2024年7月31日(水)
水害被害に怒った金総書記の一声で社会安全相が更迭、平安北道党書記は左遷、慈江道党書記は解任、総理は?
水害被害を視察した金正恩総書記に同行する金徳訓総理(朝鮮中央通信から)
中国との国境に近い北朝鮮の平安北道新義州市と義州郡が7月28日に豪雨に見舞われたが、水害被害は想像以上に深刻のようだ。
約4100余世帯の家屋と3000ヘクタールの耕地、それに数多くの公共の建物や施設、道路、鉄道が浸水する被害を受けていた。
昨年8月に台風による堤防決壊に伴う南浦市の干拓地区域の冠水被害が560ヘクタール余りだったことを考えると、比較にならないほどの被害を被ったことになる。人数は公表されていないが、人命被害があったことも認めていた。
被災地を訪れた金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「地形地物が見分けられないほど深く浸水した地域」(朝鮮中央通信)を見て回り、肩を落としたようだ。
昨日、筆者は「水害被害でまた部下に八つ当たり! フラストレーションが募る一方の金正恩総書記!」の見出し記事で豪雨と洪水、台風による被害を防ぐことができなかった平安北道党責任書記と被災者の数をまともに掌握してなかった社会安全相、それに内政の司令塔である総理の首が危ないと伝えたが、早くもこのうち2人が電撃的に解任されていた。
(参考資料:水害被害でまた部下に八つ当たり! フラストレーションが募る一方の金正恩総書記!)
今朝の「朝鮮中央通信」によると、金総書記は被災地視察中の29日から2日間、移動列車内で党政治局非常拡大会議を開き、李太燮(リ・テソプ)社会安全相を更迭し、後任に軍政指導部の方頭燮(パン・ドゥソップ)党第1副部長を据えていた。
日本の警察庁長官にあたる社会安全相は2012年に発足した金正恩政権下ではこれで9人目である。このうち崔富一(チェ・ブイル=2013年2月就任)氏と金正浩(キム・ジョンホ=2019年12月に就任)氏の2人以外は軍総参謀長経験者である。
新任の方頭燮社会安全相は党中央に入る前は軍第一副総参謀長兼作戦総局長のポストにあった。
また、会議では昨年12月に平安北道党責任書記に起用された朴成哲(パク・ソンチョル)氏が任期7か月で慈江道委員会の責任書記に左遷され、平安北道党責任書記には昨年1月に前党第1副部長に登用された李煕用(リ・フィヨン)氏が就いていた。ということは党中央委員会副部長から2019年4月に慈江道党委員会委員長に就任し、2021年1月に慈江道トップの党責任書記に起用された姜鳳勲(カン・ボンフン)氏も枕を並べて解任されたことになる。
政治局会議の最終日(30日)に採択された決定書をみると、水害被害を被ったのは平安北道だけでなく、慈江道でも道路や鉄道及び公共施設などが破壊され、甚大なダメージを受けていた。
金総書記が会議で「過去洪水の被害を受けたことのない道・市・郡が災害防止活動を慢性的かつ観照的に対した結果、無力にも災難に見舞われる結果を招いた」として「党と国家が付与した責任重大な職務の遂行を甚だしく怠って許せない人命被害まで発生させた対象を厳しく処罰する」ことを提起していたことから予想された懲罰人事と言える。
しかし、最も去就が注目されていた政治局常務委員の金徳訓(キム・ドクフン)総理は今回も更迭は免れたようだ。
金総書記の28日の水害視察に随行していなかったことからもしかしたら責任を取らされ、解任されるかもと見立てていたが、他の政治局常務委員らとともに党政治局非常拡大会議会議に出席し、29日の視察から金総書記と行動を共にしていたことから首の皮一枚繋がったようだ。
しかし、「朝鮮中央通信」が配信した写真を見ると、どれもこれも鎮痛な表情で、生気がなかった。金総理の地位もまさに風前の灯で、首が飛ぶのは時間の問題ではないだろうか。
水害被害を視察した金正恩総書記に同行する金徳訓総理(朝鮮中央通信から)
金総理は2020年8月13日に開かれた党第7期第16回政治局会議で政治局常務委員に抜擢され、同時に総理に任命されていた。