2022年4月19日(火)

 「金正恩の付き人」の女性は何者? 異母姉か? 韓国メディアも騒ぎ出す!

党初級書記大会で金正恩総書記に演説文を渡す「問題の女性」(朝鮮中央テレビから)


 日本でも話題となった北朝鮮の名物アナウンサーの李春姫(リ・チュンヒ)さんに金正恩(キム・ジョンウン)総書記が高級住宅をプレゼントした4月13日の平壌市内の高級住宅地区竣工式で韓国情報当局はある女性に注目していた。この女性が平壌の松新・松花地区に建設された80階建て超高層アパートの4月11日の竣工式でもテープカットする金総書記を舞台の後方から見守っていたからだ。

 端正な紺色のツーピスを着たこの女性を韓国情報当局がマークし始めたのは今年2月26日に開催された初級党書記大会に登場し、ひな壇で金総書記に演説文を差し出した時からである。

 女性は金総書記の野外活動に随行する際には肩に黒色の地味なデザインのショルダーバックを掛けているが、その姿は金総書記の実妹・与正(ヨジョン)党副部長とダブって映る。しかし、与正氏と異なるのは全国民に義務付けられている金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)バッジを胸に着けていないことだ。

 北朝鮮でノーバッジが許されるのは唯一金正恩・李雪主(リ・ソルジュ)夫妻だけである。しかし、この女性は李夫人同様にバッジの代わりに左胸にブローチを着けていた。どう見ても、只者ではない。

 最近出番が増え、富に目立つようになったことから韓国情報当局は急いでこの女性の身元を洗っているが、今もって特定できていない。これまでのところ金総書記の儀典を担当していること以外は何一つわかっていない。金総書記の儀典担当は与正副部長を除くと、モランボン楽団の元歌手・玄松月(ヒョン・ソンウォル)党副部長だけだ。

 この女性は一体何者なのか? 与正、松月党副部長に取って代わる単なる付き人なのか、それとも身内の者なのか?

 韓国の一部脱北者の間では金総書記の異母姉の金雪松(キム・ソルソン)ではないかと囁かれている。韓国のメディアの中には「金雪松」と推測しているメディアもある。

 金雪松はこれまでその存在が確認されたことは一度もない。従って、仮にこの女性が本当に金正日総書記の娘で、正恩総書記の異母姉ならば、「白頭血統」の金正日ファミリーの一員ということになる。

 故金正日総書記はマレーシアで殺害された長男・金正男(キム・ジョンナム)の実母、元女優の成恵琳(ソン・ヘリム)と別居後、1973年に父・金日成主席の勧めもあって党宣伝部でタイピストをしていた金英淑(キム・ヨンスク)という名の13歳年下の女性と結婚したが、翌年の1974年12月30日に生まれたのが雪松ーーというのが定説になっている。この通りならば、雪松は1984年1月8日生まれの異母弟の金正恩氏よりも10歳年上である。

 また、雪松という名前は祖父・金主席が名づけたと伝えられている。ちなみに正日氏の腹違いの次男の金平日(キム・ピョンイル)前駐チェコ大使の娘にも恩松(ウンソン)という名前が付けられている。

 雪松に関する公式報道、情報は皆無である。その多くは韓国発の噂、伝聞である。その中から幾つか列挙してみる。

 ▽金日成総合大学政治経済学部を卒業している。異母兄弟同様にフランスに留学した経験もある。大学卒業後は党の中央委員会の宣伝扇動部に配属され、主に文化分野を担当していた。

 ▽1990年末頃から父親の日程管理に深く関わっており、父に上がる報告をすべて点検する仕事も担っていた。

 ▽ロシア語、中国語など5カ国語が話せることから対外関係や渉外にも関わっており、2002年8月の金正日総書記のロシア極東訪問にも随行し、グーグル会長の訪朝やNBA選手のデニス・ロッドマンの訪朝にも関わった。

 ▽正恩総書記の母親(高容姫=コ・ヨンヒ)が2004年5月に死去した後は父親が亡くなるまで身の回りの世話をしていた。

 ▽コンピューター分野に詳しく、北朝鮮のコンピューター関連分野を掌握している。叔母の慶姫が大将の肩書を与えられたとき、雪松も内々に朝鮮人民軍の「中将」肩書を与えられていた。

 ▽金正日総書記は亡くなる2か月前に遺言を残しているが、「10.8遺訓」と呼ばれている遺訓には「雪松」について「正恩の補助者として準備させ、支えてあげること。また、国内外のすべての資金管理は金慶姫(キム・ギョンヒ)が行い、慶姫ができない場合は、雪松が引き受けること」と書かれてある。

 ▽党中央委員会秘書室長のような存在で実権もあり、異母妹の与正よりも力がある。

 どれもこれも信憑性は不明だが、どちらにしても、金総書記の一挙手一投足を注視しているこの女性が誰なのか、突き止める必要がある。

(参考資料:知られざる金正恩第一書記の実兄・正哲の実像)