2024年1月15日(月)

 日米韓は北朝鮮のミサイル情報を本当にリアルタイムで共有できているのか?

北朝鮮が14日に発射した極超音速固体燃料中距離弾道ミサイル(朝鮮中央通信から)

 北朝鮮の14日のミサイル発射に対して日米韓の外交当局者は直ぐに電話会談を行い、北朝鮮に警告を発すると同時に安保協力を強化することを確認しあったとのことである。

 北朝鮮がミサイルを発射すればするほど日米韓3か国の安保協力は強まり、それに北朝鮮が反発して、さらにミサイル開発、発射を繰り返すという悪循環は一体いつまで続くのだろう?全く、終わりが見えない。

 いずれにせよ、北朝鮮がミサイル発射を止めず、さらにグレートアップさせるため開発を継続している限り、またその脅威が高まるほど、日米韓としてはその脅威を取り除くため抑止力を一段と向上させなければならない。

 何よりも年々進化を遂げる北朝鮮のミサイルについて発射の段階から正確に探知することが求められる。特に北朝鮮と対峙している韓国と、北朝鮮から「敵対勢力」と名指しされている日本にとっては必須である。それが故に日韓は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権になってGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を正常化させ、同盟国である米国を軸に昨年12月に北朝鮮のミサイルデータをリアルタイムで共有するシステムを稼働させたのである。

 システムの共有で日本は北朝鮮に地理的に近い韓国からの情報をより早く入手できるようになるし、そうなればこれまで以上に北朝鮮のミサイルの軌道を正確に把握できるようになると伝えられていた。北朝鮮の昨日のミサイルはこのシステム運用開始後、初の発射であった。その結果は?

 米インド太平洋軍のアキリーノ司令官は昨日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を巡り「日米韓3カ国で協調し、対応している」との声明を発表していた。対応の詳細については言及してなかった。

 では、北朝鮮がミサイルを発射した段階からの日韓の初動対応を見てみよう。

 日本の防衛省は14時57分に「北朝鮮がミサイルを発射した」と速報を流し、17時26分に「北朝鮮は本日14時53分頃、北朝鮮内陸部から1発の弾道ミサイルを北東方向に向けて発射した。詳細については現在分析中だが、発射された弾道ミサイルは最高高度約50km程度以上で、少なくとも約500km程度飛翔し、落下したのは朝鮮半島東岸付近の日本海であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外であると推定している」との続報を流した。

 一方、韓国の合同参謀本部は日本とほぼ同じ時間に「北朝鮮が午後2時55分頃、、平壌一帯から中距離級ミサイルを発射、約1000km飛翔し、東海上に落下した」と発表した。

 発射時のタイムラグは地理的な条件からして致し方ないものの高度については「日本は最高高度約50km」と推定したが、韓国は高度については明らかにしてなかった。

 他方、韓国の発表では飛翔距離は1000kmと、日本が推定した500kmよりも2倍もあった。発射地点も日本は地名を特定せず、「北朝鮮内陸部から」としていたが、韓国は「平壌一帯から」と地名をほぼ特定していた。

 ミサイルの種類について日本は単に「弾道ミサイル」と発表したが、韓国は「新型中距離弾道ミサイル(IRBM)」と踏み込んでいた。申源G(シン・ウォンシク)国防部長官が今月10日、韓国メディアとのインタビューで昨年11月に2ジン試験を行った新型中距離弾道ミサイルを北朝鮮が「早ければ今月中に行う可能性がある」と予想していたことや北朝鮮が昨年11月22日夜に平壌近郊から発射し、失敗した弾道ミサイルが新型中距離弾道ミサイルだったことなどを根拠としていた。

 ところが、北朝鮮は今朝の発表で発射したのは「極超音速機動型操縦戦闘部を装着した中・長距離固体燃料弾道ミサイル」であると明らかにした。「中・長距離級極超音速機動型操縦戦闘部の滑空および機動飛行の特性と新しく開発された多段大出力固体燃料エンジンの信頼性を実証することを目的にした」試射を行ったと説明していた。

 韓国は固体燃料を使用した新型中距離弾道ミサイルであることは探知したものの極超音速ミサイルまでは把握できなかったし、日本は「最高高度約50km」と、過去に3度、北朝鮮が発射した際の極超音速ミサイル(「火星8号」)の高度までは特定したものの、中距離弾道ミサイルとは断定できなかった。

 北朝鮮は2021年9月28日と2022年1月5日、11日と過去3回、「火星8号」を発射していたが、高度は約50kmだが、飛行距離は1回目500kmから2回目700km、そして3回目は1000kmと伸ばしていた。また、速度もマッハ3からマッハ6、そしてマッハ10まで達していた。

 ちなみに2022年1月5日の実験では「発射から120kmを側面機動し、700km先に設定した目標物に命中させた」と発表し、「左右変則軌道技術を適用した」と主張していた。また、「最終試験」だった11日の試射ではミサイルから分離された極超音速滑空飛行先頭部が「600kmから滑降飛行した後、240km旋回機動し、1000km先の水域の目標物に命中した」と北朝鮮は発表していた。

 結論的に言うと、今回の発射は極超音速滑空ミサイルを液体燃料から固体燃料にシフトするためのテストと言えるが、北朝鮮の報道によれば、北朝鮮ミサイル総局は「今回の試射が強力な兵器システムを開発することにある」とのことだ。

 なお、防衛省は昨日、「米国、韓国等と緊密に連携しつつ、情報収集・分析に全力を挙げる」と発表していたが、午後13時半現在、発表がないところをみると、ミサイルの機種についてはまだ分析中のようだ。

(参考資料:極超音速ミサイルに関する昨年と今年の北朝鮮報道のギャップ)