2024年7月28日(日)
韓国を「北朝鮮」と間違えた五輪開会式のハプニングを深堀する!
韓国体育会会長から抗議を受けるバッハIOC会長(韓国体育会配信)
第3世界など外国の人々の中には朝鮮半島が分断していることを知らない人も結構いるようだが、一般的に国際社会では朝鮮半島が南北に分断し、二つの国家が存在していることは共通の認識となっている。
韓国も北朝鮮も国連及びその傘下機関さらには国際オリンピック委員会(IOC)をはじめFIFA(国際サッカー連盟)など国際競技団体には正式な国名で加盟している。
韓国は「Republic of Korea」で、北朝鮮は「Democratic Peoples Republic of
Korea」である。漢字にすると「大韓民国」と「朝鮮民主主義人民共和国」である。
しかし、日本のメディアが「朝鮮民主主義人民共和国」とは呼称せず、「北朝鮮」と表記しているように外国人や外国のメディアは韓国を「South Korea」、北朝鮮を「North Korea」と呼んでいる。正式国名ではなく、略称を使っている。
今回、五輪史上初の野外での開会式で韓国が「Republic of
Korea」(ROK)ではなく、「Democratic Peoples Republic of
Korea」(DPRK)とアナウンスされ、韓国では大騒ぎとなった。
韓国選手団が即刻抗議をしたことで間違いに気づいたIOCは直ちにX(旧ツイッター)上で韓国語による謝罪文を掲載したが、英語で運営しているIOCの公式SNSに謝罪文が上がらなかったこともあって韓国は簡単には引き下がらなかった。
韓国オリンピック委員会、大韓体育会、所管の文化体育観光部までが一斉に抗議し、正式謝罪を要求したことにより事態を重く見たIOCのバッハ会長は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に自ら詫びの電話を入れ、エスタンゲ・パリ組織委員会会長も遺憾の意を表していた。
現地入りしている文化体育観光部の張美蘭(チャン・ミラン)第2次官と体育会の李元復興(リ・ギフン)会長が今日にも韓国政府を代表してバッハ会長及びエスタンゲ会長と4者会談を行い、公式謝罪と再発防止を求めるようだ。
韓国がここまで態度を硬化させているのは「国旗を逆さまに掲げることは時々あったが、国家の名称を英語でもフランス語でも『北韓(北朝鮮)』と呼ぶとは想像もしてなかった」と述べていた李体育会会長の一言に表れているようだ。
尹大統領もバッハ会長に対して「我が国民は夏季と冬季と2度五輪を開催し、ワールドカップも開催した国として今回の出来事には驚き、当惑している」と、傷ついた韓国人の気持ちを代弁していた。
パリ五輪参加国205か国のうち唯一、韓国のみが国名を間違えられたわけだから「酷い過ちだ」「外交非礼だ」と、韓国の国民が怒るのも当然だ。しかし、冷静に考えてみると、国際舞台では南北に関してはこの種の勘違い、間違いは過去に数えきれないほどあった。
例えば、北朝鮮が韓国に間違えられてロンドン五輪では女子サッカーの北朝鮮対コロンビアの試合で北朝鮮の国旗ではなく、誤って韓国の国旗が大型スクリーンに表示されることもあった。その逆に2018年にインドネシアで開催されたサッカーAFC
U-19選手権での韓国対ヨルダンの試合では韓国の国歌ではなく、誤って北朝鮮の国歌が流れたこともあった。
国名についても勘違や取り換えが過去にもあった。最近の例として、ハリス副大統領は2022年9月に訪韓し、軍事境界線を視察した際の演説で「米国は非常に重要な関係を、同盟関係を北朝鮮と共有している」と、韓国と言うところを、北朝鮮と言い間違えていた。後にホワイハウスのネット上で公開された演説文には「Republic of North Korea」と
なっていた。
正直なところ、朝鮮半島に利害関係を有する諸国以外、特に朝鮮半島と地理的に離れている欧州や第3世界では同じ「Korea」の国名を使う、同じ民族の南北の区別が付かないようだ。
よくよく考えてみると、韓国は自由と人権と民主主義を標榜している国である。一方の北朝鮮は専制主義の人権抑圧の独裁国家として国際社会では知られている。
昨年11月にキューバ―の北朝鮮大使館から韓国に亡命した李日均(リ・イルギュ)前参事官が最近、韓国のテレビ「チャンネルA」とのインタビューで面白いことを言っていた。
「キューバ人から韓国人なのか、北朝鮮人なのか、よく聞かれる。私は『韓国人だ』と答えている。キューバ人の目には韓国は良い国で、北朝鮮は悪い国なのだ」
国際社会にこうしたイメージが定着しているからこそ、「South Korea」を「Democratic Peoples Republic of
Korea」と勘違いし、アナウンスしてしまったとしたら考え過ぎだろうか。