2021年10月8日(金)

 北朝鮮の5歳未満児18%が栄養失調で発育不良 国連北朝鮮人権特別官が制裁緩和を国連総会に要求へ

北朝鮮の農作(「今日の朝鮮」から)


 北朝鮮の経済困窮や食糧不足が囁かれているが、北朝鮮はどこ吹く風でミサイル発射など強気一辺倒である。

 金正恩総書記は口を開けば、相も変わらず「他国に頼らず、自力で乗り切れ」と、発破をかけているが、そうした中、北朝鮮の人権抑圧を非難しているトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別官が22日に国連総会に報告書を提出し、新型コロナウイルス防疫による封鎖措置で生活苦を強いられている北朝鮮の弱者を救済するため国連安保理に制裁を緩和するよう提言するようだ。

 外電によると、報告書には中国との国境封鎖により国境地帯で商業活動に従事している住民の生活に支障を来し、国民が医薬品や食料品の価格高騰などで人道的危機に瀕しているとして「国連安全保障理事会が賦課した制裁は人道主義的支援と一般市民の適切な生活水準に対する権利保障のために再検討、緩和されるべきである」と記されている。

 国連児童基金(ユニセフ)は数日前に2021年版の「世界子供白書」を公表したが、それによると、北朝鮮の5歳未満児(174万6千人)の約18%(31万7800人)が栄養不足で発育が遅れている。

 但し、5歳未満児の死亡率(2019年)は1000人あたり17人と、減少傾向にある。北朝鮮では未曽有の飢餓に瀕した1990年代後半から大量の餓死者が発生し、5歳未満児の死亡率も2000年には1000人あたり60人に跳ね上がった。金正恩政権となった2012年から経済成長がプラスに転じ、当局が乳幼児への栄養補給に力を入れたこともあって死亡率は19年間で大幅減少したことになる。

 幼児の死亡率減少は予防接種率が上がったことにも起因している。ユニセフによると、2020年基準で北朝鮮の児童の予防接種率は非常に高い。結核予防接種BCGと脊髄膜炎菌予防接種率はそれぞれ99%、ジフテリアと破傷風菌、百日咳DPT3予防注射接種率はそれぞれ98%に達していた。

 しかし、北朝鮮の食糧不足は深刻で、世界保健機関(WHO)が今年5月に発表した「2021年世界保健統計」によると、全人口(約2578万人)のうち、栄養不足人口は1090万人で、総人口の42.4%を占めていた。

 食糧不足については金総書記も6月の労働党政治局全員会議で「非常に緊張(逼迫)している」と認めており、今年7月に初めて国連高位級政治フォーラムに提出した報告書で北朝鮮当局は「穀物700万トン生産に支障を来している」と実情を吐露していた。

 国連農業機構(FAO)の報告書によると、北朝鮮の20〜21営農年度(20年11月〜21年10月)の食糧不足分は85万8千トンに達していた。FAOは北朝鮮が「今年8月から10月にかけて厳しい時期を経験する可能性がある」と警鐘を鳴らしていた。

 北朝鮮との対話の窓口となっている韓国統一部は昨日(7日)北朝鮮の幼児、妊産婦などの社会的弱者を支援するため国内の民間団体による保健、医療、栄養物資の北朝鮮への搬出申請3件を承認したが、韓国政府はこのような物資搬出の承認とは別に、対北朝鮮栄養・保健事業を推進する団体に南北協力基金を用いて100億ウォン(約9億3670万円)を支援することを先月の南北交流協力推進協議会で決定している。