2022年7月16日(土)

 手ぶらか、土産持参か、韓国外相の4年7か月ぶりの来日!

林正芳外相(左)と朴進外相(韓国外交部提供)


 韓国の朴進(パク・チン)外相が今月18日に来日するようだ。

 プリンケン米国務長官に倣い、凶弾に倒れた安倍晋三元首相の弔問が表向きの理由となっているが、主たる狙いはずばり、林正芳外相との外相会談にある。実際、韓国外交部の発表でも20日までの滞日中に林正芳外相と会談することになっている。外相会談では両国の懸案、北朝鮮への対応、さらにその他共通の関心事について話し合うとされている。外相会談の進展次第では岸田首相への表敬訪問も予定されているようだ。

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 韓国外相の訪日は2017年12月の康京和(カン・ギョンファ)外相以来、実に4年7か月ぶりである。康元外相は2019年11月にも日本で開催されたG20外相会談に出席するため再来日したが、この時は元徴用工問題が再燃し、日本が半導体素材輸出の厳格化や韓国を「ホワイト国」から除外する措置を取ったことに反発した韓国が日本製品ボイコット運動を展開し、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄のカードをちらつかせたことで険悪化し、外相会談は実現しなかった。

 朴外相は本来、6月に訪日予定だった。しかし、元徴用工問題で韓国側から解決策が示されない状況下での受け入れに日本が難色を示し、来れなかった。日本は少なくとも参議院選挙(7月10日)が終わるまでは受け入れる環境ではなかった。応じれば、保守層から韓国に譲歩したとの批判を受けることになりかねず、そうなれば選挙にマイナスに作用すると踏んだからである。

 しかし、選挙で自民党が大勝し、政権の基盤が安定したことによる余裕もあって岸田政権は外相会談に応じることにしたようだ。当然、日本にとっての最大の関心事は日韓関係悪化の源となった元徴用工問題に関する韓国側の対応である。外相会談はまさに朴外相から韓国が検討している解決策を直接聞き出す場ともなる。

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 元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で解決済であるとの立場から日本政府は日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁判所)の判決は「国際法違反である」と終始一貫主張し、その是正を求めてきた。従って、差し押さえられた韓国内の日本企業の資産が現金化されるようなことになれば日韓関係は取り返しのつかないことになると、韓国を再三、圧迫してきた。

 韓国政府も「現金化すれば、ルビコンの河を渡ることになる」との危機感は共有している。元徴用工問題に関する官民合同の協議体を外交部が主導し、発足させたのもいかにして現金化を防ぐかの作業を検討するためのものである。

 官民合同協議会の結論はまだ出ていないが、結論を待つまでもなく尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は▲現金化させない▲補償金は韓国が代位弁済する方針だ。韓国政府ではなく、仮に日本からの戦後賠償金で潤った韓国企業が代位弁済しても日本企業に請求する考えはないと伝えられている。

 尹大統領は大統領になる前は「経済・安保協力を構築し、信頼関係を築けば、日本は謝罪し、賠償するはずだ。未来志向の関係が確立されれば十分に解決できる問題である」(韓国日報とのインタビュー、2月7日)と日本の賠償を楽観視していたが、日本の立場が強固なことを知り、大統領になった今では韓国が代位弁済する方向に転じている。

 現金化については文在寅(ムン・ジェイン)前政権も「好ましくはない」(文大統領)との立場に立っていたことや代位弁済については文政権内で議論されていたことなどから野党からも同意を取り付けられるとみている。

 朴外相はこの2点をベースに解決策を示す考えでいるが、尹大統領も「日本の努力」「日本の協力」を求めていることから韓国が元徴用工を支援する基金など受け皿を作った場合、韓国の大法院から元徴用工への賠償支払を命じられた日本企業が自発的に寄付することを申し入れるようで、それが無理ならば、少なくとも元徴用工らが求めている謝罪を行うことを最低条件としている。

 元徴用工の問題解決は日本企業が直接被害者に会うか、あるいは書面で謝罪することが必須条件となっているので日本の企業が道義的責任から謝罪の求めに応じるならば、元徴用工問題は韓国国内で多少異論あったとしても大きく前進するであろう。

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