2022年9月24日(土)

 文在寅政権下の前駐日大使が「日韓首脳の対面」は「会談」ではなく「懇談」と、日本に軍配を上げる!

国連の場で対面した岸田文雄首相と尹錫悦大統領(内閣広報室から)


 岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の2度目の顔合わせが国連の場であった。

 初対面は今年6月にスペインのマドリードで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議での場で、この時は韓国側の発表では4度接触があったもののいずれも一言、二言挨拶を交わす程度で終わっていた。

 今回は約30分間話し合ったようだ。立ち話ではなく、対面方式で行われたことから韓国では「略式ながら会談が行われた」と発表し、日本は「正式な会談ではなく、懇談だった」と説明し、日韓双方の発表が食い違っている。 

 韓国大統領室(大統領官邸)の金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長は15日に記者会見を開き、「国連総会に合わせて30分ほど対面方式で首脳会談を行うことで日韓双方ともに快く合意した」と早々に発表していたことから韓国内では正式な会談が開かれるものとみていた。

 しかし、蓋を開けてみると、国旗を掲揚した格式のある正式な会談ではなく、非公開の「略式会談」、それも「会談ではなく、懇談だった」と日本政府が発表し、日本のメディアも一斉に「日韓首脳懇談」と報道したことから韓国内では尹政権の対応に批判の声が上がっている。

 大統領室も外交部も「略式会談が行われた」と言い続けているが、会談形式を巡る日韓の見解相違について韓国の政権交代まで日本に大使として赴任していた姜昌一(カン・チャンイル)氏は昨日、韓国のMBCラジオに出演し、日韓の不協和音の原因は「すべて金泰孝国家安保室第1次長に責任がある」と発言していた。

 東京大学大学院で学び、文在寅(ムン・ジェイン)政権下で韓日議員連盟会長を務めたこともある知日派の姜昌一前大使は日韓首脳会談が正式な会談でなかったことについては金泰孝第1次長の15日の記者会見での発表に「問題がある」とし、その理由について「日本がまだ調整中だったにもかかわらず一方的に発表したのは外交非礼である。会談を行うことで正式に決まっていたならば、本来は同時に発表すべきものである」と、金第1次長の落ち度を指摘していた。

 さらに続けて「日本が韓国との首脳会談を決定していない段階で韓国が一方的に発表してしまえば、岸田首相の立つ瀬がない。日本には強硬派もいれば、嫌韓派、反韓派もかなりいる。だから、岸田首相が攻撃されてしまった。攻撃されたので岸田首相は『それならば会わない』と言わざるを得なかったようだ」と独自の解釈を加え、そのうえで「結局のところ首脳会談を韓国側が物乞いしているかのように見えてしまい、我が国民が怒る羽目になってしまった。原因提供は韓国側にある」と、尹政権の稚拙な対応を批判した。

 また、大統領室や外交部が「略式会談」の表現に固執していることについても「大統領室は言い方を間違い、収拾の仕方も間違っていた。会談という表現を使わず、ただ単に『偶然に会った』と言うべきだった」と述べ、続けて「隣国との関係を良くしなければならないので短い時間ながら握手し、20〜30分ほど話し合った、と簡単に説明すれば良かったのになぜ問題を大きくしたのか理解に苦しむ」と語っていた。

 肝心の会談形式については「日本政府が懇談と言っていることについてはどう思うか」との司会者の質問に「懇談のほうが略式会談よりもましだ。内容や形式からしても懇談が正しいと思う」と感想を述べたうえで「私ならば『非公式遭遇』という言葉を使用する」と語っていた。

 姜前大使は事態の収拾に乗り出した朴振(パク・チン)外相の対応についても「見世物的外交をしている」とのレッテルを貼り、「首脳会談前に林正芳外相と会っているのに成果を出せないでいる」と非難し、今回の首脳会談の評価についても「プロセスが良くなかったので会ったことの意義が薄れてしまった」と酷評していた。

 姜前大使は昨年1月に着任したものの菅義偉首相(当時)にも茂木敏充外相(当時)にも面談が叶わず、外相に会えたのは韓国の政権交代によって任を解かれ、帰国直前の6月16日で、外務省で林正芳外相に30分間面会することができた。新たに着任した大使の「表敬訪問」を受けないというのは外交上極めて異例のことであった。

 ちなみに後任の尹徳敏(ユン・トクミン)大使は着任(7月16日)から約2週間後の8月2日には林外相に就任挨拶を行っている。また、岸田首相とはすでに着任から3日後の7月19日に朴振外相が韓国外相としては4年ぶりに日本の首相を表敬訪問した際に同席し、顔合わせをしていた。

(参考資料:2年9か月ぶりの「日韓首脳会談」を韓国メディアはどのように速報したのか!)