2024年9月21日(土)
尹錫悦政権の戒厳令の動きを阻止せよ! 野党第1党の「民主党」が法案を発議!
韓国で大ヒットした45年前の軍事クーデターを扱った映画「ソウルの春」のポスター
今の時代、また民主主義が定着した韓国で軍事クーデターや戒厳令はあり得ないとみているが、韓国の野党は本気で「あり得る」とみているようだ。
そもそも事の発端は、野党第1党の「共に民主党」(民主党)の李在明(イ・ジェミョン)代表が9月1日に与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表との党首会談の場で「最近、戒厳令(が発令される)という話が頻繁に出ている」と切り出したことによる。
李代表は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が戒厳令の解除を国会が求めるのを阻止するため戒厳令の宣布と同時に国会議員を逮捕、拘禁することも計画しているとの情報も耳にしている」と、真顔で韓代表に語っていた。
李代表の「トンデモ発言」に大統領室は即座に「戒厳令発令説は怪談で、あり得ない話だ。野党の主張は政治攻勢以外の何物でもない」と一蹴したが、「民主党」は昨日(20日)、尹政権が戒厳令を宣布する恐れがあるとの警戒心から「戒厳令に便乗した親衛クーデターを防止する」として「ソウルの春4法」を国会の発議に踏み切った。
「ソウルの春4法」は昨年暮れに韓国で公開され大ヒットした45年前の軍事クーデターを扱った映画「ソウルの春」からヒントを得たようだ。
この法案の発議を主導したのは同党の最高委員でもある金炳周(キム・ビョンジュ)議員や金民錫(キム・ミンソク)議員ら国防委員会所属議員らで、記者会見で「この法案は国民が守ってきた民主化の春を二度と奪われないようにするための意志でもあり、時代の要求でもある」と述べ、今後、党論として推進することを表明していた。
国連軍(米韓連合軍)副司令官を務めた元陸軍大将の金炳周議員は8月19日の国会国防委員会で「尹大統領は弾劾されそうになれば、戒厳令を宣布するのでは」と、政府に質しており、金民錫議員もまた「金龍顯(キム・ヨンヒョン)国防長官の任命は(北朝鮮との)局地戦と『北風』(北朝鮮の脅威)造成を念頭に置いた戒厳令準備のための作戦なのでは」と、尹大統領の国防・安保関連の人事を戒厳令と結び付けて質していた。
特に金民錫議員は尹大統領が最近、断行した国防長官の人事で安全保障室長に転出した申源G(シン・ウォンシク)国防長官の後任に高校(沖岩高校)の1期先輩にあたる金龍顯氏を据えたことを問題視したようだ。金新任国防長官は尹大統領の信頼が厚く、尹政権発足と同時に大統領警護処長として尹大統領を支えてきたタカ派将軍である。
尹大統領は昨年11月には国軍防諜司令官に呂寅兄(ヨ・インヒョン)司令官(中将)を起用していたが、呂司令官もまた沖岩高校の出身で、尹大統領の後輩にあたる。国軍防諜司令部の前身は国軍保安司令部で、1979年に当時保安司令官だった全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領はクーデターを成功させている。
加えて、今年4月には国防部傘下777司令部の司令官に朴ジョンソン少将を昇進させているが、朴司令官もまた沖岩高校の卒業生で尹大統領の後輩にあたる。777司令部は北朝鮮の情報収集を主な任務としている。
金国防長官は国防長官にまだ正式に任命されていないのに国防部に沖岩高校出身の李ジヌ首都防衛司令官をはじめ呂寅兄国軍防諜司令官、それに光州事件でデモ隊を鎮圧した特選団司令部の郭ジョングン司令官らを呼び寄せ、密議をしたことから野党からこうした不信を買ったようだ。
「民主党」が立案した法案には「戦時でない場合は、戒厳令宣布前に国会在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の同意を得なくてはならないと」規定されている。現在、「民主党」は国会で過半数以上を握っている。
また、大統領は戒厳令を宣布する場合、「72時間内に国会の事後同意を必要とする」ことも盛り込まれている。さらに「戒厳令の宣布の際、現憲法で国会議員を逮捕、拘束する場合には国会の戒厳令解除議決に参加する権利を保障する」ことも盛り込まれている。
記者会見で「民主党」議員らは「国会で可決したこの法案を『戒厳令を全く考えていないし、その可能性もない』と言っている総理や国防長官が大統領に法案の拒否権を行使するよう建議した場合は、法的、政治的責任は免れない」として、「それ相応の強力な措置を取る」と政府を牽制していた。
国内の権力抗争は想像以上に凄まじく、熾烈である。政権与党は尹大統領の政敵である「民主党」の李代表と第2野党「祖国革新党」の゙国(チョ・グック)党首、さらには文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の司直の手による収監を目論み、一方野党陣営は支持率が就任以来最低の20%に下落した尹大統領を大規模デモで弾劾に追い込もうと虎視眈々とその機会を狙っている。
(参考資料:韓国の総選挙 与党の「アカ攻撃」VS野党の「親日攻撃」 伊藤博文から李舜臣まで選挙利用)
国内の対立激化に加え、韓国と北朝鮮の軍事対決もまた、朝鮮半島の安全と平和を担保した「南北軍事合意」という安全ピンが外れたことで歯止めが効かなくなっており、朝鮮半島は軍事衝突がいつ起きてもおかしくない状況に置かれている。
万が一、韓国の左右勢力の対立が激化し、朴槿恵(パク・クネ)元大統領が弾劾されたような国内状況に置かれた場合、あるいは南北の軍事対決が一触即発になった場合、「もしかすると」と考えるのは果たして妄想だろうか?
(参考資料:韓国でまことしやかに流布される「戒厳令」の噂)