2021年6月1日(火)

 「竹島表記」で「東京五輪ボイコット」機運高まる韓国 与党以上に強硬な保守野党

東京五輪の地図から竹島削除を求めた丁世均前総理のホームページ(同氏のHPから)


 東京五輪の公式ホームページの地図に「竹島」が記載されていることへの反発から韓国では五輪ボイコットを呼びかける動きが日々拡散しているが、青瓦台(大統領府)のホームページにある国民請願プラットフォームには政府にボイコットを求める請願まで載った。

 「東京五輪組織委員会が独島(竹島の韓国表記)日本領土の表記を強行した場合、五輪不参加を宣言すべき」と題する請願は請願理由について「日本のこうした行為は五輪を利用し、独島に対する野望を国際的さらけ出した宣戦布告に等しい」と決めつけている。

 韓国五輪委員会や大韓体育会では参加の準備を粛々と進めているが、請願は「5年近く汗を流し、準備をしてきた国家代表選手らの苦労は残念だが、それ相応の補償をしてあげて、東京五輪組織委員会とIOCが独島を削除しない場合はボイコットすべきである」と主張している。

 請願は5月26日から始まり、6月1日12時現在、49、216人に達している。青瓦台への嘆願は6月26日までの1か月の間に20万人に達すれば、文政権は回答しなければならない。

 東京五輪ボイコットに関する世論調査はまだ実施されてないが、日本の原発処理水海洋放出計画が2年前に表面化した時の世論調査会社「リアルメーター」の調査(2019年8月2日)では国民の68.9%が「選手の安全が確保できなければ、東京五輪をボイコットすべき」と答え、「五輪ボイコットは過剰な対応である」の21.6%を圧倒していた。当時は10人中約7人が東京五輪不参加を支持していた。

 来年3月に予定されている大統領選挙への出馬を表明している丁世均(チョン・セギュン)前首相、李洛淵(イ・ナギョン)前首相らを筆頭に与党「共に民主党」は日本政府とIOCに表記の削除を求め、これが受け入れられない場合は、五輪不参加もやむを得なしとの立場を表明しているが、国政では与党と激しく対峙している野党第1党の「国民の力」もこの問題では与党に劣らず日本政府に抗議の声を挙げている。

(参考資料:進歩・保守問わず韓国の3人の元総理までが「竹島問題」で「東京五輪ボイコット」の声を上げた!)

 朴槿恵前政権下で総理(2015年6月―2017年5月)を務め、昨年4月まで保守系最大野党「未来統合党」(現「国民の力」の前身)の代表だった黄教安(ファン・ギョアン)が5月26日に自身のSNSに「竹島表記」を韓国に対する「黙過できない挑発である」と真っ先に口火を切り、文在寅政権に対して「日本の独島挑発に強く対処し、日本の誤った行動を国際的に世論化するべきだ」と迫っていた。

 政権奪還を狙う最大保守野党の「国民の力」は「党」のスポークスマンである「俊英(ペ・ジュンヨン)議員が「(韓国の削除要求を拒否した)日本政府の対応は容認できない。自国の教科書歪曲に飽き足らず、五輪でも独島の野望をさらけ出したのはオリンピック精神を棄損するだけでなく、韓日関係を損なうだけである」と日本を批判し、「明確な歴史認識と歴史的な過去に対する痛切な反省は優先させてこそ両国の発展的で建設的な未来関係を論じることができる」と日本政府に歴史を正しく直視するよう促していた。

 返す刀で、「スポークスマンは文政権に対しても「日本の立場への強力な抗議は言うに及ばず、独島領有権を含む日本の歴史歪曲に対しては断固として対処することを促す」と、この問題では一切譲歩せず、断固たる姿勢で臨むよう迫っていた。

 昨日(31日)は、ソウル選出の朴成重(パク・ソンジュン)議員が与党の李在汀(イ・ジェジョン)議員とともにこの問題を取り上げたニュース専門局「YTN」のラジオ番組に出演し、以下のようにもっぱら日本への文政権の軟弱な対応を批判していた。 

 「IOCや日本が韓国の抗議を受け入れないのは問題だ。政府の(外交)力量の失敗だ。今は、与党の大統領候補が必要性から前面に出ているが、外交部だけでなく大統領も強力に対処しなければならない。私は3年間、日本で勉強したので日本をよく知っているが、日本は強国には卑屈なほど低姿勢で.弱小国に対しては高姿勢を取る。そうした次元から東京五輪ボイコットもありだ。強く出るのが解決の道であると思う」

 「このままでは我々が認めてしまうことになる。外交上、非常に重要な問題であるので力を合わせて、どのような形にせよ、我々が勝つ方向にもっていかなければならない」

(参考資料:「金大中」の再来か アッと驚く韓国の「政変」国会議員でない36歳の若者が最大保守野党の党首に!?)

 与野党内からの突き上げに鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は「独島に対する(日本の)間違った行動を容認しない」とし、「可能な限り最大限に強力な対応を取る」との方針を示していたが、文大統領自らが3月1日の独立運動記念日での演説で東京五輪への支持を表明し、先月も訪日した朴智元(パク・チウォン)国家情報院長を通じて菅総理や二階幹事長に五輪への協力を約束していただけに大統領府は対応に苦慮している。

(参考資料:「原発処理水放出」容認発言で与野党議員から吊るしあげられた韓国の外相)