2022年6月21日(火)

 衛星ロケットも潜水艦弾道ミサイルも気が付けば、韓国が北朝鮮を抜き、「世界第7位」!

韓国(左)と北朝鮮のロケット(韓国航空宇宙研究院と労働新聞から筆者加工)


 韓国初の国産ロケット「ヌリ号」(KSLV-2)が南部の全羅南道の羅老宇宙センターから午後に打ち上げられる。当初は15日に打ち上げられる予定だったが、ロケットの酸化剤タンクのセンサーに異常が発生したため延期されていた。

 マッハ7.5(時速2万7千km)の「ヌリ号」は高度700kmの地点で実用衛星を軌道に乗せる。成功すれば、100%自前のロケットによる衛星発射国としては7番目となり、韓国は今後、宇宙開発事業に本格的に乗り出すことができる。

 現在、ロケットエンジン及び付属装置を自ら開発、組み立てて実用級の衛星を打ち上げることのできる国は米国、ロシア、中国、日本、EU、インドの6か国のみである。その中にはライバルの北朝鮮は含まれていない。

 北朝鮮は「月光計画」の下、韓国よりも一足先に1998年から西側諸国では事実上の長距離弾道ミサイル(「テポドン」)とみなされているロケットを使って人工衛星を打ち上げ、2012年にスタートした「宇宙開発5か年計画」の最終年度にあたる2016年2月7日には「光明星4号」を発射し、通信衛星を軌道に進入させている。しかし、衛星が正常に機能せず、地上との交信ができなかったことから国際社会では失敗したものとみなされている。

 発射推進体であるロケットは南北共に3段式だが、韓国の「ヌリ号」は全長約47m、直径3.5m、重量200tなのに対して、北朝鮮の「光明星4号」は全長30m、直径2.4m 重量91t。搭載される衛星の重量も韓国の1.5tに対して北朝鮮のそれは100kgと15分の1程度だ。

 韓国の人工衛星発射は宇宙の平和利用に目的があるため問題にされていないが、北朝鮮の場合は、弾道ミサイルの技術に転用されるため国連安保理によって禁止されている。即ち、2006年の「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止する」ことを北朝鮮に求めた安保理決議「1718」に違反するため発射されれば、北朝鮮には即、制裁が科せられる。

 北朝鮮の「光明星4号」は平安北道の東倉里衛星発射場から沖縄を通過し、フィリピンに向けて飛行していたが、韓国の「ヌリ号」も日本に最も近い韓国最南端、全羅南道から発射されるので九州と沖縄の間を飛来するものとみられる。

 北朝鮮のミサイルに対しては当時日本ではトラブルが発生すれば、飛行コースを誤り、鹿児島に落下する恐れもあることしてそれに備え、迎撃の動きもあったが、韓国の衛星発射に対しては2009年4月に韓国が小型衛星発射体を使って科学技術衛星2号を宇宙に打ち上げた時と同様に今回も日本にはそうした危機感はなく、警戒態勢も敷いていない。

 衛星だけでなく、潜水艦弾道ミサイル(SLBM)でも開発は北朝鮮が先行していたが、これもまた韓国が逆転している。

 韓国は昨年9月15日に独自に建造した3千トン級潜水艦「島山安昌浩(トサンアンチャンホ)」からの水中発射に初めて成功したが、当時文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は「世界で7番目のSLBM発射国なった」と豪語していた。

 おかしなことに本番前の9月1日に非公開で水中射出テストを行った際には韓国のテレビ、新聞は一斉に韓国軍当局の発表に基づき「SLBM潜水艦水中試験発射成功・・・北朝鮮に続き8番目のSLBM保有国になった」と伝えていたが、それが2週間後には一転「世界で7番目」に変わったのである。

 北朝鮮は2015年5月に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち合いの下、2千トン級の潜水艦「8.24英雄(ヨンウン)艦」からSLBM「北極星−1型」の水中発射実験を初めて行い、数回テストを重ねた結果、2016年8月24日に成功させている。

 また、2019年10月2日にも元山の海上で改良型の「北極星―3型」の発射にも成功している。しかし、韓国では北朝鮮のSLBMは「潜水艦からではなく水中に沈めたバージ船(台船)から発射された可能性が高い」とみて、北朝鮮をSLBM保有国として認めていない。

 動物に例えるならば、北朝鮮が兎ならば、さしずめ韓国が亀ということなのかもしれない。