2022年8月7日(日)

 北朝鮮がウクライナに侵攻したロシア支援のため10万人の「派兵」を提案!?

北朝鮮の派兵情報を伝えた露の専門家(「ニューヨークポスト」HPからキャプチャー)


 韓国紙「ソウル新聞」に驚くべき記事が掲載されていた。米国の日刊紙「ニューヨークポスト」の5日付の記事を引用し、北朝鮮がウクライナに侵攻したロシアの支援のため「10万人の義勇兵を派遣することを申し出た」と報じたのである。

 情報元はロシアの国防専門家イーゴリ・コロチェンコ氏で、「ニューヨークポスト」はコロチェンコ氏が5月5日(現地時間)にロシアの国営テレビ「One TV」に出演した際の発言を紹介していた。

 コロチェンコ氏は番組で「10万人の北朝鮮義勇兵が(ウクライナに)来て紛争に参加する準備ができているとの幾つかの報告がある」と発言し、「彼らは対砲兵戦で多くの戦闘経験を持っている」と解説していた。

 「ニューヨークポスト」はこの発言はウクライナが6月から戦場に投入し、効果を発揮している高速機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)を意識したものではないかと推測しているが、コロチェンコ氏は続けて「もし北朝鮮がウクライナでファシズムと戦うという国際的な義務を果たす意思を表明するなら、我々(ロシア)はそれを受け入れるべきだ」と提言したとのことだ。

 確か、4月上旬に「ロシアのショイグ国防相が3月中旬に北朝鮮を極秘訪問し、消耗した弾薬やミサイルなどの支援を要請し、北朝鮮がこれに応えた」とのウクライナ発の未確認情報が駆け巡ったことがあった。

 ウクライナのニュース放送「TSN」がイスラエルに亡命中のロシア最大石油企業ユコスの元最高経営責任者(CEO)レオニード・ネブズリン氏の情報として発信していたが、今回はロシア発で、それも国営テレビ発信されたロシア国防専門家の発言だけに軽視はできない。

 北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を一貫して支持しているのは周知の事実である。

 侵攻が始まった翌日の2月26日には早くも「ウクライナ政府によって虐げられてきた人々を保護するためだ」とロシアを全面的に擁護し、28日にも「他国に対する強権と専横に明け暮れている米国と西側の覇権主義政策に根源がある」と欧米批判を展開していた。実際に、国連総会ではベラルーシ、シリア、エリトリアの3か国と共にロシア非難決議に反対票を投じていた。。

 ロシアの祖国戦争勝利記念日にあたる5月9日には金正恩(キム・ジョンウン)総書記自らがロシアのウクライナ侵攻は「国の尊厳と平和と安全を守るための偉業」であるとしてプーチン大統領に連帯を表明していた。そして、先月13日にはウクライナ東部を実効支配している親ロシア派の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、外交関係を樹立していた。

(参考資料:ロシアのウクライナ侵攻で注目される露朝の政治・外交・軍事関係)

 北朝鮮は独立を承認しただけでなく、ロシアのマツェゴラ駐北朝鮮大使がロシア紙「イズベスチヤ」とのインタビューで明らかにしたところでは建設労働者を派遣し、二つの地域での復旧作業にあたるとのことだ。

 終戦下でもなく、停戦状態にも置かれてない危険地域に派遣するのは当然リスクが伴う。従って、労働者の派遣が既成事実ならば、安全が担保されなければならない。そのためにはウクライナ戦でのロシアの勝利が前提となる。

 仮に戦時中の派遣ということになると、労働者以外に建設現場の治安を維持するための「治安維持部隊」を派遣しなければならない。そうでなければ、一般労働者ではなく、軍後方総局所属の軍人が主体となるだろう。

(参考資料:北朝鮮のウクライナ派遣「労働者」は軍人? ロシアへの後方支援!)

 それにしても、10万人とは多い。しかし、ベトナム戦争が終結するまでの6年間に延べ30万人以上の軍人を派兵した韓国と比較すると、その3分の1である。また、北朝鮮の正規軍は110万から120万人と言われている。10万人と言えば、その10分の1である。労働力が余っている北朝鮮からすると、大した数ではないのかもしれない。

 本当に北朝鮮は10万人もの軍人を「派兵」するのだろうか?

(参考資料:北朝鮮はロシアに軍事支援をする? しない? その有無を検証する!)