2023年11月6日(月)

 ハマスの幹部もウクライナのゼレンスキー大統領も「北朝鮮」に言及! 鍵を握る北朝鮮の動向!

ロケットランチャーを操る北朝鮮の労農赤衛隊の訓練(労働新聞から)


 「タイムズオブイスラエル」などイスラエルの媒体が昨日(5日)伝えたところによると、レバノンに駐在しているイスラム組織ハマスの幹部の一人であるアリ・バラケ氏は数日前にレバノンのニュースチャンネルとのインタビューで「(パレスチナの戦いに)北朝鮮が介入する日が来る。なぜならば北朝鮮は結局、我々の同盟の一角だからだ」と述べたそうだ。

 ハマスのレバノン事務所の元代表でもあるバラケ氏はこれまでも「イスラエルがガザに地上侵攻した場合、ヒズボラ(レバノンの武装組織)の参戦を要請する」とか、「ガザが破壊されれば、イランも黙ってないだろう」と、イスラエルや米国を牽制するため戦線拡大を警告する発言を行ったことで知られている人物である。

 このハマスの幹部が北朝鮮介入の根拠として挙げた「我々の同盟の一角」という意味は北朝鮮がイスラエルを支持している米国と対峙していること、即ち同じ「反米戦線」に立っていることを指しているのであろう。そのことは次の発言からも想像できる。

 「今日、米国のすべての敵、また米国に敵対感を持っている国々が接近している。ロシアとはすでに日々接触しており、中国とロシアはハマスの指導部とも会っている。ハマスの代表団はモスクワに続いて間もなく北京も訪問するだろう」

 ハマスが北朝鮮の支援を期待する理由の一つとしてバラケ氏は北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発していることに言及し、「イランには米国本土を攻撃する力量はないが、北朝鮮にはある」と発言していた。ハマスが北朝鮮を味方に付けたい理由は明らかにイスラエルを支援する米国を牽制することに狙いがあるようだ。

 北朝鮮はハマスを「テロ集団」ではなく、「抵抗勢力」と呼び、心情的にはハマスの戦いを支持しているが、他国のため、仮にそれが同盟国であったとしても米本土を攻撃するほど短絡的ではない。物心両面で支援することはあっても米国と一戦を交えることは常識的に考えられない。

 ハマスと北朝鮮を結び付けようとしているのは何もバラケ氏だけではない。ウクライナのゼレンスキー大統領もまた、昨日放送された米NBCとのインタビューで次のように発言していた。

 「私はロシアとイランがハマスの背後にいて、ハマスを支援しているものと確信している。北朝鮮もしかりである。ガザ地区で多くの北朝鮮製の武器が発見されているではないか。これは厳然たる事実である」と発言し、「彼らは非難されるべきだ」と語っていた。

 ゼレンスキー大統領の発言は先月7日のハマスのイスラエル奇襲攻撃の際に使用された武器の中に北朝鮮製ロケットランチャーなどが発見されたことを指してるものと推測される。

 北朝鮮の金星(キム・ソン)国連大使はニューヨークの国連本部で開かれたイスラエルーパレスチナ関連会議で「米政府所属の言論(「VOA」を指す)が北朝鮮に対して根拠のない嘘の噂を振りまいている」と反論したものの、北朝鮮製ロケットランチャー「F-7」が直接ではないにせよ、間接的にハマスの手に流れていることはハマスの戦闘員が実際に手にしていたことやイスラエル当局が押収した武器の中に含まれていたことから裏付けられている。

 しかし、北朝鮮はハマスが要請してもイスラエルとの戦闘に直接コミットすることはない。北朝鮮はハマスと対立するアッバス自治政府を承認しており、ハマスとは繋がりがないからだ。但し、アッバス自治政府が要請するか、イスラエルとハマスの交戦が北朝鮮と軍事同盟関係にあるイランやシリアまで巻き込む形で拡大し、本格的な戦争になれば第4次中東戦争(1973年)の時のように介入するのは確実である。

 第3次中東戦争までエジプトを支援していたロシアの軍事顧問団が引き上げた後の第4次中東戦争では北朝鮮は武器の支援だけでなく、密かに作戦、工兵、特殊戦、通信、防空部門など1500人規模の軍事顧問団を派遣し、戦略戦術を授け、さらに空軍兵士までが直接戦闘に加わり、イスラエル軍と空中戦まで演じていたのは知られざる事実である。

 第3次中東戦争まで連戦連敗していたエジプトがイスラエルに一矢報いることができたのは北朝鮮の「参戦」の賜物で、当時イスラエルにして「北朝鮮にしてやられた」と言わしめた。

 現状では北朝鮮が中東に直接介入する可能性は低いが、代わりに北朝鮮が反米共闘の一環としてパレスチナへの後方支援を行う可能性はあり得る。

 その証左が、一昨日(4日)北朝鮮外務省のホームページに掲載された「国際問題評論家・金明哲」の名による記事である。

 そこには「国際社会がウクライナ、中東事態に続いて朝鮮半島情勢が悪化する場合、米国が解消しがたい戦略的負担を抱えることになるかも知れないと予測しているのは一理ある」と書かれてあった。

 欧州と中東の2つの戦線で手一杯の米国を北朝鮮が軍事偵察衛星や9月に進水式を終えた新型潜水艦からのSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)などの発射で圧迫すれば米国は否が応でも欧州、中東に続く「第3の戦線」に直面することになる。