2022年9月4日(日)

 「検察に出頭すべきか、すべきでないか」 絶体絶命の韓国最大野党党首

最大野党「共に民主党」の李在明代表(「共に民主党」のHPから)


 ソウル近郊の京畿道城南市の柏?洞の土地が不正に用途変更された疑惑を巡って与党「国民の力」から「偽証」で告発された件で検察から6日に出頭を命じられた最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は出頭すべきか、拒絶すべきか、まさにハムレットの心境のようだ。

 針のむしろに立たされた感じの李代表だが、マスコミの風当たりは台風のように日増しに強まっており、一昨日に続いて昨日(3日)も5〜6紙が社説で取り上げ、李代表に検察に出頭するよう求めていた。

 検察が出頭を要請した翌日(2日)に社説で取り上げていたのは保守系の「朝鮮日報」、進歩系の「ハンギョレ新聞」を含め「韓国日報「国民日報」「ソウル新聞」「世界日報」の6紙だったが、3日は「京郷新聞」と「メイル(毎日)新聞」それに経済紙の「毎日経済」と「ソウル経済」「韓国経済」の3紙が加わったほか、「朝鮮日報」「国民日報」「ソウル新聞」「世界日報」の4紙は2日に続いてこの問題を社説で扱っていた。

 「京郷新聞」見出し(「李在明召喚と金建希無嫌疑、物差しは公正か」) をみればわかるように尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻が告発された事件については証拠不十分で不起訴としていることを問題視し、「刑事司法の生命は公正と公平性にある。誰が捜査上に上がったとしても捜査機関の物差しが変わってはならない」と述べ、「野党代表夫妻については家宅捜索、召喚調査、検察送致が行われているのに大統領夫妻に対しては『免罪符』を与えるのは刑事司法の信頼性が地に落ちるだけだ」と検察の対応に疑問を呈していた。それでも李代表に対しては「検察捜査に堂々と応じて疑いを積極的に釈明したほうが良い。それが大統領選で47.83%の支持を得た政治指導者として、法律家としての明らかな振る舞いというものである」と出頭を勧めていた。

 「メイル新聞」 は李在明氏だけでなく、尹大統領と対立している与党の李俊錫(イ・ジュンソク)前代表も警察に呼ばれていることもあって 社説に「二人の李は検察、警察に出て嫌疑を説明せよ」との見出しを掲げていた。

 同紙は「『とんだ莢をつかみ、挙げ足を取ろうとしている』との李代表の発言も民主党の政治報復・弾圧発言も全く理屈に合わない。選挙で虚偽を公表する行為は有権者の選択権を侵害し、選挙を歪曲する恐れが多い。(中略)李代表は検察に出頭し、容疑について正々堂々と釈明すべきだ。やましくないならばなおさらのことである。国会議員となったことや第1野党の代表になったこと、党則まで変えたことは防弾用ではないかとの批判を自認するような過ちを犯すべきではない」と、李代表は逃げずに自ら進んで検察に出頭すべきと主張していた。

 一方、経済紙の「韓国経済」は「李在明召喚は野党弾圧ならば李俊錫調査は与党弾圧ということか」 と題する社説で「検察の捜査に政治的意図があると主張しているが、それならば、与党の李俊錫前代表に対する警察の捜査も『与党弾圧』ということなのか?言っていることに無理がある。虚偽事実を公表していないと言うならば堂々と検察で解明すればよい」と李代表の対応を批判し、「毎日経済」もまた「李在明召喚、万人は法の前に平等であれ」と題して「(李代表は)国会議員不逮捕特権の陰に隠れるべきではない。堂々と検察に出頭し、釈明すべきだ。そうしてこそ検察捜査防弾用として国会議員と党代表職を活用しているとの汚名を晴らすことができる。憲法第11条には『すべての国民は法の前に平等である』と書かれている」として、李代表に検察への出頭を求めていた。

 さらに「ソウル経済」も「『司法リスク』に民生方案が人質になってはならない」 と題して「民主党は『李在明防弾政党』との汚名は避けるためにも李代表の召喚が大統領選での虚偽発言嫌疑を調査するための個人の問題であることを忘れるべきではない」と、「政治報復」を連呼する「共に民主党」に釘を刺したうえで李代表に向かって「関連事件の公訴時効が満了する前に召喚調査に応じるべき」と要求していた。

 李代表の一件を2日連続で社説で取り上げた4紙では「朝鮮日報」(「太洞洞・柏?洞に続く慰礼(新都市)透明のない『李在明開発』」「世界日報」(「『検察がとんだ莢をつかんだ』と言うならば、直接解明すべきである」) の両紙は李代表に対してはこれまで一貫して批判的な論調だったこともあってあえて紹介するまでもないが、どちらかと言えば、進歩系に属する 「ソウル新聞」の社説(「李代表 堂々と検察に出て『防弾汚名』を拭え」)は興味深い内容となっている。

 検察への召喚を李代表及び「共に民主党」が「政治弾圧」と主張していることについて「論理的ではない」と一刀両断切り捨て、「政治報復と規定し、政府与党への協力は終わったと攻撃するのは典型的な政治攻勢と変わらない」と批判し、「警察に提出された陳述書が不十分の場合、検査が調査を補完するのは当然のことだ。李代表は当然書面調査に応じるべきだった」として、検察に召喚されることになったのは「李代表が書面調査を拒否していたからである」と、本筋を指摘していた。

 同紙は2日の社説「李在明捜査に民生を人質にすることはあってはならない」 でも検察捜査を口実に対与党闘争にしがみつくならば「それは李在明を救うため国民を人質に取ることに等しい」と述べ、「検察の政治的中立を強調してきた民主党が李代表者の捜査を前に政治的論理を唱えていること自体が矛盾している」と李代表を批判していた。

 また、「国民日報」も「李在明、検察出頭を拒否すれば名分を失うだろう」 との見出しの下、李代表に対して「虚偽事実公表嫌疑意外にも李代表に関連した捜査が多く行われている。(こうした捜査が)すべて政治報復と言うのには無理がある。どれも前任の文在寅政権下で始まり、結論が出なかった事件であるからだ。李代表は事実無根と主張しているが、それならば6日の検察召喚を回避、拒否する理由はない」と断じ、「李代表を取り巻く様々な疑惑が『野党弾圧』という言葉だけで乗り切れるものではない」と書いていた。

 同紙は2日の社説「李在明召喚通報 司正政局も防弾国会も困る」 では嫌疑が適用された李代表の発言も多くは大統領選挙の過程で政治的なやり取りの中で行われたものである。通常、選挙が終われば、与野党は相手の発言に対する告訴、告発を取り下げるものである。今回はそうした慣行は守られなかった。民主党は『納得できない召喚状であり、政治的報復である』と反発している」と野党に理解を示していた。

(参考資料:検察が与党の告発を受理し、野党党首に出頭を通告 日本ではあり得ない「珍事」に韓国メディアの論調は?)