2025年4月13日(日)

 韓国大統領選挙は本命「李在明候補」への信任投票 与党の対抗馬が韓首相でも勝てないのか

尹錫悦前大統領と韓悳洙首相(左)(大統領室から)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免、失職により新大統領を決める大統領選挙は6月3日に決まった。

 韓国の世論調査機関「韓国ギャラップ」が4月8から10日にかけて実施した世論調査で次期大統領にふさわしい人物を聞いたところ、野党第1党の「共に民主党」の前代表「李在明(イ・ジェミョン」との回答が37%あった。先週よりもさらに3ポイントも上昇していた。

 一方、与党「国民の力」の候補をみると、「帯に短し襷に長し」と言うか、どんぐりの背比べである。

 「国民の力」の候補をみると、金文洙(キム・ムンス)前雇用労働部長官は先週と変わらず9%。続いて、前回の大統領予備選で尹前大統領と争った洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱前市長が5%、尹大統領の弾劾に賛成した韓東勲(ハン・ドンフン)党前代表が4%だった。前回の大統領選挙の土壇場で尹前大統領支持を表明し、大統領レースから降りた安哲秀(アン・チョルス)議員と呉世勲ソウル市長はそれぞれ2%で、反主流派の劉承民(ユ・スンミン)前議員は1%だった。また、元「国民の力」の代表で、現在保守系「改革新党」を率いる李俊錫(イ・ジュンソク)元代表も2%だった。

 韓国の公共放送「KBS」が世論調査会社「韓国リサーチ」に委託し、昨日(12日)に行った世論調査でも李在明候補の38%に対して与党は金文洙候補が13%、洪準杓候補が6%、韓東勲候補が5%、安哲秀候補が3%、劉承民候補が2%と大差が付けられている。李俊錫候補も3%と低迷している。

 この結果、一時は有力な対抗馬とみられていた呉ソウル市長は大統領選出馬を諦め、大統領選レースから脱落した。出馬を取り沙汰されていた元代表の金起R(キム・ギヒョン)議員金泰欽(キム・デフム)忠清南道知事らも相次いで不出馬を表明している。

 与党からは劉正福(ユ・ジョンボク)仁川市長李負J(イ・チョルウ)慶?北道知事らも立候補を表明しているが、泡沫候補扱いされている。

 また、元院内総務の羅卿?(ナ・ギョンウォン)議員が尹前大統領の支持をバックに唯一女性候補として名乗りを上げているが、まずは4月22日に行われる与党の第1回予備選で4人の枠に入らなければならない。

 与党の予備選は4月16日に大統領選挙に出馬する候補者が発表され、その後、100%国民を対象とした党の世論調査を実施し、22日にまずは上位4人に絞り込む。さらに国民投票(50%)と党員投票(50%)による世論調査を行い、29日には4人の中から2人を選出し、そして5月3日に与党公認大統領候補を決定する運びとなっている。

 現状では与党から誰も出ても、また束になっても李在明候補には勝てそうにはない。その理由は候補者の支持率だけでなく、その他の調査でも与党が劣勢だからである。

 「KBS」の調査では「政権交代」を期待するとの回答が51%と、「政権継続」(36%)を大きく上回っており、また、党の支持率をみても「韓国ギャラップ」の調査では「共に民主党」の41%に対して「国民の力」は前週よりも5%減らし、30%と二桁の差を付けられていた。

 「KBS」は李在寅候補と与党の上位3人が対決した場合の支持率も発表しているが、「李在明対金文洙」は48%対31%、「李在明対洪準杓」は47%対31%となっており、「李在明対韓東勲」は47%対24%とさらに差が開いている。

 こうした事情から与党内には大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)首相を擁立する動きが表面化している。

 官僚出身の韓総理は財政経済部長官や米韓自由貿易協定の締結支援委員会委員長、経済協力開発機構(OECD)の韓国代表部大使、駐米韓国大使を務めるなど経済から外交分野まで実績は申し分ない。温和な性格で、安定感もあり、行政手腕は証明済みだ。

 何よりも、与党は韓首相が野党の牙城である全羅道の出身であること、金大中(キム・デジュン)政権下で経済首席秘書官、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下では総理を歴任したことから進歩層からも一定の支持が得られるとみている。

 現状では韓首相が立候補締切日の4月15日までに届け出なければ与党の候補にはなれないが、時間切れとなった場合は、無職で立候補し、選挙戦最終盤で与党候補と一本化するシナリオが描かれているようだ。

 このシナリオは2003年に当初は泡沫候補盧とみられていた盧武鉉大統領が党の予備選で勝ち抜いた後、本戦で当時与党「ハンナラ党」(「国民の力の前身」)から離脱し、無所属から出馬していた日韓W杯の韓国側委員長の鄭夢準(チョン・モンジュン)議員との一本化に成功(投票日前日に破綻)し、本命視され、圧倒的に優勢だった与党の李会昌(イ・ヘチャン)代表に57万票の僅差で制し、当選を果たしたことが下地となっている。

 前回の大統領選挙は尹錫悦候補が李在明候補に約25万票(0.73%)の僅差で破り、当選したが、与党内には韓首相と与党候補が土壇場で一本化すれば、李在明代表は「好感を持てない候補」あるいは「相応しくない候補」、さらには「嘘をつく候補」の調査でも常に1位に名前が挙げられていることから韓首相がクリーンなイメージを全面に打ち出して戦えば、少なくとも接戦に持ち込めるとの計算が働いているようだ。

 真意は定かではないが、このシナリオは李在明政権を何が何でも阻止したいとする尹前大統領が描いているとの噂がまことしやかに流れているが、御年76歳と候補者の中では最高齢の韓首相は果たして出馬するのだろうか。

(参考資料:大統領の椅子に最も近い野党の李在明代表は「支持率」も「非好感度」「嘘つき」も1位)