2021年11月2日(火)

 総選挙の投票率は韓国よりも10%も低かった! 本当に日本人は政治意識が低いのだろうか?

 総選挙が終わった。大方の予想とは異なり、大勢に変化はなかった。状況も変わらなかった。

 換言すれば、選挙をやってもやらなくても同じだった。連立与党の自民党と公明党が465議席中、絶対安定多数(261議席)を大きく上回る290議席を確保し、一方、政権交代を訴え、共闘した立憲民主党と共産党は議席を減らし、惨敗に終わった。

 投票率は前回(2017年)の53・6%を約2ポイント上回り55.9%だった。投票率がどの程度選挙結果を左右したのかは不明だが、どちらにせよ戦後3番目の低さだったようだ。

 今回は、選挙管理委員会もメディアも若い人に投票を促していたこともあって投票率が結構上がるのではと囁かれていたが、蓋を開けてみると、大したことはなかった。

 日本の投票率がいかに低いかは隣国・韓国の昨年4月の国会議員選挙の投票率、66.5%と比べると一目瞭然だ。実に約10ポイントも低い。

 ちなみに前回の日本の総選挙と昨年の韓国の国会議員選挙の世代別投票率を比較すると、20代は日本33.8%に対して韓国58.8%と、韓国とは約25ポイントの開きがあった。また、30代でも(44.7%対57.0%)約12ポイント、40代でも(53.5%対63.5%)約10ポイントも韓国よりも投票率が下回っていた。但し、50代は(63.3%対71.2%)と60代(72.04%対78.5%)ではその差は一桁だった。

 ちなみに韓国の投票率は男性(66.3%)よりも女性(66.7%)の方が多かった。年代別では10代から50代までは女性の方が多く、60代以上では男性が女性を上回っていた。

 直近のケースだけを比較すると、韓国は日本に比べて選挙への関心が高いように思われがちだが、これを持って総じて日本人の選挙への関心、政治意識が韓国に比べて低いと断じるのは早計である。というのも、これまでは日本の投票率が韓国よりも高かったケースが結構あるからだ。

 例えば、2000年代に入って、日本は今回を含め計8回、韓国は6回総選挙を実施しているが、2000年にあった選挙では韓国の57.2%に対して日本は62.4%、2012年の選挙でも韓国の54.2%に対して日本は59.3%と、日本が平均して韓国をそれぞれ約5ポイントも上回っていた。

 韓国は李明博政権下の2008年に行われた選挙では全有権者の50%を割り、46.1%しかなかったが、日本は50%を割ったことは一度もない。また、この期間、韓国の投票率は盧武鉉政権下の2004年の60.6%が最高だが、日本は政権交代が行われた2009年の総選挙では69.2%を記録していた。

 韓国で国会議員選挙への関心が思ったほど高くないのは、総選挙で選ばれた国会議員から総理を選出する内閣制の日本とは異なり、米国同様に大統領制であるからだ。国民が自ら大統領を選ぶことができるため大統領選挙への関心が高く、投票率も必然的に国会議員選挙よりも高い。

 直近5回の大統領選挙の投票率をみると、1997年(金大中大統領当選)80.6%、2002年(盧武鉉大統領当選)70.8%、2007年(李明博大統領当選)63.0%、2012年(朴槿恵大統領当選)75.8%、2017年(文在寅大統領当選)77.2%となっている。唯一2007年の63.0%を除くと、すべて70%以上もあった。

 来年5月の大統領選挙は早くもフィーバーしていることから1997年の投票率を上回る公算が大だ。