2025年4月10日(木)

 占い師の予言が裏目に出て転げ落ちた尹錫悦前大統領

リ・チョンゴン占い師(リ・チョンゴンのユーチューブチャンネルから)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が罷免、没落した原因がトラブルメーカーである金建希(キム・ゴンヒ)夫人にあることは韓国のメディアだけでなく、与党「国民の力」所属議員ですら認めていることだが、占い師の言いなりになったことも原因の一つと言える。

 尹錫悦夫妻には専属の占い師、易者がいる。前回の大統領選のテレビ討論会で尹前大統領が手の平に「王」の字を書いて出てきたことからその存在が取り沙汰されていた。

 尹前大統領は当時、対立候補から「お告げで政治をしているのか」と批判された際に「名もわからない近所のおばさんから何気なしに書いてもらった」と釈明していたが、それをそのまま信じる者はいなかった。

 尹大統領は大統領就任と同時にソウル・鐘路区にある「青瓦台」と呼ばれていた大統領官邸をソウルの竜山に移したが、これもお告げによるとされている。

 占い師の「方角が悪い」とのたった一言で移転費用だけで500億ウォンから800億ウォンの税金を費やさざるを得なかった。「ポスト尹」の大統領候補者の中には大統領になれば「青瓦台」に戻ると言われており、そうなれば、この移転はまさに浪費以外のなにものでもない。

 また、大統領就任から半年後の2024年11月にはASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議に出席するため金夫人を連れてカンボジアを訪問したが、金夫人は各国の首脳夫人らが揃ってカンボジアの至宝・アンコールワットを訪れたのに「縁起が悪いので墓があるような場所には行かないほうが良い」との占い師のアドバイスに従い、同行せず、たった一人別行動をしていた。外交非礼と言われようが、尹夫妻は占い師の予言を忠実に守ったのである。

 一説では、検察総長を辞め、大統領選に出馬を決意したのも占いによるものと言われており、昨年12月3日に非常戒厳令を発令した際にも事前に占い師にみてもらったとまことしやかに囁かれている。

 尹夫妻が絶対的に信頼している占い師は主に2人だが、1人は大統領選挙時に選挙対策本部で活動活動していたいわゆる巫俗の「乾真法師」として知られいる易者、チョン・ソンベ氏で、金建希(キム・ゴンヒ)氏が経営していたインテリア 関連会社「コバナコンテンツ」の「顧問」の肩書を持っていた。

 そしてもう一人が、尹夫妻の身の上相談役と噂されている「リ・チョンゴン」という名の占い師である。

 尹前大統領は戒厳令が失敗した3日後の12月7日には失意のあまり、一旦は「私の任期を含め今後の政局安定方策はわが党に一任する」と「白旗」を掲げたものの12月12日には一転「私を弾劾しようが、捜査しようが、堂々と受けて立つ」強気に転じ、さらに弾劾訴追案が可決した直後の12月14日には「決してあきらめない」と談話を発表し、最後まで戦う姿勢を示したが、その背後には占い師の影がちらついていた。

 というのも、白衣をまとった「リ・チョンゴン」占い師は昨年12月18日に弾劾され苦境に陥った尹大統領について「尹大統領は天が授けた大統領なので天の助けで3か月後には状況を反転できる」と占っていたからだ

 「今年は苦しい年だったが、今は学ぶ時だ。これから100日間、自ら学べば、来年になれば、知恵の国運が開ける」と予言していた。しかし、弾劾は棄却されず、大統領の座から転げ落ちてしまった。

 予言が見事に外れると、この占い師は罷免から3日後の4月7日には「尹大統領は国を救うためにも大統領の職に留まろうという考えは持たないほうが良い。自分が犠牲になることが国民にとって良く、国民の助けになり、国民の力となるのであれば、それこそが真の大統領である」と、昨年の占いとは真逆に今度は大統領の座に固執しないよう促していた。

 ところが、翌8日になると一転、自身のユーチューブチャンネルを通じて「これから選挙に突入するが、多くのことが起きるであろう。(候補者)互いが争い、欲を出しあうだろう。今、国民のためになる候補者は一人もいない。国民のためになる人は尹錫悦一人だけである」と、今後は尹大統領に最後まで諦めず戦えと、けしかけいていた。

 尹前大統領は憲法裁判所の判決を承服していなければ、非常戒厳令で世の中を混乱させたことについても謝罪もしてない。それどころか、巷では尹前大統領は6月の大統領選挙に再出馬するのではと噂されている。もしかしたらこのお告げに惑わされているのかもしれない。

 尹前大統領の支持者、シンパがいかに多くいたとしても「内乱の首謀者」として刑事裁判に掛けられている被告人が当選するほど韓国は甘くないだろう。仮に裁判で有罪となれば、死刑もしくは無期懲役である。どう考えても復活は無理であろう。

(参考資料:夫人に足を引っ張られ自滅した尹錫悦前大統領)