2022年7月30日(土)

 北朝鮮が発症から77日で「コロナ」を収束させた! 奇跡?捏造? 世紀のミステリー

戦勝記念日式典での金正恩総書記(労働新聞から)


 まるでマジックでもみているようだ。北朝鮮の新型ウィルスコロナ感染があっという間に収束したのである。

 北朝鮮の国家非常防疫司令部の集計によると、新型コロナウイルスに感染したとみられる 北朝鮮の昨日(29日)の全国「発熱者」はゼロだった。驚くべきごとに発症から77日間でゼロとなり、事実上、消滅したことになる。

 「正体不明の発熱」と称して北朝鮮が新型コロナウイルスの感染を初めて公式に認めた5月12日の感染者が1万8000人。これを皮切りに「感染者」は17万4440人(13日)→29万6180人(14日)→39万2920人(15日)と右肩上がりで急増していた。

 ところが、早くも4日後の5月16日(26万9510人)から下降線を辿り、30日には10万人を割り、9万620人となり、月が変わった6月には5万680人(8日)→1万9310人(18日)と著しく減少し、6月23日の時点では1万人を割って9610人まで減少していた。今月は週単位でみれば一目瞭然だが、感染者の減少が著しい。

 7月1日 4100人→3540人→3030人→2500人→2140人→1950人→1630人(7日)で計1万8890人

 7月8日 1590人→1460人→1240人→900人→770人→560人→500人(14日)で計7020人

 7月15日 460人→430人→310人→250人→250人→170人→140人(21日)で2100人

 7月22日 120人→120人→50人→30人→18人→11人→3人(29日)で計352人。

 一昨日は一桁の3人、そして昨日ゼロとなったわけだが、 何よりも信じ難いのは感染者が累計で約477万人もいるのに死亡者はたったの74人しかいないことだ。 ちなみに6月の死亡者は2人、7月は5日のたったの1人だけである。

 北朝鮮と陸を接している韓国の死亡者は7月28日現在、累計で2万4992人(感染者は約1962万人)。計算上、北朝鮮の感染者は韓国の4分の1程度だが、死亡者に限っては337分の1ということになる。どう考えても、理解不能だ。

 北朝鮮が一日最多の39万2920人の感染者を確認した5月15日でさえ死者は一桁の8人だった。ちなみに日本で過去最多の10万2333人の感染が確認された際の死亡者は117人もいた。これまた実に不思議な現象である。

 北朝鮮防疫当局は「全感染者(477万2813人)の99.99%にあたる477万2535人が完治し、現在治療中の感染者は204人のみ」と発表としているが、発表とおりならば、治療中の患者がゼロになるのはもう少し時間がかかりそうだ。というのも「患者」の数は直近の1週間の推移をみると、350人→360人→330人→260人→230人→228人→217人と大きく減少していないからだ。

 最大のミステリーは国際常識に反し、北朝鮮では誰一人、ワクチンを打っていないことだ 。ワクチンは中国からも、ロシアからも入っていないからだ。一部では「中国から持ち込まれているのでは」との話もあったが、北朝鮮が中国に支援を求めたのは医療品が主だった。

 中国税関統計を見ると、北朝鮮は6月に中国から350万ドル相当の医療品及び薬品を購入しているが、抗生剤のアモキシリンやアンピリシン、ステロイド抗炎症剤、ビタミン、マスク、それに酸素吸入器などである。実際にテレビ、新聞など北朝鮮のメディアを厳密にチェックしてみても、ワクチンを打っている場面、写真は一枚も見当たらなかった。

 北朝鮮は韓国より生活レベルは低く、医療体制も脆弱である。感染予防対策といえば、どの国でもやっているような手洗い、うがい、消毒、マスクの着用、そしてソーシャルディスタンスを取るだけだ。当然、統制国家なので都市封鎖を含め防疫措置や統制は徹底的に強めていたことは言うまでもない。隔離病棟を全国に増設し、約500の防疫組、診断治療組を防疫活動と感染者に対する診断、治療に専念させているのも事実である。

 後は、感染者に対しては金正恩(キム・ジョンウン)総書記ら党・政府・行政機関の幹部らが家庭用医薬品を差し出し、注射薬や排毒散(風邪を治す漢方薬)、上向牛黄清心丸(ウイルスに効くとされる漢方薬)など伝統的な高麗薬を服用させたぐらいだ。

 一昨日に行われた「戦勝69周年記念日」(朝鮮戦争休戦協定の日)関連行事に全国から朝鮮戦争(1950−53年)に参戦した老兵らが平壌に集い、金総書記ら党・軍幹部出席の下、1万人規模の大会を野外で開いていた。老兵らは80代から90代と感染すれば最もリスクの高い後期高齢者である。それにもかかわらず全員がノーマスクだった。室内の行事でも誰一人マスクを着用してなかった。

 北朝鮮は「最高尊厳」と称されている金総書記の健康は何よりも最優先されている国である。感染させれば、それこそ一大事である。

 感染予防対策によほど自信があるからなのか、本当に新型コロナウイルスの感染者がなくなったからなのか、それとも少なくとも平壌だけは「無菌」状態になったからなのか、これぞまさに「世紀のミステリー」である。