2023年1月17日(火)

 北朝鮮最高人民会議に金正恩総書記は出席するか?

年末の労働党中央委員全員会議(拡大会議)での金正恩総書記(労働新聞から)


 今日(17日)北朝鮮では日本の国会にあたる最高人民会議(第14期第8次会議)が開催される。

 最高人民会議は立法権(憲法修正など法律の制定、中央裁判所並びに中央検察所所長の任免)▲国務委員会、内閣、最高人民会議など国家機関の人事選出、任命権▲国家予算審議と承認▲対内外政策樹立権を持つ社会主義憲法に定められた最高主権機関である。

 韓国政府及びメディアはこの会議に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席し、施政演説をするのか、この一点に注目している。仮に、金総書記が出席すれば、元旦(1日)に少年団大会に出席した少年団員らと記念写真を撮って以来、16日ぶりの公開活動となる。

 金正恩政権(2012年〜)になって最高人民会議は計16回開かれているが、金総書記はそのうち9回出席し、7回欠席している。年度別でチェックすると;

 まだ代議員の資格がなかった2012年 には4月と9月に開催された会議にいずれも出席し、雛壇の中央に座っていた。4月13日に開催された第12期5次会議では満場一致で国防委員会第一委員長に選出されていた。

 翌年の2013年は1度(4月)しか、開催されていないが、これにも出席していた。そして 2014年 3月に行われた第13期代議員選挙で金正恩氏は第111号白頭山選挙区から推戴され、晴れて代議員に選出され、翌4月の第13期第1次会議に議員バッジをつけて出席していた。

 会議を欠席し出したのはこの年の9月の会議(第13期第2次会議)からで年に1度の開催となった2015年 (4月)も会議(第13期第3次会議)を欠席していた。

 労働党大会(第7回大会)が36年ぶりに開催された2016年 は大会直後の6月に開催された第13期第4次会議に出席し、国防委員会から名称を変更した国務委員会のトップ(委員長)に選出されていた。金国務委員長は全議員に党大会で採択された国家経済発展5か年戦略目標を必ず貫徹するよう呼び掛けていた。

 米国(トランプ政権)との軍事的緊張が高まっていた2017年 4月の第13期第5次会議には出席したものの米朝首脳会談が決まった2018年 4月の第13期第6次会議は欠席するなど対照的な対応を見せていた。

 代議員選挙(第14期代議員)が行われた2019年 は最高人民会議が4月(第14期第1次会議)と8月(第14期第2次会議)2度行われ、4月に出席した際には初めて施政演説を行った。しかし、憲法が一部改正され、代議員の肩書が外された8月の会議には欠席していた。

 直近の3年間の出欠をみると、2020年4月の第14期第3次会議と2021 年1月の第14期第4次会議は連続欠席し、同年9月の第14期第5次会議では二日目(30日)に登場し、施政演説を行った。

 昨年(2022年 )は2月の第14期第6次会議は欠席し、秋(9月)の会議(第14期第7次会議)ではこれまた2日目(8日)に登場し、国務委員長として3度目の施政演説を行った。

 その施政演説だが、2019年の施政演説(「現段階の社会主義建設と共和国政府の対内外政策について」) では2月にハノイで行われた米朝首脳会談が決裂したことを回顧した後「今後米朝双方の利害関係に合致し、お互いが受け入れ可能な内容が文書に書かれてあれば躊躇うことなく署名するが、それもこれも米国がどのような姿勢でどのような計算法を持って出て来るのかにかかっている」と述べ、「我々は忍耐心を持って年末まで米国の勇断を見守る」とトランプ政権に呼びかけていた。

 また、2021年1月の施政演説(「社会主義建設の新たな発展のための当面の闘争方向について」) では「今の南北関係は冷却関係を解消し、和解と協力の道に向かうのか、それとも対決の悪循環の中で引き続き分裂の苦痛を味わうのか深刻な選択の岐路に立たされている」と述べ、韓国(文在寅政権)との関係修復のため「10月1日から関係悪化のため断絶した南北通信連絡所を復元する」意向を表明していた。

 そして、昨年の核戦力政策を法令化した施政演説 では「絶対に核を放棄しない。核交渉も取引もしない」と述べ、「我が国の核保有国としての地位は不可逆的なものとなった」と発言し、通常兵器であれ、核兵器であれ攻撃されれば報復手段として無条件に核を使用することを公言していた。

 今日開催される第14期同8次会議では議題に年末に開催された▲党中央委員全員会議の決定履行▲内閣事業の点検▲国家予算と今年の課業▲中央検察所の事業現況(規制や罰則など)▲平壌文化語保護法採択などが上がっているが、過去のケースからみて、金総書記が出席する可能性は極めて低いが、仮に顔を出すとなると、やはり、国務委員長としての施政演説が否が応でも注目されることになるであろう。