2022年5月3日(火)

 韓国の次期外相に「竹島上陸」の「過去」 日本は黙認するのか?

議員時代に竹島をバックに写真を撮る朴進氏(前列右端)(「JPニュース」提供)


 岸田文雄首相は10日に行われる尹錫悦(ユン・ソクヨル)韓国大統領就任式に出席するのを見送るようだ。前のめりならずに尹次期政権の対日政策を見極めたいとの慎重論が史上最悪の日韓関係の打開のために出席すべきとの積極論を制したようだ。

 政府自民党の中には文在寅(ムン・ジェイン)政権とは異なり対日融和路線を掲げる尹政権に期待する向きがある。しかし、政権が変わったからといって長年にわたる日韓の懸案が一朝一夕で解決できるはずはない。まして、元慰安婦問題は保守の盧泰愚(ノ・テウ政権)から30年以上も、また元徴用工問題も革新(進歩)の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権から20年にわたって引きずっている「不治の病」である。

 尹次期大統領は先頃、日本に韓日政策協議団を派遣し、岸田首相に関係改善の意欲を伝えていたが、関係修復の前提条件となる元徴用工問題の解決策は示さなかったようだ。「関係改善のため共に努力しよう」と呼び掛けただけだった。

 尹次期大統領は大統領選挙期間中に「日韓シャトル外交を復活させ、日韓の懸案をすべてテーブルの上に乗せ、一括妥結する」と言っていたが、その一方で「領土、主権、過去史(歴史問題)に関する問題では堂々とした立場を堅持する」と繰り返して述べていた。

 日本政府が尹次期政権に一抹の不安を持っているとすれば、おそらくこの「堂々とした立場」にあるのではないだろうか。早くもその不吉な兆候が表れている。

 昨日、韓国国会で次期外相に内定している朴進(パク・ジン)氏に対する人事聴聞会が開かれたが、朴氏は2015年の「日韓慰安婦合意」について「被害者の尊厳を回復する」と答えていた。また、日本の企業に元徴用工への賠償を命じた韓国裁判所の判決についても「司法の判断を尊重する。被害者に対する名誉と尊厳を回復させ、心底から傷を治癒できる解決策を探る」とも述べていた。

 さらに日韓の新たな懸案として浮上している佐渡の金山の世界遺産登録問題についても「軍艦島の問題と同じだ。強制労役があった事実をそのまま知らせるようユネスコや遺産委員会、関連国と共に引き続き努力する」と答えていた。どれもこれも基本的なスタンスは文政権の歴代外相と何一つ変わったところはない。

 朴氏は子息の闇賭博疑惑をはじめ幾つかの疑惑を追及され、人事委員会では吊るしあげられているが、仮にパスすれば、朴氏は尹政権の初代外相、対日外交の司令塔となる。朴氏は一体どういう人物なのか?これまでの対日スタンスは?

 今年66歳の朴進氏は外交安保専門家として金泳三(キム・ヨンサム)政権(1992年12月〜1998年2月)下で大統領候補秘書官を務めたほか、「ハンナラ党」総裁特別補佐役などを歴任してきた。

 金大中(キム・デジュン)政権下の2002年の国会議員選挙で野党から出馬し、初当選し、当選回数は4回。外交委員会委員長を経験した野党「国民の力」所属のベテラン議員である。オクスフォード大で政治学博士号を取得した米国通であるだけでなく、東大に留学経験があり、日本語も話せる「知日派」としても知られているようだ。

 国会議員時代に外交畑を歩んだことからもわかるように日本とは無縁ではない。当然、日韓の「懸案」についてもこれまで様々な言動があったはずだ。そこで、調べてみた。すると、あることに気づいた。日本との領土問題では生粋の「反日」であることだ。

 例えば、保守の李明博(イ・ミョンパク)政権下の2008年にラジオ番組に出演した際、領土問題について「これからは独島(竹島)という固有の名称を国際用語にするため努力する」と発言していた。この年、「独島の名前を守る運動を始める」と公言し、韓米議員外交協会の一員として訪米した時には米国に「竹島」ではなく「独島」を使用するよう要請していた。

 さらに2年後の2010年4月には外交委員会委員長として同じ与党所属のキム・ヒョンオ国会議長と共に竹島に上陸している。国会議長の竹島訪問は韓国史上初めてのことであった。

 金議長は島に上陸すると訪問禄に「初めから、これからも永遠に独島は我が領土」と記帳し、朴氏もまた「独島は大韓民国の領土主権の象徴として、韓日強制合邦100周年となる年に日本が韓日関係を新たに発展させようとするのではなく、領有権を主張するのは非常に遺憾だ。独島領有権を一層明確にさせ、東海(日本海)表記を国際的に公認されるよう一層努力すべき時が来た」と気勢を上げていた。

 圧巻は、2011年8月には鬱陵島訪問を計画した自民党の「領土に関する特命委員会」の新藤義孝と稻田朋美, 佐藤正久氏ら3人の議員の訪韓を阻止したことだ。

 訪島理由について当時、新藤議員は「鬱陵島には観光船もあり、竹島博物館もある。それで、韓国人が竹島についてどう考えているのか知りたくて行きたかった。民泊し、住民らと意見を交わしたかった。そうしてこそ摩擦を乗り越え、両国関係を好転させ、問題も解決できるのでは」と理由を語っていた。また、稲田議員も「我々は韓国と本当の意味で友達になるつもりで、韓国の主張を聞くために行こうと思っている」と言っていた。しかし、3人は金浦空港で入国を拒否され、その日のうちに「強制送還」されてしまった。

 自民党議員らの訪韓を先頭に立って反対運動を展開したのが与党「ハンナラ党」所属の15人を含め21人の超党派議員から成る「アジア文化経済フォーラム」で、代表は他ならぬ朴進氏であった。

 同フォーラムは「日本の議員らが鬱陵島を訪問しようとするのは韓国の主権を侵害し、独島を紛争地域化することにある」と断じ、訪問計画の撤回を求める一方で、韓国政府に鬱陵島訪問を強制すれば、出入国管理法上違法行為になるのでビザを出さないよう要請していた。

 こうした経歴の持ち主が次期外相である。日本は朴氏の「竹島上陸」を不問にするものと思われるが、それで日本が期待するような解決策を示せば良いのだが、その保証はない。

(尹次期大統領が派遣した訪日団に成果はあったのか?)