2022年9月28日(水)

 絶望的な北朝鮮の非核化 韓国国民の10人中9人は「無理」と回答

尹錫悦大統領と金正恩総書記(尹大統領のHPと労働新聞から筆者キャプチャー)


 韓国人の10人中、9人までが「北朝鮮は核を放棄しない」とみていることがわかった。

 韓国の名門大学・ソウル大の統一平和研究院は設立16周年を記念して様々な学術会議やセミナーなどを開催しているが、今月27日に学内で行われた「岐路に立たされた平和、再び問う統一」と題する討論会の場で「2022年統一意識調査」を発表していた。それによると、「北朝鮮の核放棄は不可能」との回答が驚いたことに92.5%もあった。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は8月15日の光復節での演説で「北朝鮮が核開発を中断し実質的な非核化に転換するならば、その段階に合わせて北朝鮮の経済と民生を画期的に改善する用意がある」と「大胆な構想」を提案していたが、韓国の国民にとっては実現性のない提案に移っているようだ。

 同研究院は2007年から毎年南北統一に関する意識調査を行っているが、今年の統一意識調査は世論調査会社「韓国ギャラップ」に委託して7月1日から25日にかけて満19歳以上の男女1200人を対象に実施された。

 これまでの調査で92.5%は最も高い数字で、北朝鮮の7度目の核実験の動きや北朝鮮が核政策を法制化したことに影響を受けたものと分析されている。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今月8日の最高人民会議での演説で「絶対に核を放棄しない。核交渉も取引もしない」と述べ、「我が国の核保有国としての地位は不可逆的なものとなった」と宣言し、核戦力政策を法令化していた。

 北朝鮮の核脅威に対抗する手段として「韓国も核保有すべき」との回答も55.5%に達し、韓国人の半数以上が核保有に賛成していることもわかった。これも過去最高値である。核保有固定論者は年々増加傾向にあり、今年は昨年よりも10ポイントも増えていた。

 肝心の南北統一の可能性については31.6%が「不可能」と回答しており、これまた過去最多を記録した。特に20代、30代の若い世代では「不可能」との回答が40.9%、35.3%もあり、40代(27.7%)、50代(23.5%)を大きく上回っていた。

 一方で、「統一はすべきか」との質問には半数近い46.0%が「統一は必要である」と回答しているが、これもまた昨年(44.6%)に続いて過去2番目に低い数字となった。

 「統一をしなくてもよい」との回答も半数近くに達しているが、その理由については「経済的負担が大きいから」が34.1%、「南北間の格差、体制の違い」が21.5%、「統一後に発生する社会的問題」が20.3%となっていた。

 統一問題との関連で注目すべきは脱北者に対する韓国人の意識で「韓国に来たがる人は全員受け入れるべき」は29.0%で、「選別すべき」が倍の56.12%に達していた。同じ同胞であるにもかかわらず脱北者に対する親近感は23.1%に留まり、昨年に比べて60代を除く、すべての世代で脱北者への親近感が薄れていた。

 この意識調査では周辺諸国の好感度についても調査が行われていたが、米国に対する親密感は80.6%と過去最高を記録する一方で、中国に対して親近感を抱いている韓国人は僅か3.9%しかなかった。また、ウクライナに侵攻したロシアについては0.5%と、1%もなかった。

 尹錫悦政権になって日韓関係に修復の兆しがみえるが、韓国人の日本に対する親密度は5.1%で、9.8%の北朝鮮よりも低かった。但し、韓国の安全を脅かす国としては中国(44・0%)と北朝鮮(36.9%)を上げていた。