2023年12月25日(月)

 竹島での12月恒例の韓国の「独島防御訓練」を巡る謎! 訓練実施の報道も、「日本が抗議」の報道もなし!

大規模で行われていた頃の韓国の「独島防御訓練」(韓国海軍から)


 韓国は毎年12月に日本と領有権を競っている竹島(韓国名:独島)の防御を想定した海軍と海洋警察隊による「独島防御訓練」を実施している。

 訓練は1986年から毎年実施されているが、2003年からは年2回、上半期と下半期に分けて行われており、下半期の訓練は毎年12月に実施される。

 韓国は独島上空を含む東西90km、南北110〜55kmの範囲を軍事訓練地域に指定している。国際航空図に一帯は「MOA」(Military Operation Area)と記されており、戦闘機の飛行訓練などを実施する空域とされている。

 訓練の名称は文在寅政権下の2020年8月から「東海(日本海)領土守護訓練」に改称されているが、慣例に従えば、韓国としては12月も訓練を行わなければならない。

 実際に昨年12月も日本に融和的な尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権になっても実施されていた。軍当局者の話として韓国のメディアが「12月22日明け方に海軍と海洋警察隊が実施した」と伝えていたことで明らかになった。

 昨年は小規模で、それも非公開で実施されたことから日本との関係改善に意欲を示している尹政権が「日本を過度に刺激しないように配慮したのではないか」と伝えられていたが、非公開は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の2020年から慣例化していた。規模も縮小し、任期最後の年の2021年12月の訓練では動員されたのは水上艦4隻だけで、海兵隊による上陸もなかった。

 非公開となった2020年12月の訓練はマスメディアにキャッチされるまで3週間近くも表沙汰にはならなかったし、21年12月の訓練も韓国の「聯合ニュース」が12月29日に報道するまでは表面化しなかった。いずれも事前予告せず、非公開で行ったからだ。

 この時も文政権の対応について「日本への刺激を避けるため配慮したとみられる」と伝えられていたが、配慮でも何でもなく、事前に洩れれば、日本政府が反発し、中止を求めてくるからであった。

 非公開にしようが、日本が領土問題で寛大であるはずはなく、厳に日本政府は韓国に対して「到底受け入れることができず、非常に遺憾である」と毎年抗議しており、昨年も外務省の船越健裕アジア大洋州局長が駐日韓国大使館の金容吉(キムヨンギル)次席公使を呼び「竹島は日本固有の領土であり、韓国軍の訓練は到底受け入れられず、極めて遺憾」と強く抗議していた。

 尹政権が真に日本との関係改善に取り組むならば、訓練を中止してしかるべきというのが日本側の考えだ。実際に尹政権の政治判断でいつでも中止することは可能だ。

 現に日本では「反日の権化」と称されていた文前大統領ですら2019年に大阪で開催された「G20サミット」(6月28日)出席のため上半期(7月)の演習を中止し、また前年の2018年には南北関係改善のため米韓合同軍事演習を中断したこともあったからだ。

 今年は今のところまだ訓練が実施されたとの報道はない。従って、訓練を取り止めたのかは不明だ。しかし、実施しなければ、野党から「領土を売ったのか」と突き上げられるため訓練を実施した可能性が高いと思われる。現に新任の申源G(シン・ウォンシク)国防部長官は9月の人事聴聞会で訓練について「我が領海、領土主権問題と直結する定例訓練として訓練目的に付合した規模で持続して行っていく」と、書面で回答していた。

 仮に韓国軍がすでに防御訓練を実施していたとすれば、日本は当然抗議してしかるべきだ。というのも常識に考えて、日本が黙認することはあり得ないからだ。

 しかし、日本政府が抗議したとの報道も今のところまだない。訓練が実施されたことを確認できないからなのか、それともまだやってないからなのか、どちらかだが、謎だ。

 韓国国防部は「訓練を日本に事前もしくは事後に通告しているのか」との国防委員会所属の野党「共に民主党」の鄭成湖(チョン・ソンホ)議員の質問に「軍事外交分野の軍事機密に関することなので答えられない」と回答していた。

 韓国政府が事前もしくは事後通告したからといって、それで日本政府が抗議しないということも考えにくい。

 韓国は軍事演習をすでにやったのだろうか?それともまだやってないのだろうか?謎が謎を生む。