2025年4月1日(火)
5対3で弾劾棄却か、8対0で罷免か、尹大統領の運命の日は4月4日
憲法裁判所の法廷(JPニュースから)
揉めに揉めていた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾裁判の宣告日が4月4日午前11時に決まった。
結審が終わったのが2月25日。弾劾された歴代大統領の前例からすると、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の場合は弁論終結から2週間後、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の場合は11日後だったので最長期間となった。
憲法裁判官は8人いるが、文炯培(ムン・ヒョンベ)裁判官と李美善(イ・ソンミ)裁判官(女性)の2人は4月18日には任期満了で退任する。従って、仮にそれまで結論を出さなければ6人体制となり、補充しなければ宣告はできないことになっていた。
尹大統領だけでなく、韓国の命運をも決する4日を世界中が注目しているが、どのような裁定が下るのか、政界だけでなく、法曹界でも棄却、罷免で割れている。
文炯培裁判官と李美善裁判官(女性)は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が指名し、また鄭桂先(チョン・ゲソン)裁判官(女性)は野党「共に民主党」が推薦したのでこの3人は進歩系とみられている。
また、金炯?(キム・ヒョンドク)裁判官と鄭貞美(チョン・ジョンミ)裁判官(女性)は保守中道と言われているが、文大統領が任命した金命洙(キム・ミョンス)大法院長(最高裁長官)が推薦していているのでどちらかと言うと進歩系に近い。
これに対して鄭亨植(チョン・ヒョンシク)裁判官は尹錫悦大統領が任命し、また金福馨(キム・ボクヒョン)(女性)は尹大統領が任命した曹喜大(チョ・ヒィデ)大法院長が推薦し、趙漢暢(チョ・ハンチャン)裁判官は与党「国民の力」が推薦しているので保守系とみられている。
文炯培裁判官は憲法裁裁判官に任命されたのが他の7人よりも4〜6年早いことから裁判を取り仕切る裁判長代理(代行)の立場にはあるが、尹大統領の弾劾審判の主審は鄭亨植裁判官である。年齢では鄭裁判官の方が5歳も年上で、司法研究院でも1期先輩である。
ちなみに野党が弾劾訴追した大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)総理の弾劾裁判では見解が分かれ、5人が棄却に賛成し、鄭亨植裁判官と趙漢暢裁判官の2人が却下を主張し、鄭桂先裁判官1人が弾劾を支持し、罷免に回っていた。結果として、与党の勝利に終わった。
与野党共に強気である。与党は裁判官は5対3で分かれていると票読みしており、野党は8対0は変わらないと分析している。
裁判が始まった当初は裁判官全員一致による罷免の勢いだったが、その後弾劾反対の勢いが増し、加えて尹大統領が釈放されたことで与党は形勢が逆転し、棄却の可能性が出てきたとみている。裁判官の3分の2、即ち6人が弾劾を支持しなければ、逆に言うと、3人が反対すれば、大統領は罷免されず、復職できる。
与党は当初、早期宣告で大統領が3月にも罷免されれば60日以内、即ち5月中に大統領選挙を実施しなければならないことから2審で逆転無罪判決を受けたものの1審で有罪となった「民主党」の李在明(イ・ミョン)代表の大法院判決結果を待ってから大統領選挙に臨む方針だった。大法院判決は2審から3か月後の6月下旬には出るので有罪となれば、李代表は議員失職だけでなく、公民権及び被選挙権を剥奪され、大統領選挙に出馬できないからだ。
しかし、審議が長引いていることや早期宣告を求めていた野党が一転、韓総理代行に9人体制にするため保留されている野党推薦の裁判官を任命しなければ再度弾劾すると脅し始めたことから現状を5対3とみて急遽早期宣告を主張し始めた。どうやら勝算ありとみているようだ。
一方、宣告が伸び、進歩系裁判官2人が退任した後、韓大統領代行が新たに2人を任命すれば、不利と判断していた野党は遅くとも今週中に宣告が出れば罷免の可能性は高いと踏んでいるようだ。直近の世論調査で60%対35%と弾劾賛成が反対を大きく引き離していることもあって世論に逆行する判決は出せないであろうと楽観している。
与野党双方とも都合よく解釈しているようだが、サイコロがどちらに転ぶのか、当日になってみなければ誰にもわからない。