2022年5月19日(木)

 北朝鮮必死の「防疫策」 感染拡大止まらず!

市内の消毒に回る防疫組(朝鮮中央通信)


 国家非常防疫司令部の集計によると、新型コロナウイルスに感染したとみられる北朝鮮の昨日(18日)の「発熱者」は26万2270人。前日(17日)の23万2880人よりも約3万人増えた。

 北朝鮮の「発熱者」は新型コロナ感染者を公式に認めた12日の1万8000人を皮切りに17万4440人(13日)→29万6180人(14日)→39万2920人(15日)と右肩上がりで急増したが、16日に26万9510人、17日に23万2880人と2日連続で下降線を辿っていた。このため18日に開かれた政治局常務委会議で金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「今日のように好転の推移がみられれば」と今後の感染推移に期待を示していたが、僅か1日でぶり返してしまった。

 その一方で、死亡者は12日6人、13日21人、14日15人、15日8人、16日6人、17日6人と推移し、18日はたったの1人だった。「感染者」数に比べると、極度に少ない。

 そのことは韓国の感染状況と比較してみると、一目瞭然だ。例えば、韓国は3月3日に26万6853人、3月5日に24万3628人の感染者を出したが、この時の死者数は186人と161人であった。

 北朝鮮の「発熱者」は北朝鮮が公表した12日から18日までの1週間、累計で197万8230人、死者は63人。一方、韓国では3月5日から11日までの間に199万3712人の感染者を確認していたが、死者は累計で1348人であった。

 韓国よりも生活レベルは低く、医療体制も脆弱と言われ、国民の86.86%が2回目のワクチン接種を終えた韓国に比べ、ワクチンゼロの北朝鮮で死者が韓国のおよそ21分の1というのも不思議な現象だ。

 北朝鮮は18日午後6時現在、全国で74万160人が治療中にあるが、約142万8000人の医療および防疫部門の活動家、教師、学生が当該の地域で治療に献身していると伝えられている。

 北朝鮮は現在、金総書記が主宰した12日の政治局会議の決定に基づき、全国の道・市・郡がそれぞれの地域を封鎖し、感染拡大を防いでいるが、防疫策としては次の措置が取られている。

 ▲隔離病棟を全国に増設し、約500の防疫組、診断治療組を防疫活動と感染者に対する診断、治療に専念させる。

 ▲衛生防疫機関では標準化された治療マニュアルを作成し、人民に対して衛生宣伝を行う。防疫措置に違反しないよう法的監視と統制を強める。

 ▲各道・市・郡の非常防疫部門では世界的な保健危機状況に対処して備蓄した防疫物資を悪性ウイルス撃退戦の第一線で奮闘している医療従事者と治療・予防機関に優先的に供給する。

 ▲医科学研究部門の研究者は悪性ウイルス感染症の治療に効果のよい治療薬物を大々的に開発、生産し、合理的な診断および治療法を確立する活動を本格的に推し進める。

 ▲消毒に力を入れ、平壌市に数千トンの塩を緊急輸送し、消毒薬の生産に入る。

 ▲南浦の医療機器工場で体温計などの医療機器を増産し、平壌と新義州市高麗薬加工工場など地方の製薬工場、高麗薬工場では注射薬や排毒散(風邪を治す漢方薬)、上向牛黄清心丸(ウイルスに効くとされる漢方薬)など伝統的な高麗薬の生産に拍車を掛ける。

 自身の常備薬品を差し出した金総書記に続き、党・政府・行政機関の幹部、それに地方自治体の責任者らもこぞって家庭用医薬品を供出し、これら医薬品を人民に行き渡るよう約3000人の軍医が首都に数百あるとされる薬局店に運び、貼り付いて24時間サービスシステムを稼働させているが、今朝の党機関紙「労働新聞」は正論「党中央は人民死守の最前線にいる」と社説「高い政治意識と高度の自覚性を発揮し、防疫危機を主導的に打開しよう」を同時に載せ、人民に向けて「この試練と危機を何としてでも乗り切ろう」と呼び掛けていた。

(平壌をロックダウン!「建国以来の大動乱」にある北朝鮮の感染状況は今週が山場!)