2021年5月10日(月)

 ラストチャンスの文大統領演説! 北朝鮮は応えるか!?

文在寅大統領と金正恩委員長 (労働新聞から)


 文在寅大統領は就任から4周年を迎えた今日、青瓦台(大統領府)で特別演説を行い、朝鮮半島における「対立と葛藤の時代に終焉を告げ、平和と繁栄の時代を切り開くことは8千万人に及ぶ我が民族の念願である」と述べ、残りの任期1年を「未完の平和から不可逆的な平和へと向かう最後の機会」と捉えて北朝鮮問題を解決するため全力を挙げることを強調していた。

 具体的には残る任期の間は「時間に追われることも、焦ることもなく進む」とし、「再び平和の時計の針を戻し、朝鮮半島の平和プロセスを進展させていける機会が訪れたならばその時は、全力を尽くしていく」との決意を述べた。当面は5月下旬に予定されている米韓首脳会談を機に「対北朝鮮政策をより緊密に調整し、南北間、米朝間の対話を再開させ、再び平和協力の歩みを進めるための道筋を模索する」考えを明らかにした。

 また、演説では北朝鮮に対しても「我々の呼びかけに呼応し、共に平和を築き、共に繁栄に向かって前進できることを願う」と呼び掛ける一方で、北朝鮮が南北対話破綻の原因としている脱北団体の対北ビラ宣布については「南北関係に水を差す行為は、決して望ましくない」と批判し、「政府として厳正な法執行を行わざるを得ない」と強調し、脱北団体への処罰を求めた北朝鮮の要求に応えた。

(参考資料:金正恩総書記を標的に上空から散布される脱北団体の「ビラ爆弾」 妹の与正氏が前面に出て反撃!)

 文大統領が金正恩総書記の実妹の金与正党副部長から「生まれつきの馬鹿ではないか」と酷評されても、また韓国を標的にした短距離弾道ミサイルを発射されてもまるで腫れ物にでも触るかのようにひたすら北朝鮮を刺激しないように腐心し、我慢してきたのも南北関係改善を政権のレガシーにしたいからである。

 文大統領は演説後、記者から質問を受け付けたが、北朝鮮の核問題、南北関係については「ファイナンシャルニュース」の記者が以下のような質問を行った。

 「南北関係に好転の兆しが見られない。今後残り1年で実現可能な目標をどう設定されているのか?また、米国が検討を終えた対北政策に北朝鮮が反対の立場を表明し、反発しているが、10日後に迫った米韓首脳会談でどのような仲裁カードを提示するつもりなのか、お聞きしたい」

 この質問に対して文大統領は次にように答弁していた。

 「3度の南北首脳会談、2度にわたる米朝首脳会談が継続せず、対話は膠着状態にある。膠着が長引くのは望ましくない。これまでは米国に新しい政権が発足し、また新政権がどのような対北政策を樹立するのかずっと待っている過程だった。この点については米国が戦略的忍耐政策に回帰しないだろうか、あるいは北朝鮮を外交優先順位に置かないため時間がかかっているではとの憂慮があったのは事実である。しかし、米国も同様に対話の断絶が長引くのは望ましくないとの考えに立ち初期の頃から我が政府と緊密に調律、協議しながら短期間の間に対北政策を定立した」

 「米国の対北政策の全貌が全て明らかにされていないが、我が政府が望んでいる方向とほとんど符号していると言える。一旦、朝鮮半島の完全な非核化を目標にし、またシンガポール宣言を土台に出発し、外交的な方法で漸進的に、段階的に、実用的にそして柔軟に接近していくとのことだ。北朝鮮から色々な反応があったが、北朝鮮の反応は対話拒否とは思っていない。多分、北朝鮮も今、最終判断する時間を持つことになるだろう。もう一度、向き合って協議できる機会が与えられただけに北朝鮮が呼応するようことを期待している。そして、そのような状況が醸成されれば、我が政府は総力を挙げていく計画であることを申し上げておく。今回の訪米でまた、米韓首脳会談を通じて北朝鮮が対話の道に早く出て来れるような色々な方策について協議しようと思っている」

(参考資料:オバマ元大統領が「家康」でトランプ前大統領が「信長」ならばバイデン大統領は「秀吉」か!)

 文大統領の演説に北朝鮮がどのような反応を示すかが、今後の焦点となるが、金総書記は1月の労働党大会での演説で「南朝鮮(韓国)当局の態度によってはいくらでも近いうちに再び3年前の春日のようなすべての同胞が念願するような平和と繁栄の新たな出発点に戻ることができる」と述べていた。

 金総書記のスポークスマンである妹の金与正副部長が即、談話を出すのか、それとも21日の米韓首脳会談の結果まで待つのか、興味津々だ。

(参考資料:罵倒されても、ミサイルを発射されようが、「我慢の子」の文在寅大統領が「キレる日」)