2022年9月11日(日)

 尹錫悦大統領夫人の疑惑を追及し、起訴せよ! 党首を起訴された野党の逆襲!

日本のお盆に当たる「秋夕」の日の尹錫得大統領と金建希夫人(大統領室提供)


 野党第1党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が起訴されたことで今後の与野党の争点は、また世論の関心は李代表から尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人、金建希(キム・ゴンヒ)女史に移りそうな雰囲気だ。「共に民主党」が報復措置として金夫人の疑惑を検証、追及するため国会が指名する特別検察官による特別検査(特検)を国会で発議すると表明したからである。「共に民主党」は7日に議員総会を開き、全員一致で「金建希特検」を党則とすることを決めている。

 「金建希特権」の是非を巡っては韓国の世論調査会社「コリアリサーチ」がMBCテレビの委託を受け、数日前(7日〜8日)に全国成人男女約1千人を対象に行った世論調査の結果では62.7%が「特検が必要」と答え、「必要ではない」(32.4%)の約2倍に達していた。同調査では李代表が起訴されたことについても調査が行われていたが、「法に則った起訴で、報復捜査ではない」と答えた人が過半数を上回る52.3%で、「起訴は政治報復」と主張する野党に同調した人は42.4%だった。

 世論調査の結果は国民が「法は万人の下、平等である」との憲法の精神に基づき、いかなる権力者に対してでも「聖域なき捜査」を求めていることの表れであるが、金夫人については韓国のメディアで「金建希リスク」と称されるほど数々の疑惑が取り沙汰されている。

 その1.BMWなど国内販売権を持つドイツモータズの子会社「ドイツファイナンシャル」の転換社債を相場よりも安い価格で購入した「株価操作疑惑」

 金夫人も尹大統領も株の売買には直接関与していない説明していたが、最近になって、韓国の一部メディアが2010年1月に証券会社の職員を通じて金夫人自らがドイツモータズの株を直接電話で指図し、注文していた際のやりとりを公開したことから野党は李大統領を「偽証罪」で訴える事態に発展している。

 その2.大統領資産申告で6千万ウォン相当のネックレスの申告漏れ疑惑

 金夫人は夫に同行し、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席のためスペインを訪れた際に身に着けていた高額のネックレスについて「自分のものではなく、現地で知人から借りた」と釈明していたが、「共に民主党」は「借りたのなら、それが無償なのか、契約書はあったのかをさらに確認しなければ疑惑は完全には解消されない」と追及する構えを崩していない。

 その3.2008年に国民大学テクノデザイン専門大学院で博士号を受けた論文と学術誌論文の盗作疑惑

 国民大学テクノデザイン専門大学院で2008年に博士号を受けた論文と学術論文について「盗作である」と訴えられた疑惑について国民大学では「不正行為」はない」と結論を下したが、韓国私立大学教授会連合会など14の団体から成る国民大学検証団は7日、「盗作である」との調査結果を発表し、大学側の「判定」に意を唱えている。

 その4.大統領府で民間人を大統領専用機でスペインに同行させた疑惑。

 金夫人は大統領府で人事を担当している秘書官の妻が民間人にもかかわらず、同行させ、大統領専用機に搭乗させていた疑いが持たれている。

 これ以外にも経歴詐称疑惑や新大統領官邸の建設に夫人と関係の深い業者に発注させた疑いも浮上しており、巷では李代表同様に「疑惑のオンパレード」と揶揄されている。

 特別検察官制度が適用されれば、調査は金夫人の容疑を立証、立件、起訴することに軸が置かれるが、捜査期間は70日で、さらに30日間の延長も可能である。金夫人は大統領でなく、民間人なので起訴は可能となる。直近では、朴槿恵(パク・クネ)元大統領に特別検察官制度が適用されたが、この時は容疑が立証され、朴元大統領は最終的に国会で弾劾され、最後は憲法裁判所で罷免されている。

 「共に民主党」が金夫人への追及の手を緩めないのは尹大統領にとっては「アキレス腱」、「地雷原」となっており、特検が適用されれば、致命傷になりかねないからだ。

 しかし、国会の法制委員会委員長のポストは与党が握っているため国会で上程され、可決されるかは微妙とみられている。また、「共に民主党」は金夫人の問題を国会審議で最優先議題とするファーストトラックに指定することを目指しているが、「共に民主党」所属の法制委員は10人しからおらず、可決に必要な11人に1人足りない。あてにしていた革新系無所属の議員が「今の状況で大統領夫人に対する特検が果たして民生にプラスになると思えない」と反対の立場を表明しており、ことからこれもまた難しい状況にある。

 なお、「コリアリサーチ」の調査では尹大統領の支持率は1か月前(8月12日)の28.6%から1.8ポイント上昇し、30.4%と30%台を回復したが、「不支持」は依然として63.6%と高い。

 また、与野党の支持率は与党「国民の力」の34.5%に対して「共に民主党」は38.5%と、4ポイント上回っていた。