」 夫人と実妹同伴の参拝も異例!

祖父の生誕日に錦繍山宮殿を参拝した金総書記夫妻と妹の金与正副部長(労働新聞から)


 金正恩総書記が祖父・金日成主席の生誕日である昨日(15日)、遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝した。

 昨年はどういう訳か、祖父の生誕日の参拝を欠かしたが、今年は慣習に従って参拝したようだ。しかし、過去の参拝に比べると、今回の参拝は極めて異例である。

 第一に、同行者の人数が少なかったことだ。

 映像を見ると、参拝には李雪主夫人と実妹の金与正党副部長、趙甬元政治局常務委員と朴正天軍総参謀長、それに玄松月党副部長の5人だけが同行していたが、配信された写真には玄松月副部長は左端にいたせいか写っていなかった。

 「新型コロナウイルス」の感染を恐れて、同行者を制限したと言うことはではない。と言うのも、2月16日の父・金正日総書記の生誕日の参拝の時は100人以上も随行者がいたからだ。今回は明らかに「内輪の参拝」と言える。

2月16日の故・金正日総書記生誕日の参拝(労働新聞から)

 それと、興味深いのはファミリーである李雪主夫人と実妹の金与正党副部長を連れ添っていたことだ。特に夫人を参拝に同行させたことは極めて珍しい。これまで夫人が宮殿を参拝したのは7回しかないからだ。年度別でみると;

 2013年 新年元旦(1月1日)、義父(金正日総書記)の生誕日(2月16日)、義父の命日(12月17日)

 2014年 新年元旦(1月1日)、義父の3周忌(12月17日)

 2016年 義父の生誕日(2月16日)

 2017年 新年元旦(1月1日)

 李夫人はこれまで金日成主席の生誕日だけでなく、命日(7月8日)にも参拝したことはなかった。建国記念日(9月9日)及び労働党創建日(10月10日)でも同伴参拝は一度もなかった。義父の生誕日と命日の参拝も稀で、実際に2017年以降は一度もなかった。

(参考資料:金正恩総書記に後継ぎとなる子供は何人?)

 妹の金与正氏は他の党幹部らと共に金総書記に同行して宮殿参拝したことはしばしばあるが、北朝鮮のメディアが実名を挙げて報道したのは2019年の父の生誕日の参拝と今回を含めてたった2度しかない。確か、2年前の参拝には夫人は同伴しておらず、与正副部長は党組織指導部を担当していた崔龍海政治局常務委員と李万建政治局員、宣伝先導部の李英植副部長らと共に兄に付き添っていた。しかし、奇妙なことにこの時は参拝写真は配信されなかった。

 さらに異例なのは今回、幹部の同行者は党序列3位の趙甬元政治局常務委員と7位の朴正天軍総参謀長の二人だけだったことだ。

 党の最高幹部である政治局常務委員には他にNo.2の崔龍海最高人民会議常任委員長とNo.4の李炳哲党軍需工業部部長、それに金徳訓内閣総理がいる。この3人は今回外されていた。これまでの慣例に従えば、全員行動を共にしていたはずだが、今回に限っては5人を除く幹部らは別途に宮殿を参拝していた。

 重篤説が飛び交った昨年4月は「金正恩参拝報道」はなく、党と政府及び軍の幹部らだけが参拝していたが、一昨年(2019年)の祖父生誕日参拝では3人の政治局常務委員を含め政治局員、さらには崔善姫外務第一次官ら国務委員までが随行していた。それ以前の2017年、2018年も同様で、2017年の時は党幹部らの他に軍幹部らも含まれていた。今回に限って、同行者を5人に絞ったのはどう考えても解せない。

2019年4月15日の宮殿参拝(金総書記の左がNo.2の崔龍海氏)(労働新聞から)

 但し、この日平壌の劇場で行われた記念公演では崔龍海、李炳哲、金徳訓ら政治局常務委員を含め全員が揃って金正恩総書記と共に鑑賞していた。

 なお、韓国で失脚説が流れているNo.6の朴泰成政治局員(前最高人民会議議長)と前政治局員の崔輝党部長が参拝していたかどうかは確認できていない。

(参考資料:経済不振に「喝,喝、また喝!」の「金正恩語録」)